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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:黒松

我が水石協会理事長・小林國雄先生 る創作エネルギーに脱帽!】

世界大会の余熱冷めぬ中、私も事務局長を務める 
日本水石協会主催の歴史ある展示「日本水石名品展・明治神宮」の 
出品審査会・撮影会が、理事長邸宅でもある「春花園盆栽美術館」で 行われました。
久しぶりの理事長邸、世界大会に飾られた黒松「雲龍」も 本来の居所に帰って元気そうでした。
"森ちゃんのお陰で、世界大会・日本の水石百選 も、上手くできてありがとう"
と、相変わらず、上下もなく、ご自分の思ったことを平らに仰る"大好きな"方でした。
驚くのは 庭に溢れるほどの 大型盆栽達です。
ほとんどが、手に入れた姿からご自分の創意を加えた「小林芸術」へと変貌していました。
"俺は樹を作っている時が一番幸せなんだよ" 
本当にこの方は、樹と語り合ったり、喧嘩したり、慰め合ったり・・・
盆栽家、ただひとりの「孤高の作家」なんだなとあらためて思いました。
私と11歳違い、69歳にして、創作意欲は私以上です。
一緒に撮った写真の通り、私はこの"ヤンチャで、わがままで、涙もろくて、人情深い" 作家の、
クシャクシャの笑顔が大好きです。
ああ、また上手にコキ使われそう!!(笑)


【九州島原地方に眠り続けた"未完の大樹"大施術!】

先月、九州島原地方、松原の"植木の隠れ里"から、未公開大型黒松を羽生に運びました!
オーバーサイズの樹を何とかシンボル的なものへと、
改作施術の名手二人を招聘して、未来の大樹への第一歩に挑戦しました!

抜群の荒皮性の幹、立て返しの無い幹筋、改作可能な枝付き、
初めて行った島原で出会ったこの樹は、高さ2,5m!!
樹間の切り返しと枝角度の修正が大切なポイントです。
寺川穂積氏・森山義彦氏、二人とも私の仕事をいつもサポートしてくれる仲間たちです。

寺川氏は八雲蔓青園出身、単身オランダへ渡り苦労の末、数百人の顧客を現地で掴みながらも、
日本国籍の子供達のために"日本人のアイデンティティーを失って欲しく無い"と言う思いで帰国しました。
以来10年、その改作技術は私の目で見ると、国内三指に位置する作家だと確信しています。
特に"曲げるのは無理だろう"と思われる太さの幹や枝を技術の粋を駆使して変貌させる"職人技"は天才的です。
森山君は私の娘と同い年ですが、名匠木村正彦先生のもとで6年の修行を終えて、
間も無くこの羽生雨竹亭から10分の所に盆栽園を開園します。
真摯な手入への姿勢は、誰もが見習うほどの真面目さです。
いずれは日本有数の盆栽作家になるでしょう。

"曲がらずの枝"にきつくラヒィアを巻き、中に芯銅線を抱かせ、鉄棒をテコに一気に思う角度へ導く。
頭部の処理が見えた所でこの樹の将来はまとまりました!

圧倒的な中国勢の購買によって、国風賞クラスの名木が海を渡る時代、
本来日本盆栽界ではその価値を見出さなかったものが、評価される・・
このサイズの樹が両国の要望を叶えてくれると思っています。
ここから2~3年で枝葉の繁茂によって、大型荒皮性黒松の大樹が生まれます。
味わいある座敷飾りの文人盆栽・国風展向きの名木など、
時代に伝承したい樹々を残しながら、正業と友好に努める・・エスキューブは毎日が"挑戦"の日々です。

 
【"見えぬ月を席中に描き出す" 】

樹齢100年を超える黒松の老木を手に入れました。 
文人盆栽はその基準が難しく、"細く下枝のないひょろひょろとした木"
が文人樹だと勘違いされる方や、プロですら解釈が出来ずにいる面々もあり、
「究極の盆栽」と評した古人の想いがわかります。 
この樹は、荒ぶれた幹肌、捻る様な立ち上がりの腰部分、
捻転する幹に見える枝が落ちた跡のサバ姿、
そして樹冠と僅かな"落ち枝"で構成された空間ある樹相。
これ以上"引き算"のしようがない身形、まさに文人盆栽の真骨頂だと思います。 
文人盆栽は飄逸とした姿の裏側に、厳しく果てし無く永く生き抜いた足跡が感じられるもので、
決して昨日針金技で創出出来るものではありません。 

今回この樹を使って「掛け軸を使わない席飾り」をしてみました。 

老い立つ如き老松、その樹下に佇み松を仰ぐ古老。
禅の問答や古詩に登場する景趣を樹と木彫のみで表現してみました。 
一枚板の地板に双方を載せて飾ってみましたが、僅かな"間"がきつくダメでした。 

詩情を湛える飾りは数センチの"間"や高さが、
そこにある「心地良い緊張感」的な空間を創り上げます。
「空間有美」とはよく言ったものですね。 

【今季最終の大型植え替え】

黒松や宮島五葉松など、やや遅めの植え替えが好ましい盆栽の
"大植え替え"を全員で頑張りました!

太幹の名樹達は鉢抜き・根ほどき・植え付け・と力のいる作業です。
大きいからと言って、植え付けの角度など、僅かなズレがその樹の
これからの数年の鑑賞価値を決めてしまいますから、
決して"手抜き"な扱いは出来ません。
羽生本店雨竹亭「第3特別培養場」には国風賞・内閣総理大臣賞・貴重盆栽など、
一兵卒の素材樹を含めて、約2000点の"子供達"が健やかな日々を過ごしています。


【80歳  圧巻の棚揃え   名木がずらり】

先週 、お世話になっている小田原の小泉薫先生の所へ
棚の整理とお手入れで伺いました。

今月15日に満80歳になられた先生の盆栽棚は、
黒松名樹「天寿」五葉松「大樹」など、
界を代表する名木群で埋め尽くされていました。
数年前、不慮の交通事故でご不自由になったお身体の為、
ご蔵樹の一部を斯界に放出されましたが
"どこが減ったのか?"
分からないくらいのレベルと量です。
あらためて先生の度量の大きさに感服した1日でした。


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