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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:花梨


【花梨名樹と"福来雀"】

慌しい歳末、とかく盆栽を床飾りする余裕も心から忘れがちな日々があり、
己のだらし無さを痛感させられるものです。
特に12月は季節を捉えた飾りが難しいもので、
"一年を振り返っての新年を何処かに思わせる"隠れた情緒が大切な設えとなります。
今回は、入手してまる二年、手入れ・植替え(均釉袋式長方)を進めて、
ようやく観賞できるまでになった花梨を使っての「師走の床飾り」をしてみました。

古幹の䕺立ちの揺れ立つ姿が、唐画の世界から抜け出してきたようなこの樹は、
花梨の盆栽として極めて持込み古い名樹です。
この樹を主役に雨竹亭の応接室を設えてみました。

掛物は「雪中双雀」作者は、岡倉天心が創設した東京芸大の前身、
東京美術学校の初期日本画教授として横山大観らにも指導をした今尾景年。
雪降る中に寄り添う二羽の雀。
寒さを避ける為身を膨らませて空気を孕んで暖をとる姿は、
古来より「ふくら雀」の愛称で呼ばれています。
これを「ふくら→福来→福が来る」になぞらえて、佳き新年を間近にする縁起に使ってみました。
過ぎゆく今年、振り返ってどんな一年だったかを想いながら、冬姿の寒樹と雀。
静かな当たり前の飾りの中に潜ませる趣意。
盆栽人として、己の鍛錬を込めて 飾りは "その向こう側にある想い"を必ず念想したいと思います。

 私の下に来て四年目となる新井君。

この秋初めて作風展の新鋭若手作家部門に挑戦します。
作風展といえば見事な改作による古木の姿が有名ですが、
年々コツコツと培養管理が続けられてきた樹や人がもっと再評価されるべきだと私は思います。

この若手部門のように様々な形で門戸を開いて多くの人々が
“挑戦”出来るシステムを広げていってほしいものです。

さて新井君は花梨の中品株立ちです。
親心としてなんとか入選することを拝んでおります。


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