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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:秋


【老境の中に描く 季節の楽しみ】

40年のお付合いを頂く愛好家、小林二三幸様より季節の盆栽便りが届きましたので、
ご本人の了解を頂き、お紹介させて頂きます。
写真の日本建築の座敷は、小林様が大手企業の重役を退いて
「晴耕雨読 盆栽三昧」の日々を過ごす為に、10年前より旧家を改築して作り上げたものです。

今回はまさに "秋"! 
山蔦の老木が濃淡の深紅の彩りを見せる最高のタイミングです。

「月に落雁」の掛け軸は、"遠見の景色"で席の季節と広がりを扶けています。

脇床の鋳胴の人物像は「養老」。
今回は養老に固執せず、蒔や柴を取りに来た杣人が、山中で憩うひとときの情景を物語っています。
主木を引き立て、季節の興趣を喚起させ、ものの想いを深める・・
当たり前のように設えるこの席に、小林様の熟練の"見せぬ技"が潜んでいます。
脱帽・脱帽


【添景で浮かび出る 常盤柿の盆栽】

両手に乗る常盤柿の盆栽、橙色の実姿はこの季節嬉しいものです。

先日、小品盆栽専門家より可愛らしい小道具を入手したので、この樹と合わせてみました。
二人の子供がハシゴを使って柿の実を取ろうとしています!

盆栽だけで楽しむ観賞、そしてこの様に添景によって情感と景色を広げる方法、
人それぞれの感性が、ひとつの盆栽に様々な世界を作り出せるのも、盆栽趣味の楽しさです。
身近な小物で空想の自然に挑戦してみて下さい!


最近は秋の彼岸まで続く残暑。
それでも暦も朝夕の空気も何処と無く秋の気配。 
盆栽飾りも"ひと足早い季節の姿"が嬉しいものです。 

相生の幹立ちが風になびくように流れを見せる五葉松、
見上げる空には「中秋の名月」、
対岸の深山は名残の滝音を残す渓谷の美。 
まだまだ水遣りに余念の無い中、どことなく"もう秋だなあ"と捉える心を大切にしたいものです。
9月15日が中秋の名月ですが、実際には17~18日が一番満月に近いみたいです。 

私も含めて多くの盆栽愛好家が訪れて下さるプロの盆栽園は、
せめて一席でもこんな季節を切り取った席飾りを毎日しないといけないですね。 

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