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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽庭園


水石協会が来春開催する『日本水石名品展』の選考審査、図録撮影が、都内春花園さんで行われました。

小雨降る美術館の休館日、合間を縫って、見慣れたはずの数々の名木を眺め散策して気がつく事がありました。

“樹が皆んな老成の美を呈している!“ 


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10数年前、「盆栽は“面“で捉えるのではなく、“線“で表現したい」と謳い始めた小林師。

その頃に大胆に枝をはずし、樹を“裸“にするが如く改作の限りを尽くした樹々達が、

あらためてふと観れば、ぞっとするほどの“古感“と“雅格“を示し始めていました。

懐や枝先にまで流れる線と命、枝の厚みで本質を隠すのではなく、すべてを晒しながら生きる姿を捉える。


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小林師が見つめ続けた象形(カタチ)は、その完成形を歩み続けているよう。

“只々、樹が好きなんだよ“と、屈託のない笑顔で答えてくれる小林師。


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本当の盆栽作家とは、人がその樹とどれだけの刻をともに生きて、己の“想い“をその樹に注いだか、かもしれない。

その意味では、小林國雄師とその庭園にある盆栽達はいつの間にか“共鳴“して“共生“しているように思えます。

【秋風待ち遠しい 大徳寺盆栽庭園】


秋の彼岸を迎える中、ようやく盆栽の日除け“掛小屋“の設備を外せる頃になりました。

羽生と変わらぬ京都の夏は、今年は38~40度の猛暑が襲いましたが、

お陰で“仏様“に守られた庭は、樹の痛みもなく無事に秋を迎えそうです❗️


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彼岸前には小屋を外し、リンゴや柿など、秋めいた樹を少し足して、

いよいよ盆栽庭園に訪れる世界の方々に、春に並ぶ日本の素晴らしい季節を満喫しながら盆栽を鑑賞して頂く時になります。

庭園が倍増となる拡張工事もまもなく始まります❗️

増設部分には、ご住職の意向で、私がお客様と歓談したり、ご紹介する盆栽を並べる場所も出来るようです‼️

となると⁉️私は月に10日くらい、大徳寺に常駐する日々が始まりそうです💦


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“禅林の盆栽庭園を守る“  それが私のここでの努め!

気負うことなく、時の流れに任せて精進したいと思います。

【大徳寺盆栽庭園・財団「慶雲庵」と共に!】


残暑厳しい京都、大徳寺盆栽庭園も5年目の夏となりました。

中世戦国武将の菩提寺“塔頭“に囲まれた聖地で日々国内海外の拝観者の方々を迎えています。


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盆栽の名品と言えば、著名盆栽園に訪れるか、

国風盆栽展(東京2月)や日本盆栽大観展(京都11月)など、“盆栽を見に行く“と言う予定が必要となりますが、

この庭園は年中無休で歴史的名木をご覧いただける事で、京都観光の新しい名所になりつつあります。

約50点の盆栽、今秋より現在の規模を2倍以上に拡大する拡張工事が予定されています。

京都に本拠地を置く一般財団法人「京都国際文化振興財団」通称『慶雲庵』は、

日本の盆栽の保存継承、そしてこの文化の発展と啓発に尽くされている財団ですが、

この芳春院盆栽庭園に貴重な名木を常時10点ほど、季節を替えて展示下さっています。


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推定樹齢800年を超える、上杉謙信公由来の一位、徳川慶喜公遺愛の五葉松、

明治天皇の弟君 伏見宮貞愛親王遺愛の宮様楓、国風賞受賞樹となれば枚挙に暇がありません。

来年の今頃には、拡大された庭園に更なる名樹達を迎えて、展示棟での名器や名鉢、名水石の展示も始まります。


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まだ5年、ここから10年、いずれは100年の盆栽庭園となる事を目的に財団の活動と共に過ごしています。

是非京都にお越しの時は、いらして下さい。

【梅雨の晴れ間!庭園黒松の手入れ❗️】

万博での盆栽展以来、6月になって初めての芳春院盆栽庭園。
梅雨明けの日射除けの為のこの庭園特有の“一本ずつの遮光小屋掛け“は、先回木枠だけは完了しておきました。

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今日のように“梅雨の晴れ間“となれば、ちょっと強い陽射しとなりますが、少しは照りも必要です。
盆栽の水揚げの強いこの季節、何よりも朝の水掛け、そして時期を待ってくれない黒松赤松の“芽切り“❗️

庭園の両種の芽切りは済んでいますが、今年芽切りをしないもの、これの処理をしました。

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旧寉龍庵コレクションの黒松。
再来年の国風展へ出品する事となり、芽切りを避けた今年は、充実した一年にして、来年芽切りを行う為に、新芽の途中で留める“芽留め“の作業。

鐘の音しか聞こえない境内の中、一心に手入れに集中する時、これは私にとってかけがえのない至福の時間です。

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終了後、久しぶりに芳春院奥にある「京都四閣」のひとつ、『呑湖閣』を望みました。
盆栽と向き合う手入れの刻、禅林に流れる空気、“しばらくここに居たい“と思う日となりました。


「京都国際文化振興財団」、通称『慶雲庵』の次回企画展示について、長野県小布施にある鈴木伸二氏のアトリエに伺いました。

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盆栽作家として“次代の頂点“と喧伝される彼。
お互い同じような年齢ですが、もう30年以上のおつき合いになります。

作家としての数々の受賞歴を持つ彼は、つい先ごろ、業界つまりプロの団体の役職をみずから退任するという決断をされました。
“将来の理事長候補“とまで目されていた彼は、
“森前さん、私は幾つもの事をやるタイプではありません。
小僧に入った頃と同じく、盆栽を見つめて盆栽を創る事、そして今この年になると、
若い盆栽を本当に愛する者達に私が描いてきた色々な事を技術を含めて寄り添いながら伝えていくことが一番楽しいんです“と。

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久しぶりに観る彼の庭、彼のアトリエは、盆栽と共に生きていきたいと言う彼の姿そのまま!
例えようのない名木群でした❗️

同じ盆栽家の道を歩まれる2人の息子さん、そして世界から“鈴木の下で学びたい“と言うお弟子さん達。
聞けばここからこの小布施を舞台に新たな展示庭園を地域の行政と協力して“町興し“のひとつとして始まるらしいです!

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振り返れば、意見が合わず、よく喧嘩もしたし、慶雲庵財団を支える立場は違っても、
盆栽とその文化をもっと広げて守らないと!という気持ちで繋がって来たように思います。

新たな道を拓く彼、不思議なもので、私も今年はお預かりしている大徳寺芳春院盆栽庭園が、現在の2倍の規模になる工事開始となります。
来年には室内展示設備や、様々なワークショップが出来る庭園へと変貌します。
個性も違う2人、だからこそ30年以上もこうしてお互いを意識して高めて来たのかもしれません。

さて、ここからどんな“幕“が開くのでしょうか❗️
それにしても、彼の盆栽の管理能力には頭が下がります💦

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