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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽鉢


大観展が終わってすぐ、愛知県稲沢市で行われたオークションは、もう少しで1億円!の大台と言う久しぶりの大型オークションでした。
その中に普段では目にすることのない鉢が出品されました。
備前焼の人間国宝、伊勢崎淳先生が作った鉢類です。

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数年前、名古屋に盆栽美術館を作ろうとしていた大家愛好家(残念ながら志半ばで逝去)が、伊勢崎先生に懇願して作られたもの。
故人の放出オークションの際は、盆栽が植えられたものが1点だけで、
“噂の備前焼盆器は何処へ行ったのだろう?“と、その行方を皆々で首を傾げていたものでした。

故人に近しい今回のオークションに自身の蔵品群の中に、この“幻の鉢“は眠り続けていたのです。
“将来に残したい!“  その思いでなるべく多くを落札する事に努めました。
その後、岡山県に住される伊勢崎先生に連絡をとると、“覚えています“との弁。
百点近い盆器群の桐箱を作る準備を今はしています。

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いずれ、岡山に届けて、各盆器の箱に、“箱書“や押印をお願いしようと思っています。
人間国宝となった陶芸家が残した盆器、作家の作品として箱書や押印は大切です。
浅蔵五十吉・三浦竹泉・思えば、過去にも著名陶芸家の盆器作品に関わってきた事を思い出します。
“炎の陶芸・備前焼“の盆器❗️
どんな盆栽を合わせるか?楽しみです‼️


日本の盆栽鉢作家達が、次々と亡くなり、“本物の盆栽鉢“を作る方が、本当に数少なくなりました。
不足する分を補うように、中国より大量の“新渡“と呼ばれる鉢が、我が国に届きましたが、
20~30年前の作品は、それでも1点造りのしっかりしたものがありましたが、
経済成長著しい中国では、“陶都“ 宜興ですら、大量の胎土と手間のかかる盆器から、
アトリエの一室でも作れる茶陶関係に、若い陶工は向いてしまっています。

8年程前、中国の最上質の陶土を用いた、往時の“失われた盆器“の再現をしてみようと、泥物の宜興、釉薬の広州(広東)に赴いて、
30年50年の後、多くの盆栽界の方々が、良質の鉢として楽しめるように“実用の名器“を作り始めました。

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本物の土、本物の焼成、本物の釉薬、幾度も訪れて、現地の陶工の人達と交流を深める中、
少しずつ、お互いが、“良い物を作りたい“という意識で共通した人間関係にまで、辿り着きました。

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出来上がった鉢を少しずつ日本に運び、試験的に、展覧会のブースなどで発表して行くうちに、
プロの方々から“良い鉢だね“ “森前さんの作った鉢は、寒さに当てても割れたりしない“など、一定の評価を頂くまでになりました。

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“全国に広めたい“  そんな思いから、カタログによる地域性を無くした通信販売への計画を立てて、
現在、その集積地と設備を模索しているところです。

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制作・輸送・様々なコストが値上がりする今、実際に事業になるものか!不安なところもあります。
しかし、“この仕事はやるべきものか?“と、自問すれば、“必ず未来に答えがある“と確信出来るのです。

私がいなくなる頃(15~25年後💧)には、国風展などでも見かける鉢になってくれればと思います。
それにしても、いろいろ“係り“が加算して、頭が痛いです😓


10年前、中国の経済発展に伴って、日本盆栽界の“古渡盆器“や、中渡実用鉢の多くが、制作地中国へ100年ぶりに“怒涛の里帰り“をしました。
かく言う私も、数多の商売をして稼がせて頂いた主力メンバーでした💦 
“こんなに売ってしまったら次代の鉢はどうなるのだろう?“と思う中、
10代の頃から好きだった中国鉢の聖地“宜興“へ取材で赴く機会を得て、
多くの紫砂盆器陶家と出会い、いつの間にか、“もう一度、ホンモノの烏泥や紫泥を作ってみたい“と思うようになりました。

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悪戦苦闘の末、数年前に“この土、この焼き・この器形なら、日本盆栽界でも必ず使える“と言うものに届きました。
あれから数年、今ではその後に探索した“失われた広東釉薬“と言われた色鉢も完成して、
来春には、ようやく全国の方々へ通販出来るカタログが出来ます。

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味わいを増して、古渡のような風合いになる頃には、私もこの世にもう居ないでしょうが、
“これは中国盆器の再現に努力した盆栽家が残したものだよ“と、誰かが語ってくれれば本望です。
カタログ制作に先立って、以前よりこの鉢類に高い評価を頂いていた“盆栽界の宝“、
名匠木村正彦先生に、推薦の評をお願いに伺いました。

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“この鉢達は、使うと分かるよ、本当に樹に良いよ“のお言葉❗️
全国の愛好家の方々にお届けする日はもうすぐです。


コロナ感染非常事態の中で開催された「第95回国風盆栽展」併催の盆栽大市。

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私達専業者の本丸「上野グリーンクラブ」の特設売店も、
通常のブースメンバーから、出店見合わせの業者さんが多く、各店の配置も大幅に変更されました。


私共エスキューブ雨竹亭も、従来の2階大型ブースから、初めての1階屋外ブース。

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開催直前に、メイン会場の“名園大手”が定席となっているクラブ本館1階の、2店舗分を追加で受け持つ事になり、
思案の末、“こんな時だからこそ、来場される皆さんに、最高の展示をお見せしよう!“と決めて、
普段では出来ない、“名品のみの本格展示”をそこでしてみました。


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屋外の超大型ブースも、ありがたい事に、初日だけで25点のご成約を頂き、
メイン会場の名品展示コーナーも、皆様にお褒めの言葉を頂く結果となり、有り難く思っています。




盆栽園は、各園それぞれの個性と特徴があってよいもの。
規模の大小ではなく、自分の願う売店作りで愛好家に楽しんで頂く事が大切だと思います。
“海外が来ないから・コロナで来客が半減するから・どうせこんな時売れないから”、
色々な考え方があっても仕方がないと思います。
でも、私はこんな時こそ、それでも盆栽が好きでいらして下さる方々の為に、
プロ業者は、“明日の為に“精一杯の店作りに心がけるべきと考えています。

友人の名匠、鈴木伸二さんもいつもの年と変わらぬ見事な出店。

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17日まで続く祭典、来て下さる愛好家の皆様の為に、日々僅かな努力でも大切に盆栽界の一大イベントに尽くしたいと思います。



2月8日〜17日に開催される「第95回・国風盆栽展」に併催される、上野グリーンクラブの「立春盆栽大市」は、
私共エスキューブ雨竹亭も、毎回クラブ本館2階に、最大ブースを設けさせて頂いておりましたが、
新型コロナウィルス感染予防による出店ブース減少により、
“盆栽界の一大イベントの会場が、ガラガラの出店は寂しい“との判断と、組合への協力を込めて、
初めて1階室内付き屋外ブース(29台分)と、大市のメインホールである本館1階の鈴木伸二師が作品を陳列する対面の大型ブースの2ヶ所を預かる事になりました。


コロナの非常事態宣言延長に伴って、今回はお得意様への案内も控えての開催です。
“海外も来ない、国内も半減、売れない”の下馬評は、そうかもしれませんが、開催すら危ぶまれた国風展、挙行が決定したからには、
こんな中でも訪れて下さる愛好家の皆様へ、お楽しみ頂くだけかもしれなくても、お迎えをする展示をするのが、専業者の責務と思っています。

4日会場設営、5日盆栽搬入、6日飾り付け完了、7日午後プレオープン。
その前日の3日、秋に発注した雨竹亭オリジナルの中国盆栽鉢(宜興宝山製の泥物鉢と広州劉峰窯の広東鉢)が、40ftコンテナで着きました!
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朝から全員で下ろして検品、かたや明日の設営の資材積込み(資材だけで2トントラック1台!)
テンテコ舞いの1日でした。

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会場に持ち込む盆栽達の仕上げ手入れも夜まで、鉢を磨き、化粧苔を貼り直し、
細かな枝先までの見直し、等々、やりたいことばかりに追われる数日です。

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こんな事をもう45年以上やっていますが、国風展、その売店、いつもワクワクそわそわするのは、盆栽業の性でしょうか(笑)

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