雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 展示会


1月19日、第100回の記念展となる国風盆栽展の審査会が上野グリーン倶楽部で行われました。

雨竹亭チームも、毎回名匠木村正彦先生と合同編成の準備をして、私達の方だけでも今年は11点の応募をしました。

羽生でお世話になっている愛好家の方々でも、10回以上の入選をされている方もあり、

今年も秋口から木村先生と樹の手入れや鉢合わせなど、“その時に出来る限りの“ 準備をして臨みました。

国風賞候補クラスの加点を頂くものもあり、順当な成果!と言いたいのですが、

残念な結果になってしまった樹がありました。


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姫林檎の中でも実が硬く、寒さの中でも実をしっかり残す『紅姫』

5年ほど前に埼玉西部の古老盆栽園より譲り受け「先代が突然変異で見つけたもの、実が落ちない」と言われました。

案の定、大観展の頃、大徳寺芳春院盆栽庭園に毎年実成りの時期に飾っても、年が明けても

実は実色と共にしっかりしている不思議な樹でした。

“一度世間様に見てほしい“と言う思いで、10回以上連続で国風展に出品されている大家にお願いして応募しました。

結果は当落の境から1点足らぬ落選💧

暖冬の影響か?実が萎み始めた中での審査、

“珍しい樹、少ない応募樹種は入選しやすい“と言う、自分の固定概念が招いたもの。

何よりも国風展を楽しみにされていたお客様に申し訳なく、遠方ではありましたが、

頭を下げに関西まで伺って平身低頭、お詫びを申し上げました。

“落ちるような樹は要らない“と言われて当然のところ、懐の深いお優しいお客様、

“あまり気にしないように、また作ってみよう“と🙇‍♂️  

プロとして、50年以上の経験を持つ者、己の甘さ、傲慢さ、それがお客様に要らぬ想いと態度をとらせてしまった事、

忘れてはならない出来事になりました。


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樹の引取りの申し出をしようとしていた私を察してか、お客様は“今年の秋の実をまた楽しもう“の言葉🙏

まだまだ、人としての修練が足りない自分を恥じ入る経験となりました。


大徳寺での増設建築の“上棟式“(仏式なので言い方が違うみたいですが)の為、京都~羽生の2往復をする中、

最終日にようやく、上野グリーン倶楽部で開催している『第51回日本盆栽作風展』に行きました❗️


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真柏の名手として、過去にも最高賞を重賞している、岩手県の大町さん。

今回の受賞作品は、過去の彼の内閣総理大臣賞の中でも、私は一番好きな樹でした‼️


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明るく飾らない彼は、偉ぶるでもなく、“ありがとうございます“と普段と何も変わらない姿。

山採りの名人として、本人の同門である井浦貴史さんと交流深かった父君が、

想いを込めて作出した素材を基に、彼の技量のすべてを注ぎ込んで生まれた“令和の名樹“。

真柏盆栽とは如何なるものか?を如実に物語る次代に残すべき名作だと思いました❗️


加えて、若い方々の出品作品が目立っている事に嬉しさも感じました。


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エスキューブ雨竹亭からも三人が入選出品❗️

若手部門で2人が入賞した事は、私にとって内閣受賞とは別の深い嬉しさがありました。

日頃から作品作りに費やせる時間の少ない私の所で、僅かな刻を生かして挑む姿が、

このような形になってくれる事、家族にも本人にも、良き励みになってくれるのが何よりです💧

盆栽の古典の王道から、“新たな盆栽への提案“まで、この作風展の舞台が未来の盆栽作家の道しるべであり続ける事を心から願う時間でした。


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日本で最も有名な観光地、京都で毎年開催される大盆栽展「日本盆栽大観展」も今年で45回となりました。

開催が始まった当時、21歳の私も若きスタッフとして、水掛けや写真撮影に駆り出された事が昨日のように思い出されます。

主役展示となる、財団法人「慶雲庵」の企画・構成のすべてを担当する立場になるとは夢にも思いませんでした。

来場される方々も、今では世界各国からとなり、今年も過去最高の観覧者数となったようです。


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来春100年目の開催となる東京都美術館での「国風盆栽展」とは趣向を変えた大観展。

私の師匠達が半世紀前、“もっと自由な展覧会を西日本で“という願いで、旧態の盆栽界と苦労の折衝の末に成し得た展覧です。

現在の大観展は、内閣総理大臣賞をはじめ、盆栽の各部門別の審査が行われます。

一次選考は業界役員と得票点で、部門別3点が選出されます。

その後、特別審査委員として、業界各団体の長の方々、そこに文化人数名、海外審査員数名という構成で、選ばれた3点から最優秀が選出されます。

その中で、“すべての作品から最高の樹“をまず選出しますが、今回ほどその選考に苦労した過去がないほど激戦だったそうです。


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結局選ばれた内閣総理大臣賞の真柏は過去に“国風賞“を受賞した名樹、僅かの差で文部科学大臣賞となったのも真柏でした。

私などから見れば、どちらが大賞となっても甲乙付け難いものだったかと思います。

個人的な見解ですが、愛好家の大切な樹に優劣を付けるということは、とても難しく、

いずれ私もこの最終審査員となる時、本音で言えば辞退したいくらいです。

盆栽はひとつずつその個性が違います。

見方を替えれば、皆素晴らしく、賞というものに対して、受賞を競い合うような姿は、

この大観展を開いた先輩達も望んではいなかったと思います。


審査結果というものは、誰もが悲喜交々になるものですが、その中で記憶に残る事がありました。

文部科学大臣賞を受賞された樹の担当者であるプロの陳建星氏です。

当然この真柏も最高位を願って出品されたでしょう。

勿論審査は時の運、何よりも感動したのは、その後の彼の態度です。

売店で多くの日本のプロ友人達に“残念だったね“と声をかけられると、“ありがとう“と微笑みを湛えながらの応対!

心の中では悔しさが溢れているでしょうに、それを一切出さずに、この展覧を祝うように静かに紳士的に皆んなと言葉を交わす姿は、

本来日本人が何よりも大切にした“人としての品位“を感じる素晴らしいものでした❗️


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“盆栽を愛する者は、その盆栽に相応しい品格ある人間である事!“と言われています。

今回は中国の友人にその大切さをあらためて教えてもらった気がします。

この樹は、近い将来、真柏盆栽の頂点まで辿り着くでしょう。

その時は陳さんと祝杯を重ねたいと思います。


45回目となった日本盆栽大観展も美しい京都の紅葉と共に閉幕しました。

来場者も昨年に増して多く、訪れて下さった方々にも好天に恵まれた良き展覧会だったと思います。


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展示内容も年々のレベルの高さは、盆栽界全体のこの展覧会に対する意識と意欲の表れ!

私も慶雲庵財団の大型ブースの企画・構成・展示、お世話になる“御三家“とされる、舩山・本出・寺内各氏の特別企画展示💦 

毎年の事ですが、企画構成の段階から、知恵熱が出る想いで取り掛かりました。


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財団は今年が100年となる“昭和“にちなんで、“昭和百年の軌跡“  として、

様々な斯界を彩った貴重な盆器や資料、何よりも、初公開となる“広島被爆の松“を展示しました。


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世界が紛争などで、混沌とする中、盆栽に一杯の水をあげる事を忘れずに苦難の時を乗り越えた先人達への感謝、

“生きる“という何よりも代え難い命題を感じさせてくれる盆栽達。


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御三家は、王道の舩山さん、“平安のみやび“を源氏物語54帖を中心に飾られた本出先生、

10年前、仲間の皆さんと旅したシルクロード“敦煌“への想い出を水石で表した寺内先生。

普段の盆栽展の展示も楽しいものですが、テーマを決めたこんな展示も、大観展ならではかと思います。


売店の方も、仲間のみんな、其々に良き結果だったようです。


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手入れの行き届いた盆栽達、様々な道具や水石に盆器、各出店の特色や多くのお客様、

普段は最終日となれば、少し閑散となるものですが、閉館時間まで、途切れる事ない賑やかな時でした❗️


春と秋、年2回、羽生雨竹亭で開催する観照会。

今年も秋の飾りを庭内に設えてみました。

普段、どうしても“その時にお客様に求められるもの“を中心の商売や店作りになってしまいますが、

この時だけは、細やかな足元にあるような樹なども、精一杯のお化粧をして、展示場や庭を彩るようにしています。


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雨竹亭の特徴である、“盆栽も水石も最終的には飾るもの“と言う意味で、水石や盆器、掛軸に飾り道具。

収蔵庫も含めてすべてを開放してご覧頂けるようにしています。


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応接の床の間には、“松風“を感じる、名匠木村正彦先生の施術による、五葉松の根連り!

季節を添える為に掛軸には、今井景樹の“月に散り紅葉“、そして彼方に見える佐渡赤玉石の名石。


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脇には山里の景色そのままの柿の盆栽。


私がナビゲーターを務めるYouTube「WABI CHANNEL」などの影響で、若いご夫婦連れの来園も多くなった雨竹亭。

訪れた方々すべてが、名木名石だけではなく、盆栽水石の素晴らしさを満喫頂ければと願っています。


秋の観照会についてはこちらから

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