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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 盆栽


毎月2回の盆栽教室、3月は生徒さん達も、自身の盆栽の手入れと植え替えで、
皆さん1~2本はその日に仕上げたくて、朝から作業に忙しい教室です。

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加えて、教室の「生徒作品展」を5月に開催する事になり、
さて!その展示に使う盆栽の手入れと植替えに、躍起になっています(笑)

そしてこの日は、“あの樹は枯れたのでは?“と噂された、旧高木美術館蔵の名樹「稲取」を
来年の100回記念に出品すべく、森山義彦先生の協力を得て、仕上げ整姿と植替えをしました❗️

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高木美術館の記念帖の写真から35年! 
刻は人と同じく樹の姿を変えるものです。

3月28日の盆栽協会による「貴重盆栽登録会」に応募すべく、
現在の稲取の良さを少しでも引き出せればと、これも高木美術館が旧蔵されていた、紫泥の大古鏡盆器に納めてみました❗️

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衣装が変わるとホントに姿も雰囲気も変わるものです‼️
こうしてお日様の下で、盆栽達と過ごせる時間、たとえ疲れていても、こんなに佳き疲れはないものです❗️
有り難い1日でした‼️


厳寒の細雪舞う小布施に長年の友人、鈴木伸二さんを訪ねました。
長野県の“小京都“と謳われた小布施。
この地に伸二さんの要請で初めて訪れてから、もう35年の月日が経ちました。

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いつの間にか、お互い還暦も過ぎて、“老成“に向かう歳になり、ここからの時間を考える刻にいます。
私の羽生と京都大徳寺、彼の小布施、求めるものや願いの中身は多少違っても、形に残そうとする盆栽人としての胸中は似たものがあります。

北斎館という、この土地の観光を創出された市村家、ここが彼の盆栽作家のここでの活動と発展を
町を挙げて全面的にバックアップしている事は、有り難く、羨ましい限りです!

新しく小布施の中心地に新しい盆栽のアトリエ庭園を作ろうとしている事は、昨秋より彼から相談を受けていました。
色々な準備が進み、いよいよ工事着工間近の中、最終的な構想の打合せをしました。

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相変わらず、いつも彼に頼まれると弱い私💦 
結局、盆栽に対しての新しいビジョンや夢を持っている者に私は、自分の拙い知識や経験を活かして欲しいのです。

盆栽が、世界に広がる時代、雪深い冬の小布施にも白馬などから海外のスキー客が数多くこの静かな街に訪れています。
10年後の盆栽界がどのように変わっているか?
楽しみですね❗️


3年前、中京の稲沢より運ばれた超大型黒松! 
元々は庭木として育てられた中の、“筋の良い“素材でした。
幹や立ち上がりに“もしかすれば、将来大変な盆栽になる!“と言う夢のような事を思いながら、まずは作を上げることに専念してきました。

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2月下旬、国風展水石展も終わった中、満を持して、枝接ぎと“胴接ぎ“の施術を行いました❗️
岩石性と変わらぬ幹肌は、何層にも皮を抱き、その下の生きている所に、鑿を打ち込み、
木質と皮の間の僅かな「形成層」を、巨木自身の枝から取った穂を楔形に切り、ピッタリと合わせる、といった至難の接木です。

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私とスタッフ、そして内閣総理大臣賞作家の森山義彦さんに協力を得て、必死の作業となりました💦
接ぎ穂が乾かぬようにビニールを被せ、培養場の“春の風“で傷まぬように、
3mの樹の防風設備を作りました。

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ここからビニールを外す初夏まで、気が許せません❗️
5年後、10年後、“あのオバケがその樹⁉️“と言ってもらえるように、作出に努めてみたいです‼️


国風展を間近にする中、福島市「舩山コレクション」へ、手入れ品の入替に伺いました。

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“東洋錦“の名樹(国風賞受賞樹)を名園“芙蓉園“竹山先生の所で毎年預かって管理頂き、早春の頃、いつも福島に運んでいます。
今回はここから五葉松「稲取」を、手入れと3月に行われる貴重盆栽登録会に申し込む為にお預かりしました。

“舩山さんも国風賞でも狙わないの?“と、同業者より問われますが、ご本人も私も、
展示会での受賞というものは、審査される方々が授けて下さるもので、趣味として“賞狙い“をする事にあまり興味がないのが本音です。

今年も一位の盆栽で国風展に出品させて頂きますが、来年の国風100回記念も、
この地「吾妻支部」の支部長として、やっぱり五葉松を飾ろうとなり、故高木礼二さんから譲り受けた、「稲取」で申込む事にしています。

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名樹“東洋錦“でも飾りますか?と問えば、“目立ちたいとは思っていない“との事。
八十路を越えてなお、すべての盆栽の水掛け・施肥・消毒をされる舩山翁。
雪残る厳寒の庭園で、愛樹を見守る老大家にどうやって寄り添っていくべきか?
自分のやるべき事を問う日でした。


100回を目前にした国風盆栽展。世界に広がる盆栽の趣味を反映するかのような、出品者の国際化!
以前はアジア、特に中国を中心とした流れを感じましたが、
今回などは欧米はもとより、南米や初めての参加者の国も多くありました。

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勿論植物検疫などの為、出品者の方々の樹は、すべて日本で得た盆栽達です。
この10年来の傾向を見ると、大型化は否めないにしても、少し以前の盆栽サイズに戻り始めたようにも感じます。

相変わらず、作出によって新しく世に出やすい、真柏の台頭が目立ちますが、
残念なのは盆栽の最高位とされてきた、五葉松の古作古盆が激減してきたことです。
松柏盆栽の中でも、一番“誤魔化しの効かない“五葉松。
作出にも他の種類と比べれば、2~3倍の時間と労力がかかるもの!
そんな種だからこそ、ゆっくりと育まれる中で、樹相を創り上げてゆく。
これが王道の盆栽だったのですが、気候の変化に弱い種でもあり、衰弱することを恐れて、海外には移送が難しい事も確かです。

それでも会場を彩る雑木盆栽や季節の花物盆栽は、やはり冬枯れの今、ひときわの“命“の美しさを感じます❗️

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また、現代の生活環境に合った、中品盆栽や小品盆栽は、頭が下がるほどの出来栄えばかり‼️
培養や技術の向上と地域なく向上していることが窺えます。

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愛好家の方々が、出入り方の盆栽園と二人三脚でこの展覧まで漕ぎ着けた作品達は、まるで舞踏会の衣装を纏った紳士貴婦人のようです‼️
プロは悲しいもので💧美しい盆栽達を眺めていても、性分でしょうか💦
すぐにその市場価値と“これ売れるなあ!“と、無礼な心がフッと浮かんでしまいます💦
修行が足りませんね😓

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