雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 雨竹亭


晩秋の古都京都の風物詩にもなっている“日本盆栽大観展“、今年で44年目になります。
毎年大型出店をしている私達も、展示品・売店ブース商品、最終的な手入れに追われる時期になりました❗️

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展示品の方は若き名匠、森山義彦さんの手も借りて、最後は“化粧苔“を貼って美しさを出す!
10mのブースとなると、展示に用意する盆栽の数も大変です💦

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25年前、独立して1年目の秋、小さなワゴン車1台で京都へ行き、ひとりで売店を立てたあの頃を思い出します。
今はここで多くの商売をすると言うよりも、スタッフ達にイベントでの大切な事を体現してもらう事のほうに、意識がいきます。
“お客様とのご縁を頂く場“、初めてお会いして立ち話をする方々、ここから長いお付き合いが始まる場所でもあるのです。

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さあ、羽生の庭で愛情を受けて過ごした樹々、晴れの舞台へ出発です❗️


11/1~11/5、秋の観照会も11/2の雨天以外、好天に恵まれて無事に終了しました。

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久しぶりにお顔を拝見するお客様、初めて応対させて頂く方々、
日々多くの皆様にお越し頂き、お陰様で、たくさんの盆栽や水石の“ご縁“を頂戴しました。

商売はさせて頂く事はありがたい事ですが、それ以上に、盆栽を眺めて堪能頂く機会として、
庭園内を散策される方々のお姿を拝見出来るこの展覧は、普段バタバタとしているばかりの私にとっても、来園される皆様と語らう楽しい刻でした。

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庭園・展示場・収蔵庫、半年に一度の整理整頓にもなります。
今回は夕暮れ刻に、置行燈が灯された庭園風景も残してみました。

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展示会は終わりましたが、羽生雨竹亭は、毎日開園しています。
いつでもどなたでも、気軽にお遊びにいらして下さい❗️


猛暑の後の“短い秋“が、あっという間に通り過ぎてゆくような気配💧
それでも盆栽達は、1年の培養の“ご褒美“のような美しい紅葉を楽しませてくれます。

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深紅の紅葉を真っ先に見せてくれる山蔦の盆栽。

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掛物には渡り鳥の“雁行き“の図。
脇床には、珍しい五島列島の紅石。

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毎年11月初めに開かれる、羽生『秋の観照会』は、年に2回の春と秋の盆栽を堪能して頂くイベントです。
老爺柿や深山海棠、姫林檎などの実物。
朝晩の冷気で引き締まった葉姿を楽しませてくれる松柏類。
なんと言っても、羽生の空の澄んだ“高さ“は、秋ならではの格別のものです。
是非、皆さんも彩りの樹々達と語らいにいらして下さい。

雨竹亭 秋の観照会についてはこちら


50年と言う盆栽水石の業の道、今までも多くの愛好家の方々の蔵品整理をして来ました。
私は、著名愛好家が天国へ逝かれても、自分から遺された盆栽や水石、その他道具類の放出をお願いした事がありません。
故人のご家族からの依頼があってこそ動くのが、プロとしての個人への敬意だと思っています。

今年も水石愛好会の頂点「一雨会」の古老が天寿を全うされました。
ご子息より連絡があったので、せめてご焼香だけと思って、新幹線に乗って、ご自宅に向かいました。

20年近くご無沙汰していたのに、ご子息が応対して下さり、合掌の刻を頂きました。

お暇しようと思った時、ご子息より“父の所有品の整理をお願いしたい“と頼まれ、
曰く、“この趣味の方々にわけてあげたい“、つまり価値に対しての欲や思いがありませんでした。

“新盆や初彼岸を済まされてから、片付けのつもりでお手伝いにスタッフと伺います“とお伝えして、
約束通り、庭に散らばる空き鉢などを含めて、貨物車2台分の積込みを4人で暗くなるまで行いました。

ひとつひとつを眺めれば、“ああ、これはあの時に求められたものだ“と、
走馬灯のように思い出してしまい、なるべく片付ける事に集中したものです。

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羽生に戻って、内容を段階的に分けてみると、総額は大変なものでした。
これを伝えると“すべて森前さんに任せます“の弁💦
故人が遺された次代へ繋ぐ秀品達。
少しでもご子息に喜んで頂こうと思っています。

その中に、高村光雲の鋳銀の小さな観音像がありました。

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私は、お世話になった方が亡くなると、必ず日頃使われていた鋏などを頂き、庭の観音堂へ納めるようにしています。
許可を頂いて、鋏とこの観音像を納めて“キチンと扱わせて頂きます“と手を合わせました。

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若い頃から商売をして来た私。
どれだけの大家達の後整理をした事でしょう💦

岩崎会長・小泉先生・横山先生・数えればキリがありません。
プロとしてどのようにご家族にして差し上げるべきか?
いつも自問自答しながら取り扱うよう心がけています。

天国に逝った方々に笑われないように、“森前らしいな“と笑って言われるように❗️


今年の十五夜は9月17日,翌日が十六夜(いざよい)そしてこのブログがアップされる19日が、立待月!
そこから居待月・寝待月・更待月・夜明け前の“有明の月“・日本人は月をこうして愛でて暮らして来たのですね❗️

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まだ穂は上がりませんが、糸ススキを飾ってみました!
足元の余分な葉を漉いて、スッキリと見えるように。

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掛物は、まさに“中秋の名月!
明治の大家、鈴木松年の秀作。

足下には木彫のうざきの対。
添えにうざきは、日本的な月見の席ですね。

盆栽飾り、水石飾り、その中でも、季節を映すこのような楽しみは続けたいものです。
ただ、暑さが残る時期が少しずつ長くなる中、ススキの穂が上がるのが遅れ気味のこの頃、
季節の移ろいも、温暖化でズレがち💦です😓

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