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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常


世の中が歳末から新春へと、日常とは違う生活に入る中でも、
木村正彦先生の所では、いつもと変わらぬ盆栽との日々が続いています。
大晦日も新年も、この季節は国風展の出品選考予定の手入れ(何と45点❗️)にも、余念がありません。

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既に準備を終えている樹達を毎日見廻り、僅かでも仕上げに修正点があれば、すぐに弟子達と手直しをする。
そんな毎年を半世紀以上続けられています。

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その事を問えば、
“私は盆栽だけが生きる道、一年毎日、盆栽から心を離した時はありません。これを日々続けている事が、私の毎日なのです“
と、いとも当たり前のように仰います。

昨今は、盆栽の修行をする若者達にも、年末年始の休暇をまず考えて、仕事のスケジュールを作るようになりました。
私も先生も“昭和の人間“💦 
小僧という時代を経て来た者にとって、修行中の自分に、“私“と言う文字と考えは存在しなかったのです。

時代も変わり、盆栽を“仕事“として、就職する人達が出てきた事は、有難いことでもあるのですが、
給料や待遇と言う、“社会が自分を守ってくれる世界“ として盆栽の経験時代を捉えている事が、
本当の意味で、プロへの道として、より良い経験が積めるものか?疑問もあります。
結局、盆栽人とは、まずは“大好き“があってこそのように思うのです。

他の事を投げてでも、好きな盆栽を突き詰めたい!一番上まで行ってみたい!
こんな夢を見るからこそ、いつの間にか、ホンモノの世界が身に付いているのではないでしょうか❗️

次代への見えない“憂い“を思うのも、年寄りの何とかですかね💦
私は、木村先生の生き方を仰ぎ続けたいと思っています。


久しぶりに、愛知県渥美半島の突端、雑木盆栽の名人の所へお邪魔しました。
土井文雄さん、土木と建設の地域を代表する企業を作り上げ、今は相談役として盆栽三昧の毎日。
私達プロからすれば、“雑木、特にもみじ再生の天才“と誰もが知る方です。

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ご自宅の庭は、もみじ!もみじ❗️もみじ‼️
ゆうに300本の将来性高いもみじがびっしり🍁

ひとつの庭の方はすべてが「獅子頭」!
伺った日も、“ちょうど枝接ぎをしているんだよ“と、手入れ室で、大型のもみじに、“通し接ぎ“の技法で、獅子頭を接いでいる所でした。

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持ち崩したもみじの素材、中枝が抜けてこのままでは飾る機会もなくなった樹達。
土井さんはこれに希少種のもみじの苗木を使って、枝に穴を通して活着させるやり方❗️

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この技法で、この庭からどれだけの“見捨てられたもみじ達“が、甦って盆栽界に帰ってきたものか‼️
“作るのが好きなんだよ“と、とても77歳とは思えない屈託のない笑顔!
5~7年で、甦る樹達。
全国を歩いて、誰よりも多くのプロ達から“退役“に扱われるもみじを買い取り、もう一度表舞台へと送り出す名人。 

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商売っ気もなく、プロに欲しがられれば、素材で買った値に手間を僅かに付けた金額で譲ってくれる方💧
“昔ほど、作り直したいと思う素材が無いんだよ“と、それでも今もここから旅立ちを待つ未完の名樹が約数百本‼️

これからも元気に盆栽を楽しんで長生きしてほしいと思いました❗️


大観展が終わってすぐ、愛知県稲沢市で行われたオークションは、もう少しで1億円!の大台と言う久しぶりの大型オークションでした。
その中に普段では目にすることのない鉢が出品されました。
備前焼の人間国宝、伊勢崎淳先生が作った鉢類です。

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数年前、名古屋に盆栽美術館を作ろうとしていた大家愛好家(残念ながら志半ばで逝去)が、伊勢崎先生に懇願して作られたもの。
故人の放出オークションの際は、盆栽が植えられたものが1点だけで、
“噂の備前焼盆器は何処へ行ったのだろう?“と、その行方を皆々で首を傾げていたものでした。

故人に近しい今回のオークションに自身の蔵品群の中に、この“幻の鉢“は眠り続けていたのです。
“将来に残したい!“  その思いでなるべく多くを落札する事に努めました。
その後、岡山県に住される伊勢崎先生に連絡をとると、“覚えています“との弁。
百点近い盆器群の桐箱を作る準備を今はしています。

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いずれ、岡山に届けて、各盆器の箱に、“箱書“や押印をお願いしようと思っています。
人間国宝となった陶芸家が残した盆器、作家の作品として箱書や押印は大切です。
浅蔵五十吉・三浦竹泉・思えば、過去にも著名陶芸家の盆器作品に関わってきた事を思い出します。
“炎の陶芸・備前焼“の盆器❗️
どんな盆栽を合わせるか?楽しみです‼️


師走の声が聴こえる古都京都。温暖化で遅れ気味だった紅葉も、冷気を纏った“北山時雨“が始まると、一気に色付きを増してきました。

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市内北部の大徳寺は勿論の事、水石展の関係で、天台宗比叡山の“里坊“、滋賀県の坂本へ赴き、
慈眼大師の廟や比叡山の里坊の中心的存在の滋賀院へ行きました。

京都の“艶やかな紅葉“とは少し違って、自然の山々の中そのままの紅葉風景がありました。

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盆栽展などの賑やかな喧騒とは打って変わって、しんと音ひとつない静寂な空気の中、
深々と森のもみじは、幾色もの色彩を楽しませてくれました。

柔らかなもみじの枝姿!
こんな姿の盆栽が作れたらと、しばらく見入ってしまいました!


1年ぶりに、九州最大の業界オークション「青樹会」に行ってきました❗️

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本州、特に関東圏の私たちにとって、佳き仕入れ先であった九州も、
中国勢の“リモートバイヤー“の全国的な活躍で、地域的な仕入れの優位性も無くなりました💧

全体的に海外リモーター達の勢いも弱くなり、本来の業界オークションの姿に戻りつつある中、
それでもこの土地ならではの面白い仕入れ品もありました。

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今回は“弱含み“だったので(出来高3,500万)仕入れには適した会となり、私も車両満載の買付けとなりました。

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勿論“売り“が弱い部分、買い易い訳なので、200万程度売って、20万の損益、
但し同じように買い付けた分400万も同じく通常よりも10~20%安いので、まさに交換会という訳です(笑)

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海外への流出が続く盆栽界、売り買い交錯の今回のような会は、私のように、オークションで売って現金を手にするのではなく、
不要分を処理して、次なるお客様へご紹介する品を求める業にとっては、やりやすい会となっています。

今月は、大型オークションがひと月で、5か所もある月💦
逆に言えば、この秋冬の相場を占う月にもなっています。
それにしても、心にグッとくるような樹が減りました😓
将来性のある樹を若いお客様に持って頂く事を痛切に感じるこの頃です‼️

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