雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

カテゴリ: 日常


普段より京都へ着く時間が早かった先日。
時にはゆっくり歩いてみようと、大徳寺に向かって“北へ北へ“と歩みを進めました。 
海外の観光客の方々で賑わう中心地のアーケード街、懐かしく歩いていると、アパレル関係の店舗に、見事な盆栽❗️

IMG_3264
現代的な展示スタイル。
全体がモノトーンの世界に浮かぶ100年の命❗️

私が初めて京都へ仕事で訪れたのが、46年前の20歳の頃。
佳き意味で“時代は変わってきている“と感じ入りました。
苔玉もショーウィンドウも良いもんです❗️

IMG_3265
ところで、ここに飾ってある盆栽の内2本が、私が手掛けて持っていたものだったのに、もう一度ビックリ‼️
懐かしくもあり、“元気そうだな!“と心の中で声をかけました。


国風展が終わって、1ヶ月余り、出品された樹たちの中には、出品審査の為に、
古渡盆器や審査の評価を高める為の鉢合わせをして臨んだものが少なくありません。

私どものお客様達も例外ではなく、彼岸も終わろうとする中、木村先生の所から、元の鉢に植え直された樹々が戻って来ました。

IMG_2963
この元鉢への再植替えは、2月中に行われましたが、12月の化粧鉢への植替え、そして元鉢へ。
つまり2度の植替えをひと冬の間にしている事になります。
これは樹にとって大変なダメージとストレスを与えます。
その為、先生と私どもは、再植替えから1ヶ月は、室(ムロ)管理をして、
“春“を少し早く樹達に感じさせて、根の活動を促進させてから、各所へのお戻しをしています。

IMG_2964
本当でしたら、普段の鉢のまま、審査へ臨みたいのですが、国風展の審査は、鉢も重要な評価となります。
今回も十数点の出品となりましたが、“これは和鉢だけど、鉢合わせとしては問題ない“と
そのまま応募した樹達数点は、植替えをして高級な鉢に入れたものに点数は及びませんでした💦

古渡盆器や高級な鉢は勿論良いものですが、何よりも大切なのは、その樹に鉢が映っているかだと思います。
審査をされる方々も、基準というものに悩まされると思いますが、
果たして、国風展のその時だけ、名鉢に合わせる事が正しいものなのか?
更なる熟考も必要かと思います。


今年の大雪は、この数年雪の少なかった新潟県長岡市でも、久しぶりに“雪除けの軒塀作り“を見る事になりました。
水石協会、組合でお付き合いの深い古老先輩、中川さんの所です。

IMG_2827
庭の盆栽は勿論雪除けで軒下に!
加えて大雪が軒に入らないように、仮塀は雪の量に合わせて少しずつ高くなっていく💦
私達関東人には実感のない冬の苦労を間近に感じました❗️

そんな中でも、中川さんは変わらず“水石三昧“の日々を過ごされているのが、歓談する部屋に感じられました!

IMG_2826
煎茶を長く研究される中川さんは、その見識を活かし加えた水石美を捉えられています。
いつ伺っても、そこここに目を惹く石達!

IMG_2828
時の経つのを忘れて、玄虹会展の飾りの話題、水石界の現状、話は尽きません‼️
あっという間の時間!
いけない!帰り道の関越トンネル迄の、豪雪地帯(魚沼・六日町・越後湯沢)、数メートルの雪だったのを思い出しました💦


富士を仰ぐ風光明媚な神奈川県・山北町。
この地で長く盆栽園を営む大先輩、松月園さんに久しぶりに訪問しました。
伺った時、80歳を超える今も手入れ室で毎日行われている作業に勤しんでおられました。

松田恭治師、名門大宮九霞園、村田久造翁の高弟として、長く業界に尽くされて来た古老。

IMG_2417
作家としてもその作風は、私達昭和後期に修行に入った者達から、
“本物の盆栽作りをされる手本のような方“と評された方です。

昨日買って来た盆栽達など殆ど無く、ご自身の棚で数十年は当たり前という樹達ばかり❗️
“最近の連中は、昨日買って来て今日売るようなものばかり。名ばかりの作家達で、商売のことしか考えていない“
と、相変わらずの辛辣で、でも的を射ている言葉💦

IMG_2418
お得意様である愛好家達と、樹を作出していく事を大切に、日常は手入れと管理に費やす。
時折は良品(盆栽・水石・卓など)をお客様に紹介して僅かな口銭を頂く。
生活は手入れ料とお預かりの盆栽達の管理料で、慎ましく暮らす。
歳を重ねてくると、“これが一番良いのかもしれない“と、その生き方、越し方を羨ましくも思います。

IMG_2416
明日売る為の針金整姿などせず、枝の味わいを出す為に、鋏作りで時間をかけて仕上げていく。
日常に追われる私などは、憧れしかありません。

“最近は日本の愛好家も、付け焼き刃な人が多く、プロと二人三脚で歩めるような人が居なくなった“とため息を吐かれています。
多様化する社会の中の盆栽界。
様々な在り方があって然るべきですが、失ってはいけない、
“王道の古典“と言える考え方や過ごし方は、まだまだ見習うものがたくさんあります。

“こんな日々が送りたい“と、叶わぬ想いを抱いて退出しました。


世の中が歳末から新春へと、日常とは違う生活に入る中でも、
木村正彦先生の所では、いつもと変わらぬ盆栽との日々が続いています。
大晦日も新年も、この季節は国風展の出品選考予定の手入れ(何と45点❗️)にも、余念がありません。

IMG_2283
既に準備を終えている樹達を毎日見廻り、僅かでも仕上げに修正点があれば、すぐに弟子達と手直しをする。
そんな毎年を半世紀以上続けられています。

IMG_2284
その事を問えば、
“私は盆栽だけが生きる道、一年毎日、盆栽から心を離した時はありません。これを日々続けている事が、私の毎日なのです“
と、いとも当たり前のように仰います。

昨今は、盆栽の修行をする若者達にも、年末年始の休暇をまず考えて、仕事のスケジュールを作るようになりました。
私も先生も“昭和の人間“💦 
小僧という時代を経て来た者にとって、修行中の自分に、“私“と言う文字と考えは存在しなかったのです。

時代も変わり、盆栽を“仕事“として、就職する人達が出てきた事は、有難いことでもあるのですが、
給料や待遇と言う、“社会が自分を守ってくれる世界“ として盆栽の経験時代を捉えている事が、
本当の意味で、プロへの道として、より良い経験が積めるものか?疑問もあります。
結局、盆栽人とは、まずは“大好き“があってこそのように思うのです。

他の事を投げてでも、好きな盆栽を突き詰めたい!一番上まで行ってみたい!
こんな夢を見るからこそ、いつの間にか、ホンモノの世界が身に付いているのではないでしょうか❗️

次代への見えない“憂い“を思うのも、年寄りの何とかですかね💦
私は、木村先生の生き方を仰ぎ続けたいと思っています。

↑このページのトップヘ