雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2025年01月


1月20日・上野グリーン倶楽部で、第99回の国風盆栽展の選考審査会が行われました。
全国から300点を超える名樹達が、“晴れの舞台“への出品を競う、盆栽界最上の競演。
私達“扱い業者“は、自分のお客様の盆栽が入選するか?落選するか?毎年一喜一憂の時です。

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エスキューブ雨竹亭は、毎年木村正彦先生のチームと合同で指導を受けながら挑んでいます。
半年以上前から出品予定を考えて、12月初旬には、最終手入れと鉢合わせ。

季節を違えた植替え(仮ほどき)の為、その後は防寒設備での保護管理💦
それでも、雨竹亭からの14点は全品が入選‼️

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この結果は、今までの苦労が消し飛びます。
木村先生チームとの合計で40点を超える応募。
審査搬入も羽生から大型トラックとハイエース、先生のお弟子さんである森山義彦さんの車両、そして先生の所のトラック💦

19日搬入、20日の審査、21日の図録撮影から保護室への戻し、そして前期後期に分けてのここからの管理💦 

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国風展はお客様にとっても“夢の舞台“ 、私達“裏方“が大変なのは当たり前。
それでも、始まりから終了まで、グリーン倶楽部と美術館を6往復!
スタッフも事故なく、最終的に盆栽をお戻しするまで、気は抜けません‼️


富士を仰ぐ風光明媚な神奈川県・山北町。
この地で長く盆栽園を営む大先輩、松月園さんに久しぶりに訪問しました。
伺った時、80歳を超える今も手入れ室で毎日行われている作業に勤しんでおられました。

松田恭治師、名門大宮九霞園、村田久造翁の高弟として、長く業界に尽くされて来た古老。

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作家としてもその作風は、私達昭和後期に修行に入った者達から、
“本物の盆栽作りをされる手本のような方“と評された方です。

昨日買って来た盆栽達など殆ど無く、ご自身の棚で数十年は当たり前という樹達ばかり❗️
“最近の連中は、昨日買って来て今日売るようなものばかり。名ばかりの作家達で、商売のことしか考えていない“
と、相変わらずの辛辣で、でも的を射ている言葉💦

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お得意様である愛好家達と、樹を作出していく事を大切に、日常は手入れと管理に費やす。
時折は良品(盆栽・水石・卓など)をお客様に紹介して僅かな口銭を頂く。
生活は手入れ料とお預かりの盆栽達の管理料で、慎ましく暮らす。
歳を重ねてくると、“これが一番良いのかもしれない“と、その生き方、越し方を羨ましくも思います。

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明日売る為の針金整姿などせず、枝の味わいを出す為に、鋏作りで時間をかけて仕上げていく。
日常に追われる私などは、憧れしかありません。

“最近は日本の愛好家も、付け焼き刃な人が多く、プロと二人三脚で歩めるような人が居なくなった“とため息を吐かれています。
多様化する社会の中の盆栽界。
様々な在り方があって然るべきですが、失ってはいけない、
“王道の古典“と言える考え方や過ごし方は、まだまだ見習うものがたくさんあります。

“こんな日々が送りたい“と、叶わぬ想いを抱いて退出しました。



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二十四節気「大寒」の頃。
羽生雨竹亭の応接飾りも、新春の景色から“まだ来ぬ春“を想うものになりました。

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野梅の古木、流れる幹模様と古感ある立ち枝の姿。
国風展などの、細やかな手入れが成された枝打ちをみせる樹も勿論素晴らしいものですが、
このような、山里の何処かに枯れ寂びた樹相で生きる梅の風情などが、私は好きです。

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掛物は「深雲古寺鐘」有名な禅語 “流水寒山路 深雲古寺鐘“の一節から書になったもの。
“山間の奥、渓谷の水音の路を歩くと、何処からか奥寺の鐘の音が聞こえてくる“ 
そんな実景を詩としたものです。
聞いているだけで、その情景が浮かぶ名詩。脇に悠遠な加茂川石の遠山姿を配することで、
更に詩と梅、そして水石が、ひとつの世界を表現してくれます。

“まだ咲かぬ梅、待ちわびる春の訪れ“ 
そんな“今“を設えてみました。

旧暦の正月「春節」も間近、国風展の準備に余念ない1月下旬。
そんな中でも移りゆく季節を、盆栽や水石で表現すること!
自分の鍛錬のひとつとして怠らずにしていきたいと思います。

【禅林盆栽庭園に降る雪!静寂の“白の世界“‼️】

新年、まだ“松の内“とされる10日、京都北部にあるこの「大徳寺芳春院盆栽庭園」は、朝から雪景色となりました!

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日本海側の厳しい冬型気候が、北山を越えて来ることは、この季節の日常ですが、降り積もる雪となれば、ひと冬に2~3回ほどです。
朝、まだ誰も歩いていない大徳寺、石畳も白い一筋の帯のようです。

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盆栽庭園も雪帽子を被った盆栽達と、真っ白に埋め尽くされた敷砂利の面。
普段でも静かな庭は、雪のカーテンで音が消え、静寂が際立っていました!

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そんな中でも、この庭に訪れてくださる内外の方々、ありがたいものです。

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年を越して、“名残の実“をまだ付けてくれている山柿、
枝々に積もる雪の間に、間もなく咲く深紅の花蕾を見せてくれる貴重盆栽の長寿梅。
“たった一つの姫林檎“「紅姫」は、褪せない実色に雪帽子を被った、“唯一の景色“を楽しませてくれています。

読経・鐘の音・座禅堂から聞こえる警策の音。
この季節があるからこそ、春が来ます。


1月10日、大徳寺への新年のご挨拶を兼ねて、初めて「雅風展」を見学に行きました!

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小品盆栽の世界は、門外漢の私ですが、展示されている樹々、売店の秀品、どれを見ても素晴らしいものばかり!
併せて、小鉢作家や名品盆器の展示だけでも、ひとつの展覧会を見ているようでした❗️

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普段から交流のあるプロの方々、初めてお会いする方々。 
同じ盆栽界でも、いろいろ違うものだなあ、と勉強になりました。

私が40年前、銀座三越で“小さな盆栽“を商っていた頃と比べれば、その規模、愛好家の層、共に世界レベルになってるように思います。
ただ、むかし、小品盆栽というもので、先輩達から教わった
“手のひらに乗る程度の中に、数十年の持込みと、ひと枝で樹相を表すもの“という世界から、
大型盆栽に求める樹姿が重要視されているように思いました。

勿論、私達プロは、愛好家の方々のご要望に則して変化してゆくもの。
“これは大変な手入れと管理の世界だ“が私の率直な感想でした。

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それでも、会場内の企画展示やイベントなどの豊かさ❗️
長年この展覧に携わって来られた業界の皆さんの汗と苦労の足跡を感じます❗️

海外の方々が、多くの来場者の半数近い事も、今まで小品界が、弛まぬ活動を繰り広げた証だと思います。
それでも・・やっぱり私は人間が大雑把なのか!
大きい盆栽に心が寄ってしまいます💦

なんでも勉強ですね‼️

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