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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2024年12月


年の瀬の中、売約済みの五葉松の未完の大型素材十数本を、プラポットを抜いて、運びやすいように、“根巻き“の作業をしました。

四国から畑揚げの樹をまとめて買い取ってもう5年。
根の育成の為に、深めのポットに下3分の1を発泡スチロールで冷えないようにして、しっかりとした根作りとなりました。

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フォークリフトで吊り上げても、根崩れしない程になった樹は、この根巻きにしても、培養上何も問題はありません。
四国からまとめて来た時は、“何年かかるものか?“と、不安もありましたが、
こうしてしっかりとした根になって、遠方でも出荷出来るようになると嬉しいものです。

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ただ、スタッフに、
"会長!減ったからと、いつの間にか四国に行って、また大量に買い付けて来ないで下さいね❗️適量を考えて下さい‼️"
と、お小言を頂きました💦

私の性格でしょうか!
やっぱり太くて大きいものは、いいもんですね‼️


久しぶりに、愛知県渥美半島の突端、雑木盆栽の名人の所へお邪魔しました。
土井文雄さん、土木と建設の地域を代表する企業を作り上げ、今は相談役として盆栽三昧の毎日。
私達プロからすれば、“雑木、特にもみじ再生の天才“と誰もが知る方です。

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ご自宅の庭は、もみじ!もみじ❗️もみじ‼️
ゆうに300本の将来性高いもみじがびっしり🍁

ひとつの庭の方はすべてが「獅子頭」!
伺った日も、“ちょうど枝接ぎをしているんだよ“と、手入れ室で、大型のもみじに、“通し接ぎ“の技法で、獅子頭を接いでいる所でした。

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持ち崩したもみじの素材、中枝が抜けてこのままでは飾る機会もなくなった樹達。
土井さんはこれに希少種のもみじの苗木を使って、枝に穴を通して活着させるやり方❗️

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この技法で、この庭からどれだけの“見捨てられたもみじ達“が、甦って盆栽界に帰ってきたものか‼️
“作るのが好きなんだよ“と、とても77歳とは思えない屈託のない笑顔!
5~7年で、甦る樹達。
全国を歩いて、誰よりも多くのプロ達から“退役“に扱われるもみじを買い取り、もう一度表舞台へと送り出す名人。 

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商売っ気もなく、プロに欲しがられれば、素材で買った値に手間を僅かに付けた金額で譲ってくれる方💧
“昔ほど、作り直したいと思う素材が無いんだよ“と、それでも今もここから旅立ちを待つ未完の名樹が約数百本‼️

これからも元気に盆栽を楽しんで長生きしてほしいと思いました❗️

【暮れゆく大徳寺・冬支度の盆栽庭園】

師走の喧騒をよそに、京都北部の大徳寺は、静寂の中を鐘の音と僧堂の修行僧の読経の声のみが響き渡っています。
紅葉の拝観者の多さに比べれば、ひっそりとした庭園。
でもこんな盆栽庭園も大好きです!(拝観料は減っていますが💦)

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冬景色の盆栽の入替も済ませて、新年までの姿が出来た庭は、しんと静まり返って、盆栽と対峙するには最高かもしれません。

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通玄庵の床の間も、名残りの老爺柿に、江戸狩野派の古画、狩野養川院の「冬景図」脇には古銅の堂宇。
むかし禅寺は、人里離れた山里の誰も訪れないこんな景色だったのでしょう。

冬姿の枯木立の雑木盆栽達、“春待ち“の梅の盆栽達、そして沁みるほどの冷気を受けながらも、美しい翠を湛える松柏盆栽達。

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移ろう季節、少しずつ“貌“を変えてゆく樹々達。
盆栽達の表情を観ていると、日頃の生業に追われる身から離れて、
本来の盆栽と向き合える自分に会えるような気がします。

除夜の鐘までもう少し!
ずっとここに居たい気持ちです❗️


大観展が終わってすぐ、愛知県稲沢市で行われたオークションは、もう少しで1億円!の大台と言う久しぶりの大型オークションでした。
その中に普段では目にすることのない鉢が出品されました。
備前焼の人間国宝、伊勢崎淳先生が作った鉢類です。

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数年前、名古屋に盆栽美術館を作ろうとしていた大家愛好家(残念ながら志半ばで逝去)が、伊勢崎先生に懇願して作られたもの。
故人の放出オークションの際は、盆栽が植えられたものが1点だけで、
“噂の備前焼盆器は何処へ行ったのだろう?“と、その行方を皆々で首を傾げていたものでした。

故人に近しい今回のオークションに自身の蔵品群の中に、この“幻の鉢“は眠り続けていたのです。
“将来に残したい!“  その思いでなるべく多くを落札する事に努めました。
その後、岡山県に住される伊勢崎先生に連絡をとると、“覚えています“との弁。
百点近い盆器群の桐箱を作る準備を今はしています。

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いずれ、岡山に届けて、各盆器の箱に、“箱書“や押印をお願いしようと思っています。
人間国宝となった陶芸家が残した盆器、作家の作品として箱書や押印は大切です。
浅蔵五十吉・三浦竹泉・思えば、過去にも著名陶芸家の盆器作品に関わってきた事を思い出します。
“炎の陶芸・備前焼“の盆器❗️
どんな盆栽を合わせるか?楽しみです‼️


第99回国風盆栽展も、1月初旬審査申込(締切すごく厳格です!)1/20には選考審査❗️
木村正彦先生の所では、ご自身の扱い分から、私共雨竹亭十数席、
そして各所からの扱い依頼を含めて、50点近い応募作品が、アトリエに集められます。

細心の手入れは勿論のこと、近年は審査方法が細かくなり、鉢映りなどは特に厳しくなっています。
この為、12月中旬には、約7~8割の樹の、“化粧植替え“が行われます。

大型の名木が、ひしめき合う木村先生のアトリエ。
所蔵される古渡りから中渡りの名器が、惜しげもなく
“この樹はこの鉢でいこう“と、先生の判断で、総出の作業が行われます。

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今回は、現在の東日本の代表的な先生のお弟子さん(とうに日本を代表する盆栽作家ですが!)藤川さん・森山さん、
これに埼玉県の白石君が助手参加❗️

現在の内弟子さん達を含めて、総勢8名と木村先生での、作業となりました。
鉢合わせをして、ここから審査に向けての“葉色“の調整や、微妙な手入れが進みます。
藤川さん森山さんのリーダー的参加で、木村先生も、何処となく安心しながら、“ここ!“という所だけを押さえているようです。

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幾つかの樹は、鉢映りでこんなに変わるものか!と変貌するものもありました。
どれだけの樹達が、この舞台裏である、盆栽達の「楽屋」での衣装合わせをして、送り出されたでしょう!
毎年40~50点が20年続いているとしても、800~1000点の盆栽❗️

ここでの作業が、いずれ次の人達に受け継がれる事を願う1日でした。

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