雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2024年03月


最近の盆栽市況は、“次の盆栽“を作るための素材の入手が難しくなっています。
この10年、市場が世界規模になる中、日本の愛好家の方々が、時間をかけて仕上げた盆栽達の多くが、私達プロの誘導で市場に流れました。
勿論愛好家の方々の事情(高齢で少し減らしたい・大きなものが扱い辛くなったなど)もありますが、
“要望のある売れ筋“を求める業界側の事情も関係しています。

年明けからの交換会(業界の卸売市場)も希薄になっている中、業界本部交換会(水曜会)では、様々な要因を含めて、
海外からのリモート参加(相手国の応札希望者を代行してライブでオークションに参加する仕組み)を
一時的に中断する決断をされました。
市況を考えれば、中断は収益を減少させる事になりますが、
国内の業界保護や、卸売り市場の適正化という点では、英断と言える事だと思います。

それでも、“この樹ならこう作れば“と思えるような盆栽が激減しています💧

第一から第三培養場まで、総数は数え切れないほどの羽生雨竹亭。
買い付けてから培養の安定まで1~2年、作ることよりも健常にする事を心がける樹達。

“こうしてみよう“と思う樹を少しずつ手入れと植替えをし始めました❗️

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山採り後、根元の切り落とした舎利幹がそのままになっていた真柏、整姿と植替えで、皆さんに観て頂ける盆栽へと導く。

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当たり前の事ですが、そんな時間を今まで以上に大切にしないと!と思う春になりました。

※画像の真柏の植え替え風景はWABI CHANNELでご覧頂けます


春の真柏植替え鉢合わせ解説~盆栽に応じて使い分けたい根捌き根締め方法~

【春よ来い❗️“寒の戻り“で咲き続ける寒桜達‼️】

彼岸も過ぎて、温暖化の影響で、毎年花咲きが早まっている桜や春の花々。

2月の暖かい日々で、“今年も早い桜になる“と思っていたら、3月になって、寒さの強い日々が訪れました💧
特に京都大徳寺「芳春院盆栽庭園」は、京都市でも北区という北山を背中に抱えた地❗️
今でも、時折り日本海側の気候の影響で、朝夕には霙が舞う日があります。
春休みだと言うのに、寒桜がまだ9分咲き❗️

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おそらく、枝垂れ桜が咲き始めるまで、寒桜が楽しめる感じです💦
三寒四温とはよく言ったもので、人が“温暖化!温暖化!“と言っていても、
自然の季節の移ろいは、そんなに簡単には変わらないようです。
それでも、樹々は既に芽吹きの季節❗️

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花を楽しんでいる間に、国風賞の花梨や伏見宮様旧蔵の宮様楓の雑木盆栽達、そして上杉謙信公ゆかりの一位や木村正彦先生の創作作品の真柏石付などの松柏盆栽の植替えが、目の前に“覆い被さるように“押し寄せて来ます‼️
こんなに安定しない天候の中でも、海外の方を中心に、京都、この芳春院盆栽庭園も、連日多くの方々がいらして下さる事、ありがたい限りです‼️

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季節の盆栽・変わらぬ名樹達、観る方々にいつも感動をお土産にしてもらえるよう!
美しい盆栽庭園を守っていきたいです。


春の彼岸の頃となれば、私達盆栽家は、夜も昼もなく、庭内にある盆栽達の植替えに追われます。
芽出しが進む雑木盆栽、鉢を抜けば、びっしりと張った新根💦

数千本の保有盆栽、毎年150〜200点の植替えを順々に進めますが、
有難いことに、年々で“お嫁に行く“樹達の後から、新しくこの庭に来た樹達、
他所から“売られてきた“この子達のほとんどが、数年植替えなどされていないものが多く、
結局雨竹亭は、毎年同じ数を植え替えなければなりません💦

まずは、レンタル盆栽で、一所懸命“出稼ぎ“をして来てくれた盆梅達、これを4人がかりで、一斉の植替えを行いました。

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腕が上がらなくなるような作業😓
気が付けば、50本を1日で進めました❗️ 
用土を入れ替えるだけではなく、鉢を替えたり、植え付けの角度を見直したり、枝の切込みなど、
この時に次の舞台への準備も含めた様々な作業をしています。

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“果てしない植替え作業💦“ 
ここから雑木盆栽、一段落の後には、松柏盆栽が控えています。
土とハサミと盆栽。
没頭すれば、これ程に楽しい時はありません。

まだ始まったばかり💦あと300~500本❗️
どうやって遂行しようか😓

頭が痛いです😣


盆栽水石の研鑽の愛好家団体「玄虹会」回を重ねて16回目の展覧は、
舞台を京都大徳寺芳春院から
東京「春花園盆栽美術館」へ替えての展覧となりました。
当初、会員からは、“大徳寺から春花園か“と、格式という面で落胆の雰囲気すらありましたが、
蓋を開けてみれば、盆栽水石を飾る為に造られた本格数寄屋建築の同美術館の「啓雅亭」の見事な構えと、
11席に及ぶ床間造りに、感嘆の声すら上がりました。

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現在、「景道三世家元」を襲名されている春花園小林國雄親方。
つまり景道の本部教場でもあるここで、玄虹会の飾り上手の面々によって繰り広げられた“三昧世界“は、さすがのひと言でした。

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五葉松に名筆橋本関雪の旭日、脇に翁の像。
まさに“ハレ“の一席。

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季節を謳う枝垂れ桜、掛物は“描き表具による“雪月花“  心に染みる情感豊かな席。

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そして大座敷中央には、ハレも季節も超越した、蓬莱山を想わせる八瀬の石。
名筆村上華岳画伯の名品「観世音菩薩像」、脇床には真葛香山の香炉の格調。
仏性観を心底に込めた、飾りの奥義を観たように思う一席でした。

その他、茶室に設えた台座石と水盤石の水石飾り、大観の名画と真柏の大床飾り。

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盆栽展で見る盆栽とはひと味もふた味も違う世界観。 

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“趣意を練る“そしてその心に合わせた主飾りと各種道具、この趣味の高みを目指す方々の心意気が満ち溢れる会となりました❗️
この玄虹会展の中身は数回に分けてご報告します。
併せて、私がナビゲーターを務めるYouTubeチャンネル「WABI CHANNEL」では、その全貌をお紹介しますので、是非チャンネル登録をしてお楽しみ下さい‼️


25歳の時から40年のお付き合いのある愛好家の所へ伺いました。
同じ65歳!
定年して盆栽三昧の日々を送られる手入れ好きの穏やかな方。

北関東の寒気を避ける為、納屋を冬室代わりにして、雑木類を保護されていました。

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もみじ・花梨・楓・椿・・花物がお好きな方。
苗木のような樹から刻を惜しまず40年❗️
いつの間にか、丹精が形になり、美しい樹相を見せるまでになりました。
“太くなくても、展示会向きでなくても、自分の好きな盆栽を!“と言い続けて来た方。

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五葉松・赤松の文人形もお好きで、“ウチの樹達は、風がすり抜けていくよ(笑)“と
いつも変わらぬ方です。
実用で集めた、山秋や鴻陽、そして秀峰、数えれば500点‼️

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あれを入れよう!これに合えば!としているうちに、集まっちゃった‼️と笑顔。
趣味家と言うもの、誰かに評価してもらおうとか、高く売れるようにとか、そんな事全く無い盆栽人生。
羨ましくもあり、見習うべきところもあり、の1日でした。

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