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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2023年10月


11/1~7日に開催される、羽生雨竹亭“秋の観照会“を前に、紅葉の秋飾りをしてみました!

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猛暑の長い夏から、ようやく訪れた“秋“は、あっという間に過ぎて行きそうです💧
3年培養して、一番綺麗な紅葉を見せてくれた山ツタ。

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神奈川県の愛好家が3
代に渡って大切にして来た樹だそうです。
水谷芳年の「来雁図」、脇床には寄木造りの三重塔。

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山間の巨刹、里山を彩る山ツタの映え!
渡り鳥が、降り来る姿。

秋飾りの楽しさですね❗️

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秋の清々しい空気に、庭々の盆栽達も、ここから観照会にお越しになる愛好家の皆様のために、
最後の“薄化粧“手入れの時です‼️

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友人の盆栽家、神奈川県秦野市にある“椎野宝樹園“椎野健太郎さんの所で、
盆栽のある部分の真髄を遺された、会田一松翁を顕彰する取材が、月刊『近代盆栽』によっての特別取材が行われました。

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普段は商売仲間の椎野さんですが、お互いに修行時代を持つ古典的な盆栽人として、
“本物の盆栽とは?”と言う、自分達が生涯求める命題に対して会話をする事が多く、
椎野さんが敬愛する大家、故会田一松翁が遺された数少ない盆栽と会話する内に、
“多くの方々にこの考えや世界を伝えたい“と言う気持ちが強くなり、近盆さんに相談して、今回の特集取材になった次第です。

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現在ではその当時の資料すら殆ど残っていない“会田一松翁の世界“、
現在の盆栽界の主流とはひと味違う美意識と概念、でも失いたくない考え、
“商売にはならないよね“と、お互いに苦笑いしながらも、至福の刻を共に出来たと思っています。

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途中からは、一松翁の旧蔵樹を複数所有される、寺内幸夫様が、栃木県からはるばるいらして下さり、
愛好家の立場での盆栽観も交えての対談となりました。

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“削ぎ落とされた美“ 
“瀟洒で間の美しさを大切にした樹々“ 
来春、2月にはこの特集が誌面を飾るそうです。
楽しみになさっていて下さい❗️


先日、久しぶりに長野県小布施町の鈴木伸二さんの園に伺いました。
いつ見ても、“こんなアトリエ庭園があったら“と想わせる、素晴らしいシーン❗️
内外のお弟子さん達の律した動き、入り口から名樹の庭園までの息を呑む完成度とレベル!
応接展示室の“美しい“と表現すべき設えと内容。

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これ程までの完成度を見せる彼のアトリエは、
若き頃から苦難の道をたったひとりで駆け上がった彼が、心の中で描いた“理想“そのものなのでしょう。

還暦を迎えた彼、もう三十年を超えるお付き合い、“ここからの夢は“と尋ねると、
“盆栽を守り作りながら、自分がそうあったように、若い人達を育て導きたい“の言葉。

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さて、ここから彼と人生の“第三幕“をどのように開くものか?楽しみです❗️
それにしても、すべてが完璧で美しいこと❗️
羽生も見習いたいです💧


長野県須坂市、真柏の名園「井浦勝樹園」井浦貴史氏が、
先日の日本盆栽作風展選考会において、映えある内閣総理大臣賞を受賞されました。
作品は国内真柏名樹の中でも、秀でた名品として名高い「風神」! 

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十数年前、まだ三十代前半だった氏が、“涙の無冠“を味わった樹。
“捲土重来“ 以来栄冠を夢見て作出の日々を続けた樹です。

私は井浦氏の先代より、二十数年前、真柏逸材を数多く譲り受け、
山採りの真柏と言うものの素晴らしさを体感させて頂いた思い出が蘇ります。

この名樹「風神」先代が艱難辛苦の末に、長野へ運んだ井浦家の“宝“  幾度も譲渡の話があり、
私の所にも“仲介をしてほしい“と、何度も交渉願いの相談がありました。

家が建つほどの金額!
それでも彼は譲ることなく、“家族の生活が成り立たなくなったら“と、自園に残されました。
若き頃の作風展での屈辱💧
天界に散った亡き先代への想い、彼の心の内を想えば、今回の受賞は唯々拍手を贈りたいです。

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井浦家はここからも圧倒的な真柏の作出を続けるでしょう。
空に向かって先代に伝えたいです。
“お父さん!貴史さんが見事に果たしましたよ❗️“と。


秋本番となり、盆栽業界の流通市場も、活発な動きになり始めました!

10/7の羽生本店開催の「天地会」も、総額6,000万の出来高。

10/10ここ日本盆栽協同組合本部での「水曜会大会」も、各地よりの出品樹で埋め尽くされています。


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今秋の全体の動向をみると、大型名樹の市場出品は皆無に近く、やはり愛好家と出入り方の盆栽園での取引で、名品は動いてしまっています。

市場は、海外勢の買付け動向に左右されがちですが、圧倒的な力を魅せていた中国の勢いも若干弱まり、

その一方で、アジア(ベトナム・タイなど)が驚くほどの力を付けて買付けに来ています。ヨーロッパの動きも活発になって来ました。

それでも、国内は、どちらかと言えば売り気配が覆っています💦

中央の市場でも、中品サイズ、真柏や黒松、そして雑木類、が中心です。


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日本の盆栽業界ではありますが、どうしても海外からの買付け動向に左右されがちな昨今💧

次の時代を考えれば、ここからの業界の向かう方向性を謳いあげる時が近づいていると思います。

過去の愛好家の方々、諸先輩の盆栽園の方々、この人達が、損得ではなく、

唯々盆栽を愛している事で作り上げてきた盆栽達も、海外を含めて徐々に枯渇していきます。

修行時代の言葉を思い出します。

「プロは種や若木から作れ」

この意味をもう一度再考する刻が足元に来ているように思います。

過去が作ってくれた樹達を大切に、次の時代の名木を夢見て汗を惜しまず・・。

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