雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2023年04月

【名も無い樹を「見立て心」の鉢映り‼️】

植替えのシーズンで、“猫の手“ならず、番犬のルークとレイも手伝って欲しい程の目まぐるしさ!(彼らの昼間は寝るのが仕事💦)
そんな中だからこそ、普段名樹達に追われて見過ごして“放ったらかし“の樹々達を走り回る中で見る度に“悪いなあ💧“と思います。

手入れの合間、ちょっと時間が空いたので、その中の黒松を植え替えました❗️
農水省の検疫関係で、6年前に手に入れた100本以上の苗木達。

IMG_5750
3年前に“ただの苗木にしておいては可哀想💧と思って、若い子達に“曲付け“、つまり幹に針金を巻いて、模様を付ける事をしておきました。
中から作りやすい樹を2本、風に靡いて立つ“文人風“の飾り易い盆栽に仕立ててみました。
培養の“土鉢“には根がビッシリ!
健康を損ねない程度に根ほどき。

IMG_5753
一般の人達から見れば、“そんなに取っちゃうの!?“と思われますが、
樹の健康状態をみながら、これくらい取ってから思う鉢に植えないと、“絵“  になりません!

つい先程まで、立ち入り禁止の培養場の片隅にあった素材。
こうして樹の“姿“を見立ててあげて、鉢を合わせることで、立派な盆栽の仲間入りになりました❗️

IMG_5751
IMG_5752
名木・古木・を日頃扱う私達。
それでも「新しい命・新しい盆栽」を作ること!これを忘れずに励みたいと思います。
何も言わずに庭内の小品・中品の棚に置くことで、若いスタッフ達が、これに気がついて、“夜やってみよう!“と思ってくれたら、どんなに嬉しいでしょうか!? 

IMG_5754
64歳になった今、こんな何気ない“創意創作“に、いつの間にか心が安らいでいる自分がいます!


【大徳寺芳春院も、山桜に藤!?の競演‼️】

入学式と言えば、昔は桜が満開の中、なれないランドセルを一所懸命背負った写真が瞼に浮かびましたが、
今は2週間早い3月下旬の卒業式の花になってしまいました。

温暖化なのか? 
学者さんが言う“地球は寒暖を長いサイクルで繰り返している“と言う事なのか?
いずれにしても、枝垂れ桜・ソメイヨシノ・は葉桜になりはじめて、盆栽も山桜を楽しむ頃になりました。
と、言いたいところですが、今年はあっという間に藤の花房が下り始めました❗️
花々は誰が見ても美しく嬉しいものですが、日本人の季節感から言うと、
順々に咲いて欲しい季節の花、こんな目まぐるしい年は、私の盆栽人生50年でも初めてです💦

IMG_5819
京都大徳寺芳春院の盆栽庭園も、“山桜と藤“を一緒に飾っています。
不思議な競演です⁉️



羽生も“入学式に藤“となりました❗️

IMG_5820
季節の飾りからいけば、“揚げひばりに藤の花“ といきたいところなのですが、
さすがに揚げひばりはもう少し、せめてあと2週間欲しいものです。

IMG_5821
桜に使った「おぼろ月」をそのままに、下に置いた清水焼の平安女官も、さぞびっくりしているでしょう(笑)
それでも、平安の昔より私達日本人を楽しませてくれる藤の花は、やっぱりいいですね❗️
花のない時は誰も振り返ってもくれない藤。
1年1回の“晴れ舞台“です❗️


1億円の名木「天帝の松」の植替えに続いて、船山邸での“舩山コレクション“の名品達の植替えを3日間かけて行いました。
国内でもこれだけの大型名樹達を1箇所に楽しまれている愛好家はあまりいません。

IMG_5648
日頃からご自身で水掛け・除草・施肥・消毒、80歳になられる中、盆栽に対する愛情と熱意にはプロながら頭が下がります。
ここの手入れを任されて20年、こうして名品達に触れる機会がある事に、有り難さと喜びを感じます。

IMG_5649
ひとつひとつが、長い年月をかけて、多くの人達が守り受け継いできた樹、私達が携わることも、その刻の中のひとつだと思います。
10年後、30年後、そして100年後、私達が居なくなっても、この樹達は誰かに受け継がれるでしょう。

IMG_5650
“今すべきこと“ これを一生懸命頑張るだけです。
それにしても大型植替えと手入れ!
若い者達5名と取り掛かるこの時間!
さすがに体力的に64歳となると、毎朝身体がバキバキになっている自分💦歳ですね💧


五葉松巨大名木として名高い「天帝の松」 10年ぶりの植替えを福島で行いました。
“舩山コレクション“ の代表的な盆栽のひとつですが、未公開のまま半世紀以上、福島の地に眠り続けていたこの樹に出会い、
蔵者と鉢を設計製作・植付けから始まり「世界盆栽大会inさいたま」の特別ブースに出陳、この鉢に植えてから既に10年の歳月が過ぎていました。

根詰まりをしないように、表土部分の“ほぐし“を数度行い、樹の劣化を防いできました。

IMG_5628
4人がかりでの鉢抜き!
根の状態も良く、無事に元の場所に戻せました。

IMG_5629
“名樹、大家に寄り添う“のとおり、舩山氏の庭で穏やかな日々を送るこの樹。
盆栽はひと所に愛培の地を得ると、抜群の健康状態を保ちます。
ここからまた10年、無理せず樹に向き合っていきたいと思っています。

↑このページのトップヘ