雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2023年04月

【 盆栽・水石・約1000点‼️】

コロナの様々な規制が解除されて初めての観照会❗️
雨竹亭の春秋恒例の観照会は、季節の移ろいを盆栽や水石を通して、お越しになる皆さんに楽しんで頂くものです。

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春の植替えでクタクタの中、こうして園内を整えてお客様を迎える事が、私達の喜びでもあります。
お付き合いの長い方々、新しい出会いとなる方々、盆栽・水石を通して私たちが皆さんに提供できる“楽しさ“をおみやげにして頂けたらありがたいです❗️

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2日間、スタッフみんなで、あれこれと応接室・庭園展示場・水石室・主収蔵庫・そして中央培養棚、
ここに生きる子(盆栽)達を、少しでも喜んで観て頂けるように飾り付けました。

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やっていて思いましたが、ホントにすごい数‼️
“なるほど、いつもお金無いわけだな“  と我ながら呆れました💦

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新緑・花々・老樹・山水石・古鉢・水盤・卓・そして掛け軸。
盆栽水石の“三昧世界“を作りました❗️
お越しをお待ちしています‼️

雨竹亭春の観照会についてはこちらから↓↓
https://www.bonsai-uchikutei.com/news/article/1086.html


季節の早い春も、樹々が一斉に葉を広げる頃となり少し早めの新緑の飾りをしました。

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“もみじ手“と呼ばれる、赤子が愛らしい手を広げたような山もみじの新葉は、新緑の代名詞です❗️
九州まで出向いて手に入れたこの山もみじは、根張りを見ても、どれ程の長い鉢での培養が重ねられたものでしょうか!

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自然な枝打ちは、昨今流行っている、“詰め込んだ枝造り“の園芸的な造形とは違い、
単幹でありながら、“降り下りる“もみじの枝姿を見事に顕しています。

“絵心“と言う考え方から言えば、盆栽は何処かに心の中に描く一幅の絵画のようでありたいものですね。

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掛物も“月にほととぎす“  明治の名筆、今尾景年の作品です。
ほととぎすの題材は、晩春から梅雨の時期、5月から6月の飾り道具として、使い易く、
私も大きさや図柄を替えて何本か持っていますが、今回は “新緑の色を見せたい“  気持ちを込めて、敢えて絵に“色“を見せない水墨画としました。
これによって、このほととぎすは、このもみじがある自然の所から遠く、
ひと声鳴いて山間に一閃を切って翔ぶ“心の中のほととぎす“となります。

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脇には、“水温む“季節を感じて欲しくて、水盤飾りの京都貴船の水石を配しました。
雪蹊から流れる清流、自然の石が心の中で大自然を描き出しています。
水盤も水を感じる色合いを選びました。

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脇には、黄木瓜薔薇が、満開の花姿を楽しませてくれています。
命が謳歌するこの季節はいいですね❗️
“目に青葉・山ほととぎす、初がつお“  
ここで鰹の“タタキ“を食べながら、盆栽談義なんて!

ちょっと贅沢ですね‼️


【椎野宝樹園・理想の盆栽家の姿❗️】

神奈川県秦野市の山里で、盆栽作りに励む椎野宝樹園に久々に伺いました。
相変わらずの美しい盆栽庭園!

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また庭園の一部が彼の構想で改装されていました。
ひとつひとつの盆栽が、完璧と言えるほどの細やかな手入れがされ、販売用とお客様よりの預り品がしっかり区分された棚場。
家族と内弟子、少人数で営む盆栽園の“理想“が形になっているようでした❗️

培養棚の奥には、彼が数年前より手掛けている黒松の苗木からの仕立て樹がありました。

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肥培して徒長させ、太身を出してからの切込によって、将来の小品盆栽の素材を作出するプロセス❗️
“ここまでで5年です“  計画的な培養の労苦と見事さを深く感じました。

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盆栽園は“仕入れる・売る“だけではなく、このように“自然と技術と時間“を活用して、次の時代の盆栽を生み出す事を忘れずにいたいものです。
ともすれば、売り買いだけで、利益を出す安直な世界に傾きがちな現行の盆栽界。
椎野氏のように、年月をかけた立派な盆栽を守る手入れ、そして的確な培養で新たな盆栽を作り出す作業。
これがまるで自転車の二輪のような在り方で越し方が行われているのを大切にしたいものです。
雨竹亭もそろそろ本気で“ゼロからの命作り“を始めようと思います❗️


記録的な温かさで、春の花物盆栽が進む今年! 
藤も殆どが咲き誇る“入学シーズンとなってしまいました💦 
今年の藤の床飾りの最後を、この樹で締めくくりました。

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盆栽界で評価される藤は、“野田藤“ “長尺藤“と呼ばれる花房の長いものが主流ですが、
平安の昔から日本の自然や文化に寄り添ってきた藤は、山間や里に樹々と共に陽春の訪れを告げる“野藤“と呼ばれる天然種でした。

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この樹は盆栽には珍しい“野藤“の大懸崖の古木です。
蔓性の枝が幹となり、懸崖樹形を見せています。

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江戸期の日本画などに見られる藤は、このように葉と花が一緒に出た姿が殆どです。
桜も同じで、画家が描く桜は、私たちが “お花見“で楽しむ “ソメイヨシノ“ではなく、葉を伴った“山桜“です。

自然のありのままを盆上に現す盆栽。
昔の人達は、本当に自然と共生した美意識の中にあったのですね!

それにしても、この樹は私が扱った床飾りの藤の中でも、最大級❗️
大きい床の間を持っていてよかった‼️


お得意様がお持ちの国風賞「東洋錦」。
花を楽しまれた後は、1年間この樹を守ってきた大宮盆栽町名園「竹山芙蓉園」にお届けに伺いました。

新緑の時期、園内は“雑木盆栽の楽園“でした❗️

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細やかな手入れ、スタッフの方々は朝からもみじの毎朝の芽摘みに勤しまれていました。

竹山先生の芙蓉園に半世紀以上守り続けられている日本盆栽界の最高峰・真柏「昇天の龍」を拝見しました。
枝伸びを数年かけて先生が切込み、針金施術をして、往時の圧倒的な樹相が蘇っていました‼️

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“中々元の様にまではいきませんね“ と謙遜される先生。
しかし、ひとつの歴史的名樹を手がける本人でしかわからない胸の内もお有りなのが、昇天の龍を眺めている先生のお顔からも窺えます。

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穏やかなお人柄と同じく、園内の樹々は涙が出る程の枝先まで行き届いた美しさ❗️
年に幾度かお伺いするこの園、“季節感のある盆栽はなんて美しいんだろう!“と心から思います。

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