雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年12月


11月下旬、日本盆栽大観展(京都・みやこめっせ)特設売店の一角に、観客が目を皿のように見つめる盆栽達が並びました。

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巷で言う“工芸盆栽“とはひと味もふた味も違う、洗練された樹々達。
アート盆栽『華舞樹』の作家、谷村由華子先生の見事な小品や中品盆栽達です。

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銀座雨竹庵で出会って五年以上の刻、由華子先生の作品は超絶と言えるリアル感!
私たちプロでも、“華舞樹“だとわかっている上でも驚かされるひと鉢ひと鉢。

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ましてや初めて見る方々は、“ホンモノ?いや違う?“と、しばし魅入ってしまう程のものです。
梅もどき・真柏・まゆみ・長寿梅・けやき・等々、どんな素材でどうやって造られたのか?
不思議に思うくらいの谷村ワールドです。

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植物検疫などの問題で、持ち帰りの出来ない海外の盆栽ファンに喜ばれた初めの頃、
今ではひとつのアートとして高い評価を得て、手作り一点作を順番待ちする程の高い人気を誇っています。
“枯れない盆栽“  それでも心はいつも枯れることなく、潤いの豊かさを持っていたいですね❗️


京都大徳寺盆栽庭園も大観展も過ぎ、“北山時雨“が、庭内の紅葉を散らしています。
山も樹々も一年の色付きを輝かせた秋。
冬の訪れを前に、“名残り“の飾りを芳春院盆栽庭園内の「通玄庵」床の間にしつらえてみました。

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細身の柿、鉢持込み古いこの樹は、文人好みと言える姿を持っています。
半月の間、葉の色付きや実の充実を、刻々と深まる秋を感じながら、いざ飾る寸前に、
無駄枝を捌き、実数を減らし、描こうとした“風情“に合わせた樹姿にしました。
柿は枝先で実の重さで枝を垂らす、こんな樹味を大切にしました。
僅かな実、僅かに残った葉。
日本人が心底に持つ“もののあわれ“を表現しました。

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掛物も、時雨の中散りゆくもみじの葉、百年を超える画幅の紙本の枯れた味が、一層の静けさを出してくれました。

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脇に添えたくず屋形の石。赤玉石とは言え、寂びた石味が、まるで散り紅葉で覆われた屋根姿を現出したようです。

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一年かけて培養した柿、この一瞬の世界観を創り出す為の一年でした。


京都・日本盆栽大観展3日目、ウクライナチャリティー盆栽オークションが開催されました。
京都市と姉妹都市のウクライナ首都キーウ。
自然と文化の融合体“盆栽“は、平和の象徴でもあり、私達盆栽界で苦難の中にいるウクライナの方々、
日本に避難されている同国の方々へ僅かでも支援出来ればと企画されたオークションです。

パドルオークションと言う、競り会とはひと味違ったスタイルでの一般参加型の珍しいオークションです。

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僭越ながら進行オークショナー役となった私は、とにかく一斉に挙がるビットを見落とさないことで精一杯💦
それでも国風賞花梨を筆頭に、総出来高4700万(速報値)と言う予想を大きく超える成果を上げる事が出来ました。

予想価格を明示するなど、愛好家も参加出来る“近い未来には常識となるオークション“の試金石となる事も願っての企画でした。

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角川京都市長・慶雲庵田中財団理事長もこの催事を応援して見守って下さいました。
プロアマ問わず、参加下さった皆さんにオークショナーとして唯々感謝の限りです🥲

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