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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年12月

【除夜の鐘直近の大徳寺芳春院盆栽庭園❗️】

京都禅林・大徳寺芳春院の盆栽庭園を預かって2度目の年の瀬を迎えました。
朝夕に聞こえる僧堂からの修行僧達の読経の声や鐘の音、
京都北山に近いこの地独特の“北山時雨“の風情、何処となく盆栽達が居心地良く葉色の良さを湛える姿。

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盆栽界唯一の樹々とゆっくり向き合って、“何か“を探してほしい庭。
静かな刻がいつの間にか過ぎてゆくここが、盆栽の“聖地“になってくれればと、
来年からは、慶雲庵盆栽財団と禅林が共同で開く世界に変貌する工事に入る予定です。

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裏手の塔頭「龍泉庵」に佇む黒松の巨木、その下には万両が紅白のたわわな実を付けています。

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開園の時、蔓青園さんに無理をお願いして運んだ、故加藤三郎先生の龍眼石などの石群は、入口から中国から日本への世界観を表しています。
対面の名匠木村正彦先生にお願いした真柏の石付群。
これも入口から大陸から日本への景色を物語っています。

慶雲庵盆栽財団との協力で、この庭は大きくグレードが上がります。
それでも、ここで伝えたい気持ちは、私も財団も大徳寺も同じです。

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盆栽の持つ“生きる“という事へのメッセージを感じてほしい事です。
私は盆栽の小さな守り役です。
ここにある盆栽達にどれほどの事を教えてもらっているか!


師走の足音響く中、毎年恒例の“季寄せ“の鉢植え作りをしました。
開店以来、悴む手を暖めながら、ずっと作り続けていた“ふきのとう“の鉢物も、
気候変動と採り手がいない事などで、お届けできなくなり、思案の末に、
今回のように新春の“なぞらえ“に因む草木で、季寄せを作ることにしました。

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「長寿延命」の長寿梅、厳寒の中でも真紅の実を成す“ヤブコウジ“、
“難を転ずる”に因んだ「南天」、そこにまだ来ぬ春を願って咲く小菊。

五葉松の厳しい生き方を舎利幹に秘めた樹、掛物は明治の名筆、竹内栖鳳が描いた“うさぎ“。

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扇面に描かれていることで、“末広がりのめでたさ“を示しています。
大きな床飾りではありませんが、新春飾りは楽しいものです❗️

【愛好家とプロのあるべき姿】

年の瀬、お世話になっている東北のお客様の所へ、新年を迎える前の盆栽と庭の整頓手入れに伺いました。

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盆栽が雪帽子を被る日の中、
凍えるような外気の下、私の下で長く盆栽研鑽に励んだ、宮城県多賀城市で園を構える加藤充氏の協力を得て、
樹々の状態、すぐにやるべき手入れ、冬季に手入れして樹格向上を図るもの、
様々な想いと何よりもこうして私達の正業を支えて下さる愛好家の方々への感謝を込めての暮の行脚が続きます。

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加藤充氏は、東北人らしく(💦❗️)朴訥でけして商売に長けている訳ではありませんが、
1年ずつ、コツコツと愛好家を周り、手入れのお手伝いを重ね、いつの間にか“彼らしい盆栽業“の姿を作ってきたようです。
雪降る中、かじかむ手で盆栽に向き合う姿、目先の商売にどうしても傾きやすいプロの多い世間、
後輩ながら、彼の真摯な日々の一端を観て、盆栽人のあるべき姿を思う日になりました。
頑張れ、無口な東北の盆栽人❗️


【一足早い新春の飾り❗️“梅に鶯”  大徳寺「通玄庵」】

先日、大徳寺芳春院盆栽庭園で、KBS京都テレビの年末年始特番の録画がありました。
大晦日の23時から明けて新年の深夜1時までの番組の“新年を迎えてから“の時間に放映するようです。
そのため少し早めに、庭園内の寮舎“通玄庵“に新春の飾りをしつらえました。

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細身の中に凛とした厳しさを秘めた、野梅の古木。
何年も作ってきましたが、幹味が気に入っています。

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“返しの流れ“が、一度左方へ向かった幹が樹冠近くで、中央へと帰ってくる樹姿。
今年は梅の花の動きが早く、この分だと本当に新年にはチラホラと咲き始めそうです。

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掛物は明治の名筆、中島来章の「鶯」空を切るように翔ぶ姿1羽。

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大家ならではの筆です。

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脇に陶製のくず屋香炉。
渋めの釉薬には屋根に初雪を想わせる白釉。

“梅ひと枝に花一輪“  厳しい寒さの中、葉も芽もない中、スッと蕾から清楚な花を咲かせる梅は、日本の初春・早春を謳う有難い樹種です!

落葉❗️落葉💧大徳寺庭園・冬姿までの苦労💦】

大観展も無事に終わり、京都の街も冬支度に入っています。
大徳寺盆栽庭園は、庭内と隣接する塔頭「龍泉庵」のもみじの落葉の掃除に毎朝追われています!

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禅林の美しい秋を彩ったもみじ達ですが、朝早く庭一面に降った紅葉を1時間以上かけて掃除❗️
清めた山水庭園と盆栽達に胸のすく気持ちになります。

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でも翌朝には、たった一晩で落葉の景色💧 
これを毎日2~3週間繰り返しているうちに、いつの間にか冬景色になってゆきます。

盆栽の水掛けと同じく、“毎日の作業“ で疲れる事も確かですが、修行中の禅僧の皆さんからすれば、大した事ではない事。
訪れる方々にとっては、その時の盆栽庭園が“一期一会“の記憶。
日々心新ただと思って励んでいます。

でも、早くもみじも降り終わってくれたらと、つい泣き言が出てしまいます💦
まだまだ修行が足りません❗️

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