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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年03月


今年も一重咲き富士桜の枝垂性が、美しく儚く艶やかな花姿をみせてくれました。

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半世紀以上前に、秩父の山で発見されたたった1本の樹。
その樹から多くの子が作られ、
盆栽界に広がりました。
私も30年ほど前から、この可憐で儚さすら感じる枝垂れ桜が大好きで、
買っては飾り、欲しがられては手放し、の繰り返し!

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今も“上中並“で30~40本を持っていますが、
いつもレンタル盆栽でお世話になっている得意先様にも、この美しさを楽しんで頂きたくて、
この季節、桜達は一斉に“出稼ぎ出動“です!

この樹も、今年1番の出来、雨竹亭の応接室での撮影を終えた後は、京都大徳寺に“上洛“します(笑)。

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夜桜を愛でる心地よい気候、春はいいですね❗️


【京都・季節の入替り!盆栽庭園の春爛漫へ!】

彼岸も過ぎて、京都北山に近い大徳寺も、春本番となってきました。

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まだまだ、名残り雪が舞い散る時もありますが、梅も間もなく終わり、入替りで“寒桜が満開となり、富士桜も咲き始めました。

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もう少しすれば、庭内の歴史的大型松柏盆栽達の“植替え・鉢替え“が始まります。
4人でようやくと言える巨大な樹々、1日に3~4作がやっとの仕事。
4〜5日で仕上げてゆくつもりです。

併せて冬の庭園を守り飾られた盆栽達から、陽春を彩る樹々への、羽生庭園から大型トラックでの輸送入替えを行います!
どんなに立派な庭園でも出来ない“季節による景色の入替え“・・これこそが盆栽庭園ならではのもの!

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1年を経て、少しは盆栽達も私達も、この庭園に慣れてきたところ!
それにしても、杉苔の築山に生えてくる、もみじの“ひこばえ“の量には辟易とします💦  

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この“小さな命“から今年も100本ほど、大切に育てて、“未来の盆栽の種“を残してゆきたいと思っています!

※2022年3月29日(火)は、庭園内盆栽入れ替えのため、休園となります。


【大宮芙蓉園・竹山先生の管理の見事さ❗️】

第87回国風盆栽展において、栄えある国風賞を受賞した木瓜「東洋錦」の名樹。

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私が若かりし頃、当時の埼玉県を代表される愛好家、福島茂夫先生(日本医師会議長・参議院議員・環境政務次官)にお世話したもの。


先生亡き後、一流のこの樹は一流の愛好家の蔵歴を続けて、
今はまた私がお世話になっている著名愛好家「舩山コレクション」で知られる福島県の舩山様の所蔵となっています。

バラ科の木瓜は癌腫病など、樹が傷みやすく、
長年この樹を手入れされてきた大宮盆栽町「芙蓉園」園主、竹山浩先生の所で日頃管理をお願いしています。

花時期が近づき、福島の庭で木瓜の“お花見“をして頂こうと、先日先生の所へお預かりに伺いました。

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作りづらい東洋錦、先生はそれを見事な“ハサミ技“で、素晴らしい樹相を維持して下さっていました。
羽生に持ち帰り、福島へお届けする僅かの間、庭園の応接室に飾らせて頂きました。

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脇床には、“水温む頃“の思いを込めて、久しぶりに水打ちをした貴船の水盤石を設えてみました。

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山奥から流れくる雪解けの清流の様を天然の妙が創り上げた石、まさに訪れる“陽春“を席全体に醸し出してくれました。

花物・実物・葉物・・雑木盆栽の秀作が激減する中、記録は勿論のこと、“記憶に残る名樹達“は、皆で協力して守り伝えたいと思っています。
近々お届けして、艶やかな花姿を堪能して頂いたら、来月また福島の遅い植替えに伺った時持ち帰り、
また一年、竹山先生の所で陽光を受けて健やかに培養をして頂こうと思っています。

【宜興・広東の正統を次代に!】

10年前、中国泥物鉢の聖地「宜興」に、いにしえの登り窯“龍窯“の視察と取材に訪れてから、
“本物の継承がしたい“と願って、ようやく日本での本格的な紹介を開始するまでになりました。
「宝山」の名で知られる、紫砂古渡盆器の踏襲をしている周さん・楚さん達。
現代の名工と謳われた、馬先生の技と教えを受け継ぐ人達と、紫砂の泥質の追求、盆器としての“器形の美しさ“の再現に挑戦し続けてきました。
国内の常滑を中心とする盆栽鉢メーカーの減少、勝ち残った鉢作家の高額さ。
多くの愛好家の方々に、“使えば使う程に味わいが増す中国盆器“にやっと辿りつきました。

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大観展や国風展、業界市場での“使ってもらう為の販売“に、2~3年、
木村正彦先生をはじめ、盆栽作家の皆さんに「この鉢は、土も良く、凍て割れなどせず、作行きも良い」・こんな言葉を頂けるようになりました。


併せて、中国南部、広州へも6年前から赴き、“失われた石湾窯の再現“に挑戦しました。
佳き窯元と出会い、半世紀前に途絶えた釉薬の焼成に試行錯誤の格闘。

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初めて納得のいく作品を日本に持ち帰り、プロの市場にかけたところ、
小売価格の数倍まで高値がつき、落札した方に“そんなにしませんからもうひとつ持って行って下さい“と言った記憶が昨日のように甦ります。

釉薬鉢も泥物も、今の日本では幅が65cmを超えると、特注になってしまいます。
“こんな器形があったら“と思う物を少しずつ宜興・広州を行き来しながら、増やしていきました。
今年の国風展売店でも、盆栽業の皆さんに注文を頂くようになり、
“よし!全国に向けてのカタログを作って、誰でも使ってもらえる仕組みを作ろう!“
と思い、全釉薬・全器形の撮影を開始しました。

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愛好家の皆さんに、カタログをお届け出来るのは、まだ数ヶ月先ですが、
ごまかさず、鉢に求められる条件をひとつずつ解決してきたこの2種類の鉢群は、既に国風展にも使用されています。
数十年後、私はもういないでしょうが、鉢はその頃には、持ち込んだ味わいを呈する実用の名器になっているでしょう。

ここから、21世紀の盆栽鉢の歴史がスタートします。
楽しみにしていて下さい。


【梅の香満ちる庭園・咲き替わる盆梅達】

国風展など、業界の慌ただしき2月も過ぎ、1ヶ月ぶりに“京都の我が家“、大徳寺盆栽庭園に
戻りました。
1ヶ月経つと、庭の空気も季節感も大きく変わっているのを感じます。

厳寒の冬姿から、庭全体が何処となく“春の空気“を纏っています。

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関東の“空っ風“の中から来ると、ここが“都“だった事が、潤湿さが漂っている事と、盆栽達がとても良い“色“で過ごしてくれている事でわかります。
2~3日に一度、天気が替わる“北山時雨“のせいか? 盆栽達に“潤い“を感じるのです。

庭内の盆梅達も、種類によって名残の花咲きから、これから咲き始めるもの、移ろう季節が梅だけでも教えてくれます。

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ここ芳春院は加賀百万石・前田家初代、前田利家公の夫人、“まつ様”諡“芳春院殿様“の建立。
前田家の家紋、“梅鉢紋“ に因んで、院内には、そこかしこに梅の樹があります。

盆栽庭園も負けずに数々の盆梅を飾らせて頂いています。

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枝垂れ梅の花が綻び始めると、早咲きの桜が後を追ってきます。
ここから季節の変化が日々感じる頃です。
手入れ・入替え・相変わらずの忙しさですが、訪れる方々に、静かな大徳寺盆栽庭園で、
ひとときの至福が盆栽を通して感じていただける様に尽くしたいと願っています。

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