雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2022年01月


直近の1月30日に上野グリーン倶楽部で開催される、
(一社)日本水石協会主催のオークションに、その存在は知られていても公開されなかった水石・樹鉢・水盤の名品群が一斉に出品されます。

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“幻の烏泥“として1981年に業界誌上で公開されたのみの名鉢、
水石界の巨人“水府散人“の名石として、旧高木盆栽美術館の10周年企画で編纂された『水府散人回顧展』に、
その石影を残しながら、実物の公開がなされなかった数々の賓石群等々。

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呑平の中品水盤として唯一の作品や、現存数点と言われる、中国明代の古渡青磁浮牡丹紋水盤、
徳川家旧蔵の大型水石、息を呑む程の眠り続けた品々。
コロナ下のオークション、参加者の規模も縮小が予見される中、一斉に市井に放出される逸品達がどれくらいの落札値となるものか!
期待されます。

【京都盆栽庭園の大雪!梅に想う心】

1月20日、京都は5年ぶりの大雪に見舞われました。
特に北部の山に近い大徳寺付近は、報道の発表を大きく超える積雪量でした。
庭園は明け方には雪に覆われ、庭も通路も寺内全体も白銀の世界になりました。

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閉園を決めて通路と盆栽の雪かきをする時、庭内の梅の古木「紅冬至梅」を見て、盆栽における梅の美を感じました。

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覆われる程の雪の傘!
降り積り続ける雪で、盆栽の枝々には数十センチの雪がのしかかります。
玄関の“大寒“の今、凍える空気の積もる雪の中、梅の枝先には、薄紅色の可憐な梅花が、純白の雪に映えて咲いていました。

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春まだ遠く、芽も吹かぬ中、梅はその花を凛と咲かせていました。
静寂の大徳寺庭園、細雪の降る中、それでも盆栽達は命の謳歌を続けています。
この庭を預かる私は、63歳になる中でも、今も盆栽と自然に“生きる“ことは何なのかを教えてもらっています。
今日は1日雪かきです💦



寒気の強い今年の冬。

羽生や大徳寺でも、暮れから新春にかけて何度も雪模様になりました。
積雪が多くなれば、雪害もあり苦労しますが、“細雪“と呼ばれる静かに降る雪は、
なぜか?まわりの“音を消して、“静けさの美しさ“と言うものを強く感じさせてくれます。
盆栽に帽子のように被る雪、静の中に佇む盆栽達。

自然が織りなす景色は、私達に色々な世界を見せてくれますね!





先月、月刊『近代盆栽』に独占取材の形で掲載されて、“日本にひとりで200点を超える山採り真柏の逸材群を今も持っている人がいるのか!“と、
全国の噂になった、宮城県松島の高橋邸に、雨竹亭OBの地元の加藤君と伺いました。

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伺った時も、ひとつの真柏の手入れをハウスでされていました。
使い慣れた道具やご自身の居場所。
愛好家ならではの雰囲気に羨ましくもなりました。

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昨夏、加藤君の案内で圧倒的なこの真柏群を見て、木村先生を伴って数点の整姿仕上げをお願いしたのが、昨日のようです。
あれから公開に向けて高橋さんも300坪の巨大ハウスの中に、真柏を展示できるように設備を進めています。

ただ、気になるのは、こうして誰もが見た事のない素材群を公開した時に、売買を求める人達が、こぞって訪れる事です。
半生をかけてすべてを山採りされた高橋さんは、ご自身の真柏を手放す気持ちは今はありません。

入口に「売買目的の訪問は固くお断りします。写真や動画の撮影は、基本的に禁止します」の札をかける事を薦めました。
中国関連のバイヤーさん達も、本国の資産家の方々の依頼で、少しでも良い盆栽を手に入れたい気持ちはわかりますが、
人生を投じて作出された方が、趣味で多くの方々と交流したいと願ってここまでたどり着いた事を理解して下さい。

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しばらくは、日本にはこんな刻をかけた愛好家もいるんだなと思ってあげて下さい。
3月中には一般公開の予定です。
楽しみにしていて下さい。

因みに、庭園名の“もろや“の由来を伺えば、地元で真柏や杜松の事を“もろ“と呼ぶそうです。
飾り気のない高橋さんらしいなと思います。


1月下旬に行われる、国風展の選考審査会。
毎年の事ですが、愛好家の方々からお預かりした盆栽達を、
最終的な手入れ、鉢合わせ、葉色を出す為の温度調整等々、木村先生のアトリエは、選考審査会を前に名樹で溢れています。

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鉢ひとつ、苔の仕上がりひとつで、選考点数に響く厳しい審査。
名匠は八十路を超えても、その名に奢る事なく、真摯に盆栽に向き合っています。

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“審査は人がする事、私はそこに送り出すまでが仕事“と、あくまで謙虚に。
それでも今年も雨竹亭の分も含めて45点の申込み!
日々、怠る事なく盆栽と過ごす先生。
誰も追いつけない姿をいつも感じます。

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