雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年08月

【木村正彦先生の妙技で名樹へのスタート❗️】

羽生雨竹亭から卒業して、東北の津波・震災を乗り越えて、仙台に程近い多賀城で盆栽業を頑張っている加藤充君。
東北人らしく、朴訥でどちらかと言えば商売は苦手な彼。
折々、ちゃんと業が成り立っているのか心配していましたが、
昨年無事に結婚して、最近は地域の愛好家の方々に可愛がられて、“出仕事“での手入れに忙しそうで安心しています。

彼から“山採りの真柏を沢山持っているお客さんがいる“と聞いたのは数年前。
どのようなランクのものか?分からずにいましたが、先々月、名勝「松島」に近いご本人の庭に加藤君とお邪魔して驚きました‼️
すべてがご自分で生涯をかけて山採りされた真柏の“筋物“素材!約200点!
「仕事も引退したので、ここからはこの真柏達を皆さんに見せて楽しみたい」
普通に聞けば、微笑ましいことですが、そこにあるプロが見ても“是非譲って欲しい“とつい、口から出てしまう、
手入れをすれば名樹になることが約束されているような樹が所狭しとあり、
“この状態で公開したら、日本や中国のハイエナのようなバイヤー達の格好の餌食になってしまう“と思い、その思いを2時間かけて説得しました。
“このままで公開したら、ご本人が望んでいるような、真柏を愛し、山採りを語り、素材から仕上げてゆく過程を共に楽しむような方が訪れるのは、ごく僅か。
殆どが、出来上がっていないままで、買い付けて行くことのみを狙う人達で、嫌になってしまいます“

「私には売らなくていいから、木村先生に頼んで何本か手入れをして仕上げてもらって、
それを近代盆栽の誌上で取り上げてもらいましょう。それからの公開にしましょう」

私の考えを理解下さって、日をあらためて木村先生に相談して“森前君が言うなら、行ってみましょう“と、81歳の名匠のお供をして、再び松島に訪れました。

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“ホンモノの木村先生だ“、ご家族の第一声には、苦笑いしてしまいました。
先生と数本の真柏を選んで、先日近代盆栽の編集部と共に、「幻の真柏群」の手入れが始まりました。

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勿論、私も商売ですから、こんな未公開の樹は、喉から手が出るほど欲しいですが、
半世紀をかけて山採りをして、誰に教わるでもなく、コツコツと自力で根付け、枝接ぎ、培養を重ねてきた愛好家を拝見して
「加藤君や地元の方々に残してゆくことも、私の仕事」と思い、東北の地に名樹として残るお手伝いに徹する事にしました。

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木村先生の所で、いよいよ始まった“眠り続けた逸材達”が、いずれ『月刊近代盆栽』の誌上でその全貌が公開されるでしょう。

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商売の方が、良質な盆栽を欲しいのは分かります。
でも、見守ってください。
これだけの真柏群をバラバラにしてはいけないです。
いずれは、ご本人が納得する時の末、次なる方々に移る事は当然です。
でも、それは加藤君達のような“これからの日本の盆栽界“を担う人達に委ねたいのです。
近代盆栽での公開を楽しみにしていて下さい。




毎年2回の恒例となっている、水石協会主催の文化事業資金協賛のオークション。
コロナ災禍となって、本来の会場である上野グリーン倶楽部での開催が難しく、
先日の協議で、屋外の広い会場が確保出来る羽生雨竹亭となりました。
それでも、一般の協会員の方々には、出品の業者代行や、オークション当日参加ではなく、
前日の下見会への誘導をして、会場の“密“を防ぐ準備をしています。
“協会の文化活動の一助になるなら“と、毎回愛好家からの“蔵出し“による貴重な水石・盆栽・鉢・水盤が多数出品されます。
1月の羽生開催を参考に、検温・マスク・消毒・は勿論のこと、今回は参加者の着席椅子の間隔も、厳密に線引きしようと思っています。
“これでいい“なんて言える状況ではなく、気がついたことで、出来る予防措置はすべてに尽くしたいと思います。
さて、会場となる私達の雨竹亭も出品する盆栽・水石の準備に入ります。

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“売りたい物“は中々売れるものはなく、“売りたくない物“は、参加される皆さんが出品を望まれる・・難しい準備です!
事務局を預かる身としては、希望出来高総額、約5,000万❗️(ちょっと無理かも、笑)


連日の35度超え❗️が続く羽生と木村先生の伊奈町。
30分の移動距離の間ですが、両方とも、盆栽を守る暑さとの戦いの毎日です。
秋に予定されている海外企業との盆栽を飾ったイベントの下打合せに、先生の所に伺いました。


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当日も37度!
それでも日々手入れに勤しむ先生は、いつものように首にタオル、素足に草履履きで「暑いねー!」とお変わりないお姿。
80才を超えてなお健勝な毎日を盆栽と過ごされる先生には脱帽です!

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温暖化のせいか?5〜6年前から、松柏類の盆栽にも日除けが必要となった埼玉県。
小僧時代には無かった管理の仕方。
先生と“昔は違ったよね“と、猛暑の中、必死に秋の訪れを待つ盆栽達を見守る気持ちでした。

【古都名刹の“夏空“❗️ガンバレ!40度の中の盆栽達!】


鬱陶しい梅雨がまるで嘘のように、抜けるような青空と白い雲。
 五山送り火“のふもと、京都北区に位置する大徳寺にも、暑い夏が訪れました。
山々に囲まれた千年の都、内陸性の盆地として、夏暑く、冬寒く、は承知の上での始めての夏ですが、
実際この季節になると、埼玉県羽生市の私の庭と変わらない暑さにビックリします。


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先日の梅雨の合間に庭園ならではの、“陽よけ帽子“を設営した事が、ホントに良かったと思います。


朝8時に盆栽と杉苔に水をあげて、ひと通りの掃除と飾り付けをして開園となる10時の開門。
手入れ室の日陰にかけた気温計を見れば、まだ10時なのに、既に36度!

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午後には40度を示す日がほぼ毎日!
日中の盆栽の鉢中の“蒸れ“を考えて、夕方4時頃までは、追い水を控えて、
“さあ、シャワーだよ“と言うばかりに、樹々に水遣り。
ここから1ヶ月、こんな猛暑の中になるでしょう。
人間も熱中症に気をつける日々ですが、盆栽達も、必死に耐えてくれています。


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旧盆、8月の中旬を過ぎれば、暑さの中にも、朝夕に何処か“秋風“を感じる季節が来てくれます。
人も盆栽も、暑さに負けないで、頑張りましょう❗️


大宮盆栽美術館で開催した『山水涼景・水石の世界』は、
私が事務局長を務める一般社団法人・日本水石協会との協同主催による企画でした。
東京オリンピックも佳境を迎える中、水石協会長である、島村宜伸先生と小林國雄理事長と、同館に伺いました。

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※記念写真撮影時のみマスクを外して撮影しております※

平成天皇陛下(現・上皇陛下)のご学友でもあった島村先生は、農林水産大臣、文部大臣を歴任された日本に尽くされた方。
87歳になる今もご健勝の日々、初めて訪れた盆栽美術館での水石展を観覧され、
庭内の吉田茂元首相、岸信介元首相、の盆栽達をご覧になって楽しまれました。
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先生の出品された水石の席、今回の展示を任された身として、喜んで頂いた事にホッとしました。

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五輪の花咲く菊花石、昇る日輪の掛軸、左に仏教の三重塔、右に神道雅楽の蘭陵王。
山水景情や侘び寂びに代表される水石飾りですが、“ハレ“と言う舞台としての飾りが、盆栽と同じく水石にも顕される事を伝える席にしました。


大宮から45分、お忙しい先生に初めて羽生雨竹亭へご案内しました。


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日頃より親しくさせて頂いている、河田晃明・羽生市長も共に出迎えて下さり、短くも思い出深い時を過ごしました。
羽生のスタッフ達にもひとりずつ丁寧に笑顔の挨拶をしてくださる島村先生。
昼食も、僅かに残されたものを、箸を使って丁寧にひと隅に寄せて箸を置かれる見事さ。
人の上に立つ方のあるべき姿を学んだように思います。

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