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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年06月


梅雨の天候の動きで、黒松・赤松の芽切りを、どの程度に進めるか?
この何年かは、とても気苦労が多いです。


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大型の名木が多い羽生なので、4人掛けで移動しながらの悪戦苦闘です。
一発切りと二度切りの方法がありますが、春先から肥料を効かせておくことで、一発切りで進められます。


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今月中に大型を終わらせて、中型から小品へと、徐々に進めます。
この時季は、芽切りとの日々戦いです!


【芽切りから暑さ対策の小屋掛け!】

慶雲庵(京都国際文化振興財団)の、年に一回の収蔵庫整理を二日間かけて終了して、
日々の混み合う予定で、渡邉君に任せきりの庭園に、久しぶりに入りました。

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黒松・赤松の芽切りと枝透かし、ヤマコウバシなどの、茂る葉組みの透かし切り、等々、あっという間の1日を過ごしました。

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芳春院建て方の棟梁との相談で、ここからの猛暑(京都の暑さはまるで火鍋!)に備えての、
庭内の箇所箇所、石柱毎の陽射し除けの小屋掛け、大体の感じを捉えて、ご住職の了解を頂きました。
庭園の美観、盆栽の保護、両方を考えての設置。

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皆さんにご覧頂く庭として、
盆栽の夏場の管理の在り方を見て頂くのも大切かなと思って考えました。
遮光ネットの手配をして、梅雨明け前には、陽射しに弱い盆栽達にも、“麦藁帽子”を被らせてあげたいです!

【大型逸材群の植付け!】

昨秋、四国鬼無地方で買い付けた、五葉松(通称・銀八又は大阪松)の太幹素材の第二次植付けを、先日スタッフ総動員で行いました。

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朝6時開始!途中の水掛け(羽生は広く多く!4名で2時間!!)を挟んで、夕方までに完了したのが、25本。
とにかく大きく、根巻の状態で4人で持ち上げるのも不可能な重さ!


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フォークリフトの爪に、樹の幹に縛り付けたロープを引っかけて、吊りながらの根捌き、植付け。
半月前の四国よりの到着間もない頃に、植え付けるのに、手持ちの大型鉢(左右80~100センチ!)も使い切り、
思案の末に馴染みの大工さんに、杉材で寸法を測った木箱を大量に発注して、その到着を待っての取り掛かりでした。

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木箱下準備1名・吊り手1名・根捌き植付け3名・用土入れ完了3名・と言う流れ作業!
それでも、今まで50〜80年を、鬼無現地の古老達が、目先の利益を考えずに、弛まぬ丹精を続けて作出した、“二度と作れない太幹大物”。
鬼無を代表する、小西松楽園翁、庭内に1200年前の天皇家にまつわる古墳がある名家
「神高桃太郎家」(桃太郎さんは、代々のご当主の世襲名、吉備の国、桃太郎伝説を実際に家系に持つ方)
そして培養地の転用の為に、断腸の思いで作出される一群約150点を私に託された、山根家。
鬼無の盆栽、鬼無の銀八五葉松を支えてこられた方々の、歴史が詰まった樹々達。


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ここから、次の時代への名樹となるよう、私達が守り作らなければなりません。
今日仕入れて、明日売ってゆく、盆栽商売が跋扈する今。
この作品群をこうして大切に作ってゆく事、採算では合わないかもしれません。
でも、盆栽人として未来への遺産を作り遺す事の意味を、
スタッフ達がわかってくれる日がいつかは来ると信じて、樹と向き合い、“お前はどうやってここまで生き抜いて来たんだ?“と、
問いかけるように、仕上げてゆきたいと思っています。
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1日おきに霧雨が降るような日々。
そんな季節に可憐な花を見せてくれる姫沙羅の樹。

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先日、雑木盆栽の造り手として定評ある、埼玉県西部「村川瑞光園」さんより、
持込み古い美しい幹肌の姫沙羅の大樹を譲って頂きました。

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数日前より、その葉姿に白い小さな椿のような花型が咲き始めました。
姫沙羅は、咲いたと思うと、あっという間に散り、枝々のあちこちに散りばめるように10日間ほど、可憐な花を楽しませてくれます。
寄植えなどで、景趣見事な作品をよく見たものですが、最近はこのような名木級の姫沙羅を見る機会がなくなりました。
枝調子を整えることで、この樹はまだまだ樹格の向上が見込まれます。
雨竹亭の応接室に、ようやく飾れるようになった、姫ガマと共に飾ってみました。

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深山に咲く沙羅の花々、里へと翔ぶ一羽の杜鵑。
潤質な空気で仄かな姿を見せる梅雨朧の月。
涼の欲しくなる中、足下の瑞々しい渓流を現した八海山の水石。

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こんな季節は、時々の自然のあるがままの景色を満喫したいものですね!


【1ヶ月の休園を終えて、盆栽庭園再開❗️】

京都も5月はウィルス感染対策としての、緊急事態宣言で、休園をしていた盆栽庭園。
休園していても、庭園と盆栽達の管理は変わりません。
杉苔の築山・敷砂利・延段・庵内の通路・各所の草毟りは、すべて手作業!
そして盆栽は勿論のこと、庭園の灌水、1日はあっという間に過ぎてゆきます。
そんな1ヶ月が過ぎた中、1日より再開をご住職と決めた矢先の宣言の延長、
結局、ご住職の判断で「いつまでも閉めていてもしょうがないから、たとえ僅かな来園でも、季節の樹々を見てもらえるように開けよう」となりました。
羽生から大型トラック1台の入替え作業。


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この庭園は全体が大きく「通常の国風展サイズ」でも少し小さく、見栄えの良い大きさとなれば、4人で担架を担いでの飾り替えです!
京都市内に盆栽園を構える大溝さんの協力を得て、1日かけてようやく再開の準備となりました。

数ヶ月前、木村正彦先生が改作された真柏大樹、ご住職にお願いして授けて頂いた銘は「龍翁」


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老成した龍王を思わせる樹相と見事に合致しています。

京都盆栽財団「慶雲庵」の田中理事長よりお預かりしている五葉松直幹「寿」


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この樹は、財団の継承前の創設者、旧高木盆栽美術館を興された、故高木禮二先生の遺愛品であり、国風賞受賞樹でもあります。

石柱を飾る大型作品32点、庭園を構成している礎石に載る中型10点、そして入替用のバックヤード保管分。
樹種名、目録など、大入替は大変です。

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羽生オークション「天地会」の開催、明治神宮での「奉納盆栽展」など、諸用多く、
週2~3日在園をしたいのですが、留守を預ける渡辺君には苦労をかけています。
それほどの人がまだ動かない今、それでもいつかは皆さんがもっと自由に古都を散策される日を待って、日々盆栽達を見守って行きたいものです。

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