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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年05月


【木村正彦先生、四幹樹を三幹名樹へ!古老愛好家の慧眼に敬服!】

30年来のお付き合いをさせて頂いているお客様。信州の庭にお伺いした時「この樹を三幹に直せるか?」と問われて、
左への流れを表している太幹を捌く?すぐにはご返事が出来ませんでした。


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“木村先生なら!“と思い、お客様に事情をご相談すると、“それが出来るなら頼んで欲しい“との事。
先生にお預けしてから暫くして“あの樹が仕上がったよ“の報。
早速お伺いすれば、私の想像の範疇を超える仕上り!
一番太い差枝をただ取れば、大きな疵を残すことになり、中途半端なことも出来ない、、、
その私の迷いは、先生の作技によって一蹴されました。

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ウロサバの姿を、昨日までその枝が生きていた事を全く匂わせない仕上げ!
この姿を何年も庭で眺めながら辿り着いた古老の慧眼にも頭が下がりますが、
やはり、それをそれ以上に具現される木村先生は、多くの盆栽作家と名乗る方々の中で、
たった1人の特別な人なのだと、八十路を超えてなお、作出に対する情熱の高さを思いました。

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羽生に持ち帰り、幾つかの鉢合わせの上、山秋の太鼓胴丸に納めました。

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今までも古木としての相がある良い樹でしたが、今は三幹の名樹の新たな誕生となりました。
盆栽の作出は、“捉える目“と、それを実行する術、良い経験をさせて頂きました。



盆栽人としても、日本水石協会としても、お付き合いの深い、春花園小林國雄師の愛弟子であり、
同所の盆栽美術館の館長である神君が、可愛らしい中国のお嬢さんと結婚されました。
コロナ下の中、挙式も難しいと思っていた所、“春花園でやります“の案内!
お祝いに伺って、中華風の挙式装飾の数々にビックリ‼️

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それでも祝う多くの方々と共に「人前結婚」の姿には、微笑ましい気持ちになりました。

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島村元農林水産・文部大臣(現・日本水石協会長)をはじめ、内田洋行など、上場企業の創業者など、錚々たる面々、
祝辞を頼まれましたが、盆栽界以外の何物も持ち合わせない私。
私らしい言葉を送りました。
“私も23年の番頭時代がありました。その時一番大切にした気持ちは、主家を第一にする事、己は滅する事、主人の“脇差“である事”、
加えて、夫婦2人で協力して、夢と言う荷物を精一杯大きな山へ運んでと。
自分も36年前、夫婦2人だけの資金で、農協の2階を借りて披露をした事が思い出されました。
盆栽の仕事では行く事がないだろうと思って、北海道の道東(阿寒・摩周・知床・根室)に旅行するのに、
式に来てくれた人達のお土産を買う予算もなく、お祝い金を袋に詰めて出発した事、苦笑いの記憶です。
でも、人が出会って結ばれて、新しい人生の幕が開かれる。
いいですね!


【鬼無小西邸で守り継がれた老大樹・名樹への始まり‼️】

昨年夏に四国で買い付けた大型大阪松、
鬼無名門・小西さんが半世紀を超えて作り守ってきた大樹達。


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“ここからは森前君に頼みたい“と、隠れ培養場に案内されて、十数本の圧倒的な大きさ・太さの松を譲って頂きました。
鬼無のルーティーンで、“10月に根切をして、4月末に巻き上げする“と言う地元の教えを尊重して、連休明けの今、羽生に届きました。

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根巻の老大樹の為に、大工さんに木箱を作ってもらい、中国で誂えた大型鉢を用意して、
1点200~300キロの重さ!
フォークリフトの爪で吊り上げての作業!

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ここから、年々の手入れで、もう二度と作れない大樹達を、盆栽界の名樹へ辿り着くように努めたいと思います。
・・しかし、デカい❗️


【見付で変貌する真柏盆栽の醍醐味❗️】

先日、同業者の縁で、糸魚川真柏の古木を入手しました。
舎利芸に面白さがあるのですが、現在の捉え方にどうしても“凡庸さ“が感じられ、
見飽きる姿だったので、思い切って正面を変えて作り直すことにしました。

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真柏盆栽の条件として、正面より大切な「水吸い」部分が足元に見えないと、生い立つ根本の生命感が出ないとされます。
水吸いが僅かでも正面から見えて、それでいて舎利芸と全体の姿がまとまる場面、これを捉えるのに苦労しました。

ほぼ裏側に近い所に目をつけて、そこから動く舎利幹、それに枝打ちがついてくるかの闘いでした。
舎利を跨ぎ、枝を捌き、大まかに伸びながらまとめた枝打ちを、
出来るだけ縮めて圧倒的な舎利芸を中心に作り変えました。

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鉢も締め込んだ深めの舎利の動きを抑えられるものとして、全体にひとまわり小さくしながら、
樹そのものは大きく見える、真柏盆栽の真骨頂が表現される樹へ少し近づいたかと思います。
ここから数年の培養で、更に新しい姿に似合う枝打ち、そして最終的にはもう一度、
舎利を“吹かせて“大自然の風雪が現れるようにしたいと思っています。

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凡庸な姿から厳しい生命力あふれる姿へ!
数年後が楽しみな樹になりました!!


【植松家の巨大赤松一対・名匠の技で蘇る❗️】

京都盆栽美術館の準備打合せ・ここからの2人の将来設計を語り合う刻を、久しぶりに鈴木伸二氏の盆栽庭園で過ごしました。

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彼の作品群に囲まれた中、懐かしい樹に会いました。
中国清代、粛親王より明治政府に贈呈された稀代の名鉢『李鴻章の烏泥』を譲り受ける為に、
名家川崎家にお伺いした時に、一緒に譲ってもらった、日本盆栽界の歴史の象徴と言える赤松2本。
(李鴻章の烏泥は、その後、蘇州の仁者、楊家に譲り、今も大切にされています)

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(40年以上前、日本盆栽作風展に、皇居の盆栽と共に特別出品された時の姿)
250年前、江戸時代中期、東海道にその名を知られた名家、植松家は、各地の大名達の逗留処となっていました。
そこには、目を見張る巨大な赤松の盆栽がいつもあり、当時の権力者の間の噂になっていました。
私の下へ来てから間もなく、鈴木伸二氏の所へ移ってもう10年。
その姿は、威容と言えるほどになりました。
おそらく日本に現存する赤松の中でも、群を抜く巨大な老大樹と言えます。

時が経つのは早いもので、2人とも、ここからの残された時間の中で仕上げる“自分らしい仕事”を見つめる歳になりました。
まったく性格の違う二人。
だけど、一緒にいると“二人でしか出来ない事“が沢山ある事がわかる二人。


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ここから彼と何を見つめてゆくか?楽しみです。

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