雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年04月


【開園記念展・木村正彦・小林國雄・鈴木伸二・井浦貴史・各先生に感謝!】

「百年の初め」に相応しい日本の名樹を集めた開園記念展が無事に終わり、
ここより、長く続く「芳春院盆栽庭園」が静かに始まります。
日本を代表される盆栽作家の皆さんが、私の想いにご協力下さって、
ご本人を代表する盆栽を、この庭園の“柿落とし”に華を添えてくださった事は、生涯忘れません。

IMG_2889
IMG_2898
禅の聖地である大徳寺、“茶聖“千利休と三千家の墓所、戦国大名の塔頭群、その中心に造られた盆栽庭園。

ここから、この庭と盆栽達を守り訪れる多くの方々に、盆栽と水石を伝える事が、私の62才よりの務めとなります。

盆栽はどちらかと言えば、狭義なマニアのものとして、戦後豊かな趣味として発展しましたが、
造形美や“作る・育てる“と言う楽しさが、前に出て、古来よりの盆栽に対しての美意識・美学、
と言うような世界観を愛好家や世の中に伝える部分が、疎かになりがちでした。
この庭園が、禅や茶の湯と言う、日本文化の根幹を成す象徴的な地に創設されたことで、
初めてここで盆栽水石をご覧になる方々の意識を、更に文化的な視点で感得していただける事を願っています。

設立者である芳春院ご住職の「開園に際して」の言葉に、
盆栽は「自然のどこにでもある仏性」の象(かたち)として作り出され、「生きる禅・哲学」である
とする言葉を頂いた事は、この庭園に携わる事になった喜びです。
7日より、連綿と続く「芳春院盆栽庭園」が、時々の盆栽を入れ替えながら始まります。
静けさに包まれた禅林の地で、佇むように盆栽達とゆっくり会話を楽しんでいただける事を願っています。

IMG_2899


盆栽庭園を預かって、2週間近い刻が過ぎました。
掃除・草取り・水掛け・雑木の芽出しの手入れ・来庭される方々の応対・・!
1日があっという間に過ぎてゆきます。
その中でも、ここをお預かりする時、
私なりに盆栽水石を多くの方々に伝えるひとつの仕事としての「座敷飾り」の妙を、ここで実践することです。
庭内にも「通玄庵」に床席を造り、今回は赤松の三幹と滝石を飾りました。

IMG_2828
文人樹形の名作として、大家、塩月翁から現代の名手、矢内信幸氏に受け継がれた樹です。
鉢も飴南蛮の名器。
このような樹こそ、鉢も贅沢に、それでいて目立たぬものを使いたいものです。
脇に雪解けの清流が飛沫となる滝石を配する事で、松柏盆栽が描き辛い季節感を出してみました。


庭園に隣接する塔頭「龍泉庵」は、大徳寺の中でも歴史深い塔頭名。


IMG_2829

書院に飾ったのは、桧の三幹。
飄々と揺れたつ姿が見所のこの樹は、戦前の大家によって作られた「高明山焼」

IMG_2830
僅かな奥行にこれだけの三幹を植え込むには、技量もさることながら、持ち込みによる根の仕上がりが必要です。
まるで明治の大家達を魅了した“飾らぬ逸樹”を見ているようです。

IMG_2832
掛物は、名手、長澤蘆雪の「雲月図」
横物であることが、床の間の空間を壊さずにいます。

IMG_2831
添えに、田中一光師の「蓮に白鷺」
十数年前、一光先生に依頼して制作していただいたもの、細い脚を含めて、この作品は、一木から掘り出されたものです。
その姿から、蓮の上に立つ「白衣観音」の化身に見立てています。


次の間には、加茂川の遠山石。


IMG_2833

練れた味わいは、百年を越える愛玩によるものです。

IMG_2834
2尺を越えるこの年代の遠山加茂川石は、とても貴重です。
掛物は、菊池容斎「雪月花」


IMG_2835
IMG_2836

真黒の石に季節感は出ませんが、月にかかる散り桜の花びらが、過ぎゆく季節を謳っています。


大徳寺の中は、今日も静寂に包まれています。
ここにいると、まるで刻が止まったかのような錯覚を覚えます。
庭を守り、盆栽を守り、訪れる人達に私が出来る事を伝え、そしてこのような飾りの世界観を伝えて行けたらと願っています。

↑このページのトップヘ