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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2021年04月


【特別支援学校『ふじ学園』でのボランティア開始❗️】

羽生雨竹亭に程近い場所にある特別支援学校『ふじ学園』。
県内に数カ所ある支援学校の中でも、自分達で作ったメロンなどをデパートで販売するなど、外に向かう社会活動で私もよく知る学校。
昨年、“生徒達に盆栽を授業に取り入れたい“と、学校から依頼され、今までの市内小学校2か所に加えて、今回から授業が始まりました!

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20名の農業技術課の生徒達、みんな15~16歳。
ちょうど私が47年前に、盆栽の道に入った歳です。
支援学校での盆栽指導は未経験でしたが、・・楽しかった!
みんな純粋そのもの!
目の前に置いた、真柏の素材を食い入るように見て、2時限の授業は、
30分の延長(先生、すみませんでした!)をして、植替えまで済ませました。

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ここから彼らが3年生、18歳になるまで、年4~5回の授業になります。
ハンデを持ちながらも、卒業すれば社会の荒波の中に放り込まれる子達。
私が彼らと触れ合う刻の中で、どれだけのことが伝えられるものか?
気負わず、自分が15歳から歩いた道を伝えながら、目の前の「生きた机上の大自然」を素直に感じ取ってもらおうと思います。

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でも、なんてピュアなんだろう。
一緒にいてこんなに楽しいとは思いませんでした。
来月は、羽生の庭にみんなが遊び(見学)に来ます。
孫のような(いませんが!)子達。
成長を見守るだけで、私こそが勉強になりそうです。


【3年目の第二次作業で姿を現しはじめた樹容!】

福島の著名盆栽愛好家、舩山邸の庭、大型盆栽で有名な庭の中でも、一際の巨大さを示す真柏。
千年を優に超える“神宿る樹“と言える圧倒的な姿のこの樹を2年前に、将来の日本盆栽界を代表する作品へ変貌させる作業は始まりました。

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三陸から戦前山採りされたこの樹は、現存する“未完の巨大真柏“最後の逸材。
舩山氏と旧知の間柄の木村正彦先生、東北の地に赴き、
「樹高を半分にして、糸魚川真柏に枝接ぎ技法で大変貌させる」と言う構想。
2年前の枝接ぎ状態も良く、今回は新芽が徒長しはじめた事を確認して、
接ぎ技法の際にかけた針金を外し、徒長した枝を“先に伸びるように“もう一度針金で方向性を与えました。

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陽射しが内枝にも注ぐように、上部の元枝を3分の2程切り落とし、
先生の判断で「よし!今日からポットの水を切って、穂が幹から水を吸い上げるのを見守ろう!」
1週間後、穂先が萎れていなければ、新芽は巨幹から水を吸っていることになります。
甘えさせずに、樹の生きる力を信じての大改作。おそらく先生が手掛ける“最後の巨大作品“となるでしょう。
「世界大会のシンボルになった名樹、飛龍 を超える樹になるよ」と先生の弁。


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既に3年後のすべての元枝を取り払った後の姿が浮かんでいるようです。
エスキューブ雨竹亭のスタッフとOB、先生のお弟子さん森山義彦さん、私も含めて、盆栽人として、生涯記憶に残る仕事になりそうです。
完成までの作業を年々このブログでご報告してゆきます。



季節の早さに、応接室の盆栽飾りも、追いかけられるような今年。
早めの藤の席飾りをしました。

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滝のような艶やかな花姿を見せる一盆。
陽春を謳いあげる「揚げひばり」の掛物。

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眼下には、春の山野草“丹頂早“が、瑞々しい葉色と可憐な花を咲かせています。
「藤に雲雀に山野草」まさに“麗かな春“を席中に観られる花物盆栽の好例です。



そしてもうひとつ。
千葉県に住する旧知の目利き古老より最近譲り受けた藤。


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“こんな藤の盆栽があったんだ“と、感嘆した一樹です。
どれほどに長く鉢で持ち込めば、このような老幹の味になるものか、

枝までもがそれぞれに揺れ下がる様は、まるで琳派や水墨画の中にある景色。


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名筆・望月玉泉の「雲月図」、花物でありながら、“幽玄“と言う世界観が醸しでる樹には、
“春の盆栽“と言うことよりも、この樹が持つ「韻」をよく感じさせてくれる空気感を描いてみようと思いました。

脇には苔の“あしらい“のみ。


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くずや石・添景・等々、考えましたが、
何かを取り合わせることで、そこに観える世界を固めてしまいそうで、敢えて何気ないものとしました。
宵闇に咲く数輪の花を付けた山藤、﨟たけた樹が語りかける情趣は、なにものにも替え難いものです。
盆栽は、種類も多種ならば、同じ樹種が描き出す席中の雰囲気も、まったく異なる世界が
樹によって現出されます。
これが盆栽趣味の醍醐味ではないでしょうか!


早春の梅から暖かな日差しの中の桜たち。
季節の移ろいを“先取り“するように、盆栽たちは私達に自然の美しさ・素晴らしさを謳い上げてくれます。
温暖化のせいでしょうか?
桜も私が小さい頃は、入学式の時にはまだ満開かはらはらと散り始める姿の記憶がありましたが、今年は4月の初めには既に散り始めました。


藤も然り。


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まだ三越銀座店にいた頃は、ゴールデンウィークの頃が見頃だったのですが、
この調子だと、それまでに艶やかな花姿は峠を超しそうです!


新緑のもみじも、今が盛り!


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透けるような瑞々しい葉色は、いつ見ても良いですね❗️
そんな事をのんびり思っていたいのですが、この頃になれば、追いかけっこをするように、
芽摘み・新芽切り・に腰の鋏が欠かせません。
芽切り鋏・ピンセット・そして・・植替えの山・山・山・‼️
雑木盆栽はとうに峠を過ぎていますが、ここから残りの五葉松、追いかけるように真柏・黒松・赤松・が続きます。
我が稼業は、自然の移ろいと共に生きるのですが、自然が背中から押しているようです(笑)


【蘇る「蒋介石水掛けの松」❗️ 庭園大入替え❗️】

開園記念の特別展示を終えて、2日間の休園の後、禅林の庭内は、
ここから始まる時を共に刻む新しい“仲間達”を迎えました。

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赤松・銘「群鶴」、蒋介石が愛蔵した歴史を持ち、貴重盆栽にも登録されている、文化遺産と言える日本盆栽界の赤松名樹です。
長く羽生の庭内で培養の時の中にいましたが、この庭園の開園に合わせて、
名匠木村正彦先生にお願いして、広がりすぎていた樹姿を、往時のように、幹芸が見えるように、“しめ込んで“ 頂きました。
鉢も誠山の長方から、中国宜興で誂えた、この樹の為の鉢に植え替えての“上洛“!です。


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真柏・銘「乾坤の神龍」も、20年近く山採り素材の頃から手掛けてきた樹。
五葉松名樹「日暮し」の持つ樹相をどこか感じさせる私が大好きな樹です。


勿論、季節の美しさは何よりも大切。


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1年の丹精を経て、滝のように見事な花姿となった藤の盆栽。
透けるような爽やかな青葉の山もみじ。
この庭園は、伝承されてゆく日本の名盆栽はもとより、
美しい日本の自然が創り出してくれた、四季折々の移ろう“その時“を現す花物や葉物盆栽、そして何気無い山野草。
そんな世界をいつもご紹介してゆきたいと願っております。

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