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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2020年09月


多くの名木素材をご紹介して、二人三脚で国風展や各種展覧会に発表してきた、福島県の舩山様。
もう20年程の刻が経ちました。
40代だった私も60代、舩山様も秋には77歳。盆栽達が少しずつ仕上がってゆく中、
私達もあの頃のヤンチャさから、お互いに何も言わずに分かり合えるお付き合いになっていました。


最近は、何か良い盆栽をご紹介すると言うことよりも、今まで2人で集め創り上げて来た盆栽達の、日々続く“命の変貌”に対して、
1ヶ月に一度位のペースで、スタッフ4〜5人で、細かな鋏入れや、日当たり具合による置き場の移動、肥料の多寡の確認、大型作品の持ち帰りとお届け。
等々、刻を重ねてゆく仕事に専念しています。

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いつかは次の愛好家へのバトンタッチが来ます。
舩山様も私も、どんな姿であれば良いか?
まだまだ固まりません。
今はお年を重ねられた舩山様に、ご負担をなるべくかけないように、盆栽達の手入れに尽くしています。

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溢れる名木群、盆栽界の宝達を見守り続けます。


水石協会の文化事業資金協賛の目的で毎年2回開催される「水石協会大オークション」は、
毎回5000万超えの出来高で、その時の業界の現実市況を反映する指針になっています。

今回、上野グリーンクラブでの開催が予定されていましたが、コロナの影響で“安心安全な環境”と言う意味で、私の羽生雨竹亭に会場変更となりました。

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6時開門、約800点の盆栽、200点の水石と盆器。
18時に終了した時には、総出来高約7000万の成果でした。
本当にありがたいです。

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“森前さんの所でなら行くよ!“と多くの仲間が集まってくれただけでも感謝です。


特に今回は日本盆栽作風展で内閣総理大臣賞を受賞している著名盆栽作家の面々が、奇跡的に一堂に集う機会にもなりました。
“神セブン“と言われる人達です。

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本当はこれに大町氏・井浦氏が加わって“神ナイン”ですが、神セブンの集合写真を羽生の庭で撮れる唯一の機会になりました!
長老から若手まで、こうして業界が集うと、時代が少しずつ変わってゆく事を実感します。

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異常な猛暑だった今年の夏。
9月になってもしばらく暑い日が続きましたが、彼岸を迎えて朝晩の涼しさは、人間も盆栽達もありがたい限りです。

数年前から、松柏類にも寒冷紗で日除けを施している庭、私が修行中の46年前には考えられない事でした。
暑ささえ収まれば、少しでも早く日差しを浴びさせたい盆栽達。
庭に張り巡らされた、各種の寒冷紗を一斉に外しました。

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やっぱり、覆いの無い景色はいいですね!盆栽達もどことなくスッキリしたみたいです。

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ここから11月末~12月中旬まで、日差しをたっぷり受けて肥料を与えて厳しい冬に備えたいと思います。


暑気まだ残る九月、それでも朝夕の風に何処となく“秋“の気配を肌で感じる季節になって来ました。
記録的な夏を過ぎ、心の中も“秋景色“をどこかで求めています。


今年は“中秋の名月“が、10月1日と遅く、少し早めの「名月の飾り」をしてみました。

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まだ「芒・すすき」も席飾りに出来るほどの穂も背もなく、カリヤス草を使ってみました。

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鬱蒼としていたカリヤスの根本の古葉を手剥きで丁寧に取る、この作業が草物を主座に迎える時、とても大切な事です。
美しい根茎のスッと伸び上がる姿は、どんな名木にも替え難いものがあります。

掛物は「雲中の名月」上部に金泥を使った月光を見せています。

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カリヤスの足下には、つがいの鶉、草叢を行き交う姿が浮かびます。

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脇床には、蕭々と孤立する老松。
直近の名匠木村正彦先生による五葉松文人盆栽です。

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『山間に屹立する老樹、秋の澄む風は、名月の下、草叢の鶉を映す』

盆栽・掛物・草物・等々。
取り合せの妙を楽しむ季節が来ました。

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【マルキョウ植木】

千葉・匝瑳市で、植木・盆栽の生産と販売をされるマルキョウ植木・江波戸さん。
私より7歳上の68歳、バイタリティーあふれる活躍にはいつも頭が下がります。

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大型の槇の植木から、最近は「次の時代のために」と、お孫さん達と、若木の生産までされています。
広大な培養場を埋め尽くす程の松柏の群、私もそうですが、これだけの圧倒される量、自分の気持ちが相当に強くなければ維持管理は出来ません。


月に数回のオークション会場としても、全国の業者に知られる江波戸さん。

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お年を重ねても“前へ前へ“と日々努力される姿は、すべてに見習うものがあります。
名木から苗木まで、プロのあるべき姿がここにありました。

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