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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2019年10月

【舩山コレクション秋の手入れ!】

現在の日本盆栽界で東北地方を代表する愛好家・舩山先生の所で、季節の盆栽手入れを行いました。
気候変動の厳しいここ数年、五葉松の原生地でもある福島も例外なく、管理に神経を使います。
舩山コレクションを代表する五葉松「天帝の松」も、今年伸びた芽をひと回り追い込み、健康な冬を迎えます。
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約250点の盆栽達も、各枝の調子を揃え、整姿針金、真柏などの葉透かし、
羽生から3名の熟練、宮城県の加藤充君、圧倒的な質と量の「舩山コレクション」は、手入れに慣れたメンバーでも終わりなき内容です!
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今回一緒に同行してくれた森山義彦君は、名匠木村正彦先生の門下。
木村先生との交流も深い舩山邸には、創作作品としての著名な真柏の立石付もあります。
「この樹は森山君がひとりで手入れをして」私の声に真摯にこの作品と向き合う森山君。
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「師が作った作品を弟子が手入れをして守り継ぐ」側で見ていても嬉しいものです。
羽生の近隣、加須に盆栽アトリエを自力で構え、“腕ひとつ”で日々盆栽と向き合う森山君。
盆栽作家の檜舞台「日本盆栽作風展」で、いつかは大賞を彼に獲らせてあげたい!
舩山コレクションからその樹が生まれてくれることを願っています!

【世界に広がる文化】
先日 京都盆栽美術館の設計打合せに、オリンピック会場のデザインの一部も行なっている
日本デザインとの 
京都盆栽財団 理事長面談に立ち会う為に、夕方の灯り美しい銀座の店で待ち合わせました。
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久し振りに 見る銀座の店姿。
小さな店に訪れて下さる多くの外国人観光客。
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銀座の盆栽ショップ、盆栽好きの海外の方の多くがいつのまにかネット情報の中で店の存在をご存知で、
先日は 天皇陛下の式典に来訪された ジョージアの大統領も直接店に盆栽を求めにいらして下さいました。
私が自分でこの店を切り盛りしていた20年前とは、在り方も 求められる内容も様変わりしましたが、
日本の盆栽をご紹介する店としての意味は、何も変わらずに日々が続いています。
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もっともっと、この銀座の片隅で 皆さんにお伝え出来る“何か”を見つけてゆきたいです。

【仕上げ手入の盆栽達!】
11月1日から5日間の『秋の観賞会』・年に2度 多くのお客様をご案内する催事です。
庭内の乱れを直して、盆栽のひとつひとつを少しでも来園される方々に、美しくご覧頂く為の 手入や準備が始まりました!
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季節の実物や葉物は、まだ色付きをしませんが、松柏類は 秋の陽射しと気候で、充実の色合いの葉姿を見せています。
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まだ手入れを終えていない状態ですが、18年 私の庭から世の中に出ていない真柏を床の間に設えてみました!
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『乾坤之神龍・けんこんのじんりゅう』と名付けたこの真柏は、
真柏の山採り名匠・亡き初代井浦勝樹園翁より四十代初めに譲り受け、枝も殆ど無い頃から作出に努めたものです。
相生に生きる幹姿を「乾坤・天と地」になぞらえて、“天の龍・地の龍”という意味で命名しました。
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取り合わせた掛け軸は、江戸期名筆家・狩野探幽「三日月図」天空の夜に煌々と輝く三日月を探幽が銀泥で描いたものです。
真柏の持つ 神韻響く幽玄な姿を、その際立つ鋭さからこの掛け軸を選びました。
他にも“この樹はこう捉えてみよう!この樹はどうしようか?” 
まだまだ観賞会まで 思案の時間がかかります。
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羽生で2年、中国西安から盆栽技能の研修に来ているハオ君とツァオ君。
朝7:30から夜は作業が終わるまで、日夜 未来の自分の為に頑張っています。
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大学を出ていない彼等が、母国で身を立てるには、盆栽技術者としての技を磨くこと。
日々の一生懸命の彼等の姿は、私は勿論のこと 私と同じ11年の住込み修行をした名匠木村正彦先生の心も動かしました!
「森前君、彼等なら私の技を教えるよ」
感謝感謝です。
12月に開催される「日本盆栽作風展」に新鋭作家部門で今年も挑戦しました!
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昨年はツァオ君が受賞した奨励賞を今年はハオ君が見事受賞しました!
最終的な仕上げの針金整姿を木村先生に指導して頂いて、鉢・卓・などの合わせも羽生で指導しました。
プロとしてはまだ入口の所ですが、等身大の自分を見つめて来年の作風展には、
日本での最後の作風展に更なる上を目指して頑張って欲しいです!
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おめでとう🎉  可愛い息子達。

【名鉢名水石・一堂の大展覧!】

未曾有の台風災害で沈痛の日本、その最中ではありましたが、
日本盆栽協同組合50周年を記念した大展覧が上野グリーンクラブで開催されました!
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国風展へ出品される殆どの樹を扱い、盆栽作家の登竜門「日本盆栽作風展」への選考資格者でもある盆栽組合員達。
半世紀の想いを込めたからこそ、これだけの名品が一度に集められる事は、今後もないと思います。
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数々の歴史を彩った名樹達・日本水石界を代表する名石・現物を見る機会はプロでもあまりない名鉢群。
被災された多くの方々への事を思えば、“なんでこの時に”と日程を恨む程の“二度と出来ない展示でした。
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私も 蔵品の内閣総理大臣賞を受賞した真柏と古渡烏泥を飾らせて頂きました。
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祝賀会場には、今年の作風展の大賞受賞作「赤松・漆畑大雅氏作」が会場の華を添えていました。
親交深い尊敬する木村正彦先生の門人として、その技量は以前より高く評価されていた人物、遅咲きと言えるくらいです。
業界に身を置いて45年、展示された数多の名品を見れば、自分が扱ったものも多く、若き頃の記憶が蘇ります。
還暦の今、もう少し頑張ろうと思いました。

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