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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2019年09月

【五葉松の競り合い!】

9月27日 栃木県西那須野で、北関東地方を代表するプロ盆栽園大会オークションが開催されました!
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那須五葉松の故郷での開催、さすがに葉性素晴らしい五葉松群が数百点出品されました!
私の兄弟子である鈴木理事長からの参加要請で、自然豊かな那須へ赴き、多くの五葉松を落札しました。
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そのまま展覧会に飾れるもの・手入れをして姿を整えるもの・将来性を見据えるもの、
様々な樹々が順々に競台に上がり、次々と落札されてゆきます。
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最近は、海外勢の参加により、多くの古樹達が流出し、
大きなプロオークションも出品数が減少して全体の質も低下しています。
だからこそ、みんなの目を惹く作品が乗ると、一斉に声が上がります!
今回もトラック1台分の落札仕入れ!
相変わらず “束ね買いの森前”なんて言われるけど、
エスキューブは ネットオークション・羽生本店・銀座店・そしてレンタル事業部・と、
盆栽の活用範囲は、幅広いのです。


古くは昭和前期に盆栽として作られ、戦時中は地に植え、
戦後大切に培養された “黒松の王”と称された巨木が1年の交渉の末、羽生の庭に到着しました。
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数年前拝見した時は、まだ枝作りの初期で、今ほどの量感は感じられませんでした。
木箱に植えられたこの樹を庭に飾るのに、総重量1トンを超える台として、
栃木県大谷地区の名産「大谷石」の“特級質”を切り出し注文して、到着を待ちました!
昨年の台風で倒れたこの羽生雨竹亭の地に100年前よりあった梅の古木の跡地、
ここに据えよう!と 思って4寸の厚みの板も用意しました。
ユニックで吊り上げられて、前庭に据えられた黒松。
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“やっぱり大きい” ここからこの樹を本物の大型名木「黒松の王」にする為の日々が始まります!


【圧巻の幻の真柏原木群との対面】

中国江蘇省と山東省の境、新沂(しんい)という地域は、黒松の原産地であり、
山東省からの樹齢1000年を超える巨大真柏群の集産地です。
以前より中国で時折拝見する信じられない程の巨大な真柏、いつかその原木が集まる地に行きたいと思っていました。
そんな時、日頃からお世話になっている江蘇省盆栽界の張主席より
「木村先生・森前君で、新沂で開催される中日盆栽文化交流会に来てもらえないか?」
との連絡を頂き、かの巨大真柏群を視察できるなら木村先生も行きたいとなったので、
合計5日間の行程で森山義彦氏・浅子隆敏氏を伴って、中国へ赴きました!
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講演は 私の3時間の講義・木村 森山 浅子 三氏による黒松実演改作 を1日行いました。
後、2日間を各所真柏と現地の「油松」と呼ばれる黒松類の原木を拝見に出かけました!
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“どのようにしてこんな巨大な真柏(正確には側柏という名前)が自生しているのだろう?”と目を疑う程の存在感!
木村先生如く
「森前君の能力で、何とかこれを日本に運べないか?これが来れば私は、登龍の舞 を超える作品を作りたい!」
の弁。
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真柏も黒松も、日本では既に枯渇して素材の入手が不可能なものばかり!
植物検疫・通関・根洗い・様々な問題がありますが、実現できるか?挑戦してみようと思います!
・・次の時代の日本盆栽界の為に!

【須坂市 井浦家!】

20年来の朋友、須坂市の井浦勝樹園に玄虹会の皆さんと訪れました。
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ご先代より守り継がれている名樹『風神・雷神』 久々の対面でしたが、やっぱり圧巻の貫禄! 
『風神』は 日本の現代真柏盆栽を木村正彦先生の『登龍の舞』と共に代表する樹。
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もうひとつの『雷神』は、現在更なる樹格向上の為に、敢えて徒長させて次なる整姿を待っている段階でした。
現在の園主 井浦貴史氏は、生一本で 裏表の無い男から見る「男前」!
ご一緒した 福島の大家・舩山会長曰く「あれはスッキリしていて良い男だね」
地方で頑張っている友人を こんな見方をしてもらえると、何とも嬉しいものです!
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夥しい未完の真柏群!
先代より続く 真柏の素材からの枝接ぎ・吹き上げによる施術と培養は、彼にもしっかり受け継がれていました。
“こんな時じゃないと 頼めないな”と、思い切って10年以上前から気になっていた大型真柏の
大器の逸材を相談しました。
しばらく考えて「森前さんならいいですよ」と、即答!
この スパッとした性格が大好きです!
別に数点の手頃な盆栽を分けてもらって失礼しましたが、とても心地よいひと時でした。
※音声が流れます。音量にご注意ください。

【廣瀬邸 見学会】

私が取りまとめ役を務める「玄虹会」の秋季研修旅行。
大中国盆栽旅行を数年続けた中、今年は久し振りに国内盆栽研修としました!
1日目は現在の日本愛好家を代表するおひとり、廣瀬幸夫先生の大邸宅へ訪問しました。
大徳寺での『玄虹会展』などにも参観に来てくださり、昨年は大観展の際、
会員との会食を木村正彦先生達とも過ごされた廣瀬先生。
以前よりの“一度 噂に聞く大邸宅と名木群を拝見させて下さい”と言う、私の懇願に快く迎えて下さいました。
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10年の時をかけて造られたご自宅は、日本建築の粋を現代に残す名建築!
選び抜かれた木材と匠の技。
これだけの個人邸宅を平成の作品として見るのは、他には無いと思いました。
広々とした庭園、その一角に設けられた盆栽棚。
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所蔵される五葉松を中心とする古樹達は、第一級の名樹ばかり!
この中には国風賞を受賞したものだけでも6点と聞いてびっくり!

邸内に招かれてその造り・所蔵される名石・道具にため息ばかり!
これでも最近の蒐集品を蔵に入れる暇が無いものだけ!との事!
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玄虹会の会員の皆さんもあまりにも圧倒的なスケールと幅広い眼福高い収蔵品に、言葉を失う程でした。
盆栽から水石へ、歓談の時は 美術品そして蒔絵芸術・刀剣へと、そのどの分野においても、国内トップレベルの内容!
今でも盆栽界にこれ程の見識と実蔵をされる方がいらっしゃる事に、感嘆と敬意を持つばかりでした。
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“本物に魅入られると、くだらないものは要らない!その方が無駄も授業料も安くすむんだよ”
と、お若い頃よりの蒐集趣味を語られていました。

今回の慰安を兼ねた研修旅行の第一歩で、会員の皆さんにも ある意味の満足をして頂けたと有難く思って、
「名品の坩堝」と言える 邸宅から、妙義山を眺めて退出しました。

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