雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2019年06月

【時限付の徹夜の日々!】

毎年6月中旬から7月上旬は、黒松・赤松 の芽切り作業で ヘトヘトになります。
3月初めには肥料を早めにやり始めて(途中5月に肥料を乗せかえる)力強く伸ばした新芽を
全部切り落とす。
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これによってそこから新しく吹いた多くの若芽を最終的に8月に間引いて短い葉姿にまとめる。
これが『短葉法』という  黒松・赤松・を美しく保つ手入れ方法です。
一般の愛好家の方々は、春の芽を伸ばしたままで秋を迎えるので、葉の長いバサバサした姿にしてしまいます。
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芽を切り、その下の去年の葉を7割くらい間引きする。
・・大型の盆栽ならば、1点で1~2日かかります。
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雨竹亭にはそのような盆栽が、大小合わせて200~300点!
手入れ管理のスタッフは昼夜を問わずの日々が続きます。
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名匠 木村正彦先生の所も、今も雨竹亭スタッフが、応援手入れに行っています。
特に海外の名木愛好家の方々は、日本のこの細やかな手入れを知らない方が殆どです。
どれだけ細やかな手入れを年々続けたかが、作品の完璧さを作り出します!

今年の芽切りの様子を動画で撮ってみました。
(開くと音が流れます)

地味で それをやったからと言って、劇的に樹格が見違える訳でもなく、
どうしても手入れの手間賃がかかる為、おざなりにしがちな作業ですが、私も含めて日本の盆栽家にとって、芽切りはとても重要な作業。
みんなこの時期の外出を避ける程の事です。
健康で生育状態が良好でないと、却って痛めてしまう作業。
樹によっては、下半分をやって、上半分を10→12日後にやる。
そんな 「樹に合わせた芽切り方」まであるくらいです。
難しいと思う方は、遠慮なく 雨竹亭を訪ねて下さい。
でも中型以下でも7月10日が作業の限界期日です!

【梅雨の美しさ!】

ここ数年、梅雨らしい梅雨が無かったような気がします。
猛暑と強い陽射し、松柏類にまで始めて遮光ネットをかけました。
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今年は 雨のち曇り、そして僅かな晴れ間の後にまた雨。
気温も20~25度をうろついて、盆栽の葉色も 潤湿な空気の中、汚れを知らない美しい翠を湛えています。
盆栽協会・水石協会・総会・大宮盆栽美術館の展示解説・月刊近代盆栽に連載の「名石探訪」の選出と執筆・・
自分の庭でありながら、ゆっくりと散策する時間もありません。
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それでも束の間の刻を庭の盆栽と過ごすと、“有難い仕事”だとつくづく思います。
樹々は その時その時期を正直に生きています。私も盆栽を見習って、目の前の出来事に正直に向かって過ごそうと思います。
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彼らのようにまでいかなくても、ここからの残された年月を盆栽人として 自然のままに行こうと思います。
・・・でも 盆栽達はいいなあ!


今年は何年ぶりかの 梅雨らしい6月になりました。
ここ数年は 真夏のような暑さと陽射しで、盆栽の日除けに苦労しましたが、
梅雨の季節には梅雨ならではの情緒があります。
雨竹亭の床間飾りも、潤湿な空気を捉えた設えをしてみました。
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葉の翠を深くするイタヤもみじ。
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掛物には急に降り出した雨の中、家路に急ぐ村人の姿。
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遠くには山里の渓谷に流れる清冽な滝。
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盆栽・掛物・水石・三体がそれぞれに共鳴した 自然界の“あるがまま”を描き出しています。
特に掛物は江戸期の狩野派の名も無き筆ですが、色を見せずに墨のみで描かれていることが、
もみじの葉色・石の肌味を 浮き立たせてくれています。
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『驟雨』俄かに降り出した夕立の様な雨・日本の言葉は、僅かな季節の移ろいの中に登場する景色を上手に捉えた表現が感じられます。
私達盆栽家の飾りも 一瞬の景色を切り取ったような“遊び心”を大切に楽しみたいですね!


【秘技は世界に! 若き中国盆栽技術者の研修】

中国西安に活動の拠点を置いて8年、姉妹店としての「楊凌雨竹亭盆栽有限公司」から
技術研修出向の形で、若き2人が私の羽生本店に来て、1年半が経ちます。
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朝7:30から、夜は作業の多い日中の仕事が終わるのも19~20時。
「3年で出来るだけの管理と手入技術を身につけて故郷に帰り、多くの中国盆栽愛好家の為に、『商売よりも名品盆栽の維持管理』に尽くしたい」
と願う彼等。
日々の生活・盆栽に取り組む姿勢・今の日本では見られなくなった若者の熱意と信念を見ているようです。
今年の2月、彼達にとっての新春である「春節」を前に、
“両親に仕送りをしたい”と私に言ってきて、差し出した金額は1年の給料の半分でした。
こんな彼等に出来ることはないか?そんな気持ちに応えてくれたのが、名匠木村正彦先生でした。
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「森前君が躾けた子達ならいつでもいいよ」と快く彼等を交代での手伝いを許可して下さいました。
“世界の木村の下で 技を磨く”・・夢のような出来事ですが、それが中国へ戻った時の彼達のどれだけの心の支えと誇りになるか、私は唯々見守るばかりです。
心配で用事も無いのに 先生の所へ伺えば、名匠は相変わらず 盆栽と向き合う毎日。
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“この方は盆栽以外の事には何も興味がないんだ”・・天職というものを得た数少ない盆栽家。
あらためての尊敬という言葉を自然に感じました。
がんばれ!ハオ、がんばれ!ツァオ。
秋からは “木村マジック”の本格的な手伝いだぞ!
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【神域に名木集合!】

日本水石協会主催の『奉納盆栽展』が例年通り開催されました。
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理事長である春花園 小林國雄師・蔓青園・そして私の雨竹亭、
三者が協会責任担当として、選出した名樹17点・そこに神宮の盆栽・神域に最奥部『本殿廻廊』を使用しての展覧は、
毎年観ていても、他に比較できるものが無い程の“荘厳”な空気を漂わせてくれます。
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連日12000~15000人の参拝者が訪れる明治神宮。
その7~8割が海外からの観光客。
参拝の後は、多くの方々が 初めて観るホンモノの「日本の盆栽」に感嘆の声をあげ、写真撮影に夢中になっています。
100年の時をかけて、日本人の「真心」が創り上げた『明治の杜』に囲まれた雰囲気は、
私たちも含めて、訪れる全ての人達に、特別な気韻を感じさせてくれます。
来年の同じ頃、ここで神宮100年祭を記念して、参道の杜に初めて100mを超える展示場を仮設し、
前代未聞の盆栽展覧・昭和の名建築『参集殿』すべてを使った100席余りの 水石展覧を挙行します。
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実行委員会の責任者として 今から身の締まる想いです。
やっぱり 明治神宮はいいですね!

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