雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2018年12月


独立して21年、銀座の店を開いた年から この「ふきのとう」を、お世話になったお客様に1年の想いを込めて お届けしています。
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銀座の店を夜閉めてから 栃木の自宅に戻って、手入れ小屋もない中、小さな庭の露天で、ふきのとうの皮をむきながら鉢を合わせて、
ひとりひとりの皆様の顔を思い浮かべて かじかむ手を温めながら作ったあの頃、
その気持ちをスタッフにも受け継ぎたくてずっと続けています。
温暖化・ふきのとうの生産農家の激減など、埼玉の桑畑の畝で作っていたふきのとうも、
今では福島・山形まで 友人に自採りに出向いてもらっています。
橋の欄干や武道館の天に見られる「宝珠」に見立てて、
『来年も宝の芽がたくさん出ますように』のなぞらえの気持ちを込めています。
今年も本当に多くの皆様のお世話になりました。
来る年も皆様にとって素晴らしい年となりますように!
ありがとうございました。
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(元旦から羽生雨竹亭は、新春の盆栽飾りで 皆様をお迎えさせて頂きます。)
※ふきのとうは、販売品は作っていません。お得意様への感謝の形です


20年程前、銀座の店で道場六三郎さんに頼まれて 盆栽の本格的な貸出し「レンタルサービス」を始めた頃、
新春くらいは贅沢にと、昔 宮中などで設えられていた松や梅の植栽による「季寄せ飾り」に挑んだものでした。
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ご用意させて頂く所も 20箇所以上となり、初春の銀座を彩る雨竹庵の象徴とまでなりました。
近年は 制作もスタッフに任せていましたが、どうも植栽のバランス・鉢合わせ・根締め・など、及第点ギリギリの感あり!
となり、若いスタッフ達にも 目と手で覚えて欲しくて、久しぶりに陣頭指揮に立って1日季寄せ制作に挑みました。
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1点の盆栽としては、物足りなく見える梅などが、松柏盆栽との組み合わせで、
お正月を寿ぐ立派な盆栽になってゆく姿をみんなが目に焼き付けてくれればと願いました。
「これは何処そこの方・その方を想って見て楽しんで頂く・・」
こんな当たり前の事をあらためて全員に体現してもらえたかと思います。
劣等生の様な樹達も“よく1年頑張ってきたね!”と声をかけながら、
ひと鉢ずつ 飾られる相手さまの前で、見事な正月の彩りとなってくれる事を願って・・・。

【沁みる庭内の盆栽達】

11月末の京都大観展から今まで、1日も休む事なく 盆栽の手入れ・仕入れ・業界の予定・執筆・等々、
相変わらずの日々目まぐるしい刻を過ごしていますが、寄る年波には勝てないものか、
久しぶりに体調を崩し、半日 体が言うことを聞かずに伏せていました。
いつまでも寝ているわけもいかず、昼頃 亭内を散策していると、
12月の穏やかな陽射しが、盆栽達を照らし、空気全体が心地良いものになっていることに気がつきました。
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年内晦日まで仕事で予定が埋まっている中、万全とは言えない体が感じる閑日の姿は、盆栽を感得する最高のひとときを教えてくれました。
心穏やかにして、樹石と対峙する・・日頃お客様やスタッフにとても大切な事、
と説く私こそが、この様な刻を忘れずにいなければいけないと、きっと神様仏様が、ほんの少し私にお灸を据えたのかもしれません。
・・心に沁みる時間は大切ですね。
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【40年来の恩人・名伯楽は今も業界のご意見番!】

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盆栽界の名伯楽として、組合理事長14年・協会理事長4年・そして語り草となる昨春の「世界盆栽大会」の歴史的大成功。
福田次郎元理事長の功績は、私達若輩からみても まさに盆栽界を人生をかけて牽引して下さったと思います。
尋常小学校しか出ず、福田園芸として盆栽界で活躍した翁との出会いは、私が小僧の頃、作風展の売店。
当時 師匠が中国で開発制作した新々渡鉢の立売りをしていた私に
「腕の良い売り子さんだけど、どこで雇われたの?」と声をかけて下さって、
「栃木の竹風園の修行の者です」とお話をした記憶です。
39歳で 様々な想いを胸に 独立した私に
「森前君は番頭時代からよくやっていた。私の責任で国風展の売店出店を認めます」と、
その後の「銀座森前」開店の礎を創って下さったのは、生涯変わらない一生の恩人です。
いつのまにか歳を重ねて福田翁に「モリちゃん、長い付き合いじゃないか」と言われる機会も多く、不思議に元理事長の頼み事は断れません(笑)
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愛好家としての大恩人 福島の舩山会長が、春の叙勲・こうして福田元理事長が秋の叙勲。
奇しくも 同じ『旭日双光章』。
人の縁の不思議と有り難さを本当に思います。
福田理事長、おめでとうございました!


【羽生 卒業生・研修生 5点出品!】

私が修行を始めた2年目に開催された作風展も44年の歳月が経ちました。
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自分では1度も出品したことの無い展覧会に、私の所から卒業した2名、そして修行中の3名が 出品させて頂きました。
二十歳で銀座へ出た時、5年の修行の後でしたが、「ここからは大好きな樹の手入れより、お客様のお相手を第一とする自分になろう」
と心に決めて番頭までの18年間をひたすらに商売に打ち込みました。
友人の盆栽家達が、この作風展で作家として階段を駆け登る中、“樹に携わりたい”と何度思ったことか!
・・それでも還暦を迎える今、どれ程の出会いと、どれ程の方々の支えで今に至った我が身を思うと、
こうして羽生に来た時に何も出来なかった子達が、作風展の舞台にその名前を刻んでいる事に、自分の役割のようなものを感じます。
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この世界に“生かされて”ここにいる事に感謝!

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