雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2016年11月


【第8回「玄虹会展」 盆栽・水石飾りの頂点】

明治・大正・昭和前期に花開いた"座敷飾り"における盆栽水石の美の追求を今に伝える「玄虹会展」が
今年も臨済宗大徳寺派本山の塔頭「芳春院」で開催されました。
戦国武将 前田利家の妻 "おまつの方"が建立したこの名刹は今年創建400年を迎えました。
本堂から始まり、近衛家寄進の大書院、院全体も非公開寺院ですが、
とりわけ奥に位置する茶室「迷雲亭」「落葉亭」は茶人すらが拝見を憧れる文化財。
海外よりの盆栽熱が高まる中、日本の真の盆栽水石文化を物語る最高の世界を3回に分けてご紹介します。
今回は大書院の格調高い飾りです。
鎌倉期の阿弥陀如来の来迎図に貴重盆栽の長寿梅。
神韻纏う古筆の仏教的気高さと二度三度と一年に咲く長寿梅を "めでたさ"の気品で取り合わせた見事な調和。
脇床は「北の御所」と謳われた京都大覚寺伝来の天龍川石 銘「泰山悠遠」
霞棚は法隆寺伝来の百萬塔。
人々の住み暮らす万象の自然界である雄大な山々は本床の精神性を扶けています。
棚上の百萬塔は静謐な古作の中に秘められた「もの言わぬ古雅の美」と如来像を共鳴させています。

主飾りの趣意、そして道具立の吟味の深さ、本展の盆栽美・水石美への求道の深さを痛感させられた一席です。


【関西開催の最大盆栽展 名品と飾りの競演】

二十代前半の頃より三十年以上参加している大観展も、
今は飾りの審査「大観賞」や水石協会事務局長として「水石協会賞」などに関わるものが私の仕事となっています。
それでも出品作品の頂点を競う「内閣総理大臣賞」や「文部,農林大臣賞」は注目されます。
今回は総理大臣賞と文部大臣賞が甲乙付けがたい拮抗した作品となりました。
結局真柏が総理大臣賞、五葉松が文部科学大臣賞となりました。
私のお気に入りの展示席の数点もご紹介します。

【木村正彦先生指導のもと、蔓青園・森前・椎野宝樹園 実演!】

日本盆栽協会 福田理事長・木村正彦先生 を筆頭に、
中国江蘇省で開催された「日中盆栽家文化交流会」に招待され、式典と実技講演をしました。
石付真柏の制作でしたが、
何とか木村先生に合格点を頂く出来映えとなってホッとしました。
蔓青園加藤さん・宝樹園椎野さん・アシスタントとして木村先生の修行を終えて間もなく
羽生の隣の加須市にアトリエを構える九州出身の森山君を加えた"連合チームジャパン"で挑みました!

郵送で先着させておいた揖斐川石が割れてしまっていたので、
現地協会の張主席の石を使わせて頂きました。
材料の真柏は昨年私共の西安楊凌に運んでおいたものを1200キロかけて現地に運んだものですが、
石をお借りした関係で西安に持ち帰るわけもいかず、総勢9名が宿泊・食事・送迎の接待を頂いたので、
結局贈呈することになってしまいました。
文化の友好は出費がかさむものですね~(泣笑)


【古希を過ぎても衰えぬ"作り手としての情熱と感性"を尊敬!】

日本を代表する盆栽作家 木村正彦先生との長年の夢だった中国盆栽旅行に出かけました。

今もお忙しく活動される先生の僅かな刻を頂いて、
私がこの6~7年の間に見た"今の中国盆栽界"のほんの一部だけでもお見せしたいと半年前からお願いした旅を叶いました。
十代で小僧に入った頃からお付き合いを頂いた木村先生ですが、
こうして日本の現場を離れてのご一緒する機会は初めてでした。
旅の合間に先生が見せた"盆栽作家の真の心"は私に多くのことを再認識させてくれました。
特に上海から西に1200キロ以上内陸に位置する陝西省西安に広がる「西安唐苑」が現在所蔵し、
未来の大型真柏名樹への作出を手掛けている一群は、木村正彦先生をしてもその圧倒的な存在感に驚嘆されていました。

「来て良かったよ」この言葉を頂いた時は、長旅の中でも私に気遣いさせまいと気丈に振舞われる先生が、
今でも創作の意欲と飽くなき探究心に溢れていることを教えて頂きました。
「日本の若いプロの人達も"まだ見ぬ見知らぬ世界"を肌で感じる為に、みんなで見に来られるといいね」
と世界の盆栽界の真の胎動を体現されていました。

始皇帝墓に近い秘匿の山々に1000年の時を超えて眠り続けた"神宿る"程の古樹達。
山から降ろされて5年、ここから更に3~5年の後には真柏と言う盆栽樹種の概念すら変えてしまう程の存在。
日本の盆栽界が今後どの方向へ向かえば良いのかを教えてくれている様な気がしました。


【盆栽の本道を伝えるお手伝いを】

夏の頃より企画相談を受けていたNHK「美の壺」での盆栽特集が収録の段階に入りました。
私共の雨竹亭庭園での撮影が行われ、久しぶりに観音堂にも盆栽飾りをしました。

応接床の間も日輪の掛物を配した五葉松の設え、
季節を超えた"日本"の象徴として収録してもらいました。

12月2日(金)NHKBSプレミアム で放映予定です。
ぜひ、盆栽を愛好される皆さんもご覧下さい。
(床の間の五葉松は、収録許可を頂いた 京都国際文化振興財団 の所蔵樹です) 

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