雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

2016年05月

一木一草、掛軸や添景が奏でる  盆栽飾り 】

東北の大震災をきっかけに、盆栽や水石、山野草を飾って
少しでも心の癒しになればと始めた「風雅展」も六年目になりました。

今年も多くの愛好家をはじめ、小林國雄鈴木伸二、浅子隆敏、 秋山実、各内閣総理大臣賞受賞作家の皆さんも
この活動に協力出品して下さいました。
"あっ  こんな飾りの楽しみ方もあるんだ"という発見を観て頂けたら嬉しいです!


【"真柏という世界観を大切に"三位一体の構成】


私共雨竹亭の月例オークション「天地会」で2ヶ月ほど前にこの真柏を手に入れました。
当時は今の正面の真逆でした!
表裏逆転を手伝って下さったのは、名匠木村正彦先生!
行山の味の良い木瓜型に合わせて、
立上がりから天へ抜ける真柏ならではの"龍"を想わせる舎利芸が活かせたと思います。

真柏は日本の野山や自然に目にふれる所には自生していません。
"何処かで見た自然の一部"と言う他の盆栽飾りの在り方とは違い、
「塵芥届かぬ神仙が飛び交うが如き世界」を飾りの中で表現出来ればと思っています。
今回は"電力の鬼"と謳われた昭和の大茶人でもあった
松永耳庵翁の書「玄妙」を取り合わせました。
金色の台紙に墨色見事に筆されたこの書は"宇宙の根源を見つめる"
という言葉の奥深さがあります。
まさに真柏盆栽にぴったりだと思いました。
添景の水石は四国伊予地方に産する抹香石。
峻険な剣山の姿が真柏が生きる世界と合致しています。
時折、真柏に季節の草物盆栽を添えている席を見ますが、
真柏の持つ"生きるという問いかけ"に厳しさを潜ませながら響き合う取り合わせに努めたいものです。


【鉢持込み古い赤松が締込み整姿手入れと植付け角度変更で別格の逸樹に!】

羽生本店に最近やって来た赤松は信州赤松の古木。

2ヶ月ずっと見ていて、芽が上がった今をタイミングに、
"見付角度"を変えた整姿を行いました。
屈曲する幹芸と空間の調和、そして文人調に大切な、
"重たくしない枝姿"を表現できる様に努めました。
根の取り過ぎない程度での培養も考慮しました。
また、鉢合わせも苦労しました。
で昨年中国に発注して作った「紫泥袋式楕円」の最後の1枚です。
立ち上がりに空間を作り、
独創的な幹芸が強調できるよう心がけました。
私としては名樹「帰去来」に負けぬ赤松文人樹になると確信しています!


応接室はこの季節、青葉の「緑陰」を想わせる盆栽がメインになりがちです。
春先に古渡の鉢に植え替えておいた五葉松が少し落ち着いてきたので、
石と書の組み合わせで飾ってみました。

サバ幹の屈曲懸垂するこの五葉松は中型サイズの名品として未公開の一作です。
添えた石はまるでこの五葉松を仰ぐ様な姿の「老師」や「観音」に見立てました。 
額装の書は明治初の"御前会議の列席者のひとり「中山信天翁」"による"自在天"
(自ずから天に在り・始めから天命によってすべては動いている・など解釈は様々)。
やっぱり松柏盆栽の古木の存在感は格別ですね!

【未来の名木"四天王"】

四国「高砂庵」岩﨑大蔵先生の遺品盆栽を全品入手して、いつの間にか一年が過ぎました。

色々な人達が"色々な"思いを持って、「高砂庵コレクション」に会いに来ましたが、
当時この四点は手入れが甘く、培養状態も満点とは言えなかったので、
誰の目にも止まりませんでした。
芽すぐり、植え替え、施肥、消毒と、"当たり前の事"を一年続けた結果、
今の雄姿へと変貌したのです。
私の胴回りはあるかと思う程の幹力は、雨竹亭の他の盆栽と並べて置いてしまうと、
ほかの樹が"引き立て役"になってしまいます!
一樹ずつ個性があり、3~5年後、
彼等にどんな未来が来るのか、とても楽しみです。
盆栽の面白さは、人間と同じくしばらく見ない間に、その存在感が大きく変化する事でもあります。
言い方を変えれば、人も盆栽も一年や二年では本質は何も変わりません。
逆にその本質に気が付かなかったのです!
物事は安直に価値や判断をしてはいけない証拠です!
皆さんも「白鳥になり始めたアヒルの子達」に会いに来て下さい!

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