今から60年前、ひとりの盆栽家が個展を開きました。

会田一松翁、神奈川県にいた“細き中に宿る盆栽の精神“を後の世に示された名人です。

その一松翁が残された杜松を久しぶりに“本気“で鋏を入れました。


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出典: 『月刊 近代盆栽』 2024年3月号



スッキリと切り込めば済む事もありますが、60年前の残された姿、一松翁を尊敬する椎野宝樹園氏が大切に守ってきた姿、

そして誰もが鋏を入れるのに躊躇する程の樹。

満を持して刻をかけてゆっくりと“透かし切り“を進めました。


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「綺麗にするのではなく、この樹が持っている“貌“を失う事なく、刻の流れを樹に表現したい」

そんな想いを持って、老成してゆく樹姿を描き出す事に努めてみました。

樹は時が経つ事で、“老成した姿“になるものです。

下の方の枝は、朽ちるまで行かなくても、枝々にジン舎利を見せるようになり、樹を傷めぬ程度に無駄な繁茂を消していく。

そんな作業に没頭するように進めました。

いかにも“手入れしました“ではなく、今のこの樹が持っている雰囲気が醸し出せるように心がけました。

 

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盆栽家はどうしても、立派にしていきたがるものですが、太らせず、静かに刻の流れを顕す事は、ひと鋏入れるごとに、慎重になっていきます。

“己を出さないように“  只々樹と向き合って対話するように鋏を進める。  

若い頃は思わなかった手入れの在り方を久しぶりに体感した仕事でした。