桜を送り新緑の季節に、こんなブログを書くとは思いませんでした。
4月17日未明、京都大徳寺『芳春院盆栽庭園』から10点の盆栽が盗まれました。
出入口など、防犯にはそれなりの配慮をしてきたつもりでしたが、なんと、各寺院(塔頭)に囲まれている庭園、
南面西面を覆う、総見院(織田信長の墓所)の高い塀に脚立をかけて、70m以上の同寺院墓所を通り、
向こう側の塀を更に越えて運んだようです。
その内2点は、とても大切なものでした。

世界大会や国風展にも飾り、芳春院の和尚様もその姿を大変好まれていた樹です。
ある意味この庭園の象徴的な作品でもありました。
もうひとつは、私の弟子で、2011年の東北の大津波の際、命を落とした熊谷君の唯一の作品である真柏です。

一度私の手から離れて、縁あって買い戻した後は、“もう二度とそばから手放さない“と決めて、
この庭園に“安置“した樹です。
17日の朝、専任担当の庭園スタッフから“樹が庭にありません“との連絡に、耳を疑いました。
そこから、警察の現場検証・鑑識の調査、業界の盗難連絡網など、出来うる限りのことに尽くしました。

友人は“ここ数年続いている、海外のグループによる犯行“との見方が殆どでした。
道路にも面せず、まして日本を代表する仏教の聖地から、巨大な墓所を横切って盗み出すなど、盆栽人としては考えもつきませんでした。
過去の犯行を聞けば、数日は何処か近隣の人目につかない所に隠して、“闇の輸送便“で海外に運ぶとのこと。
悔しいことより、盗まれた樹達が、どのような環境に置かれているのか?水はどうしているのか?
まるで幼児が誘拐に遭ったような気持ちになりました。
協力してくれる各方面からの“奇跡の連絡“を只々祈るだけの私。
盆栽の道に入って、これ程に心が打ちのめされた事はありませんでした。
海外の愛好家の皆さんにもお願いしたいです。
“買わないで下さい“と。
命を宿す盆栽を愛する人達が、何よりも“心の痛み“を理解される良識ある人達である事を信じて。