私達、盆栽を生業とする者は、お得意様との長いお付き合い、自園に訪れて下さる愛好家の方々との出会いから生まれる盆栽の販売、

地域の皆さんへの奉仕の気持ちでの盆栽教室、そして、大切なお客様方からお預かりする盆栽の管理・手入。

盆栽を中心とした多種多様な仕事で成り立っています。

近年はこれにインターネット上での販売が、大きな位置を形成し始めました。

時代が移り変わり、その時代に合わせた愛好家のニーズによって、

“売れ筋“の動向が少しずつ変化するのは当然と思いますが、

昨今の「海外に需要があるか・無いか」での、樹種による価格変化の偏向には、

半世紀盆栽に携わって生活をさせて頂く身として、忸怩たるものを思っています。


例えば、松柏盆栽の王道の頂点は、揺るぎなく五葉松でした

(実生や山採り五葉松の事!大阪松、別名宮島五葉、銀八は、黒松台木での別種で人気あり)。

しかし、海外の圧倒的な需要で、“五葉松は日本と同じ気候でないと痛む“と言う点で、

黒松・真柏からすると、その評価は半減と言う現状です。


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赤松なども、本来は黒松の上位として評価されてきた種ですが、

この数年で、赤松も五葉松と同じく、繊細な管理に不安を覚える海外勢の影響で、黒松の半額にも届かない状態です。

五葉松・赤松にしか表現出来ない微妙な盆栽の美観と言うものが、プロは理解しながらも、

“明日の糧“の為に、買い支える事も出来ず、売買価格が下落する一方と言うのが現実です。

(逆に言えば、日本の愛好家の皆さんは今こそ五葉松・赤松は“買い“なのです❗️)


勿論、本来の文化的美的価値と市場評価は異なる場合はあります。

しかし、100年の刻を経て斯界の先人達が築いてきた“価値観“は、揺るぎないものとして、

私達プロは、応対する愛好家の方々に、その真実の価値というものを伝える責務があるように思います。


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盆栽のグローバル化で、経済発展著しいアジア各国の盆栽熱は、日本国内の比ではないのも事実ですが、

“黒松・真柏は元気で丈夫“  このひと言で、100年の日本の盆栽の価値基準が右往左往する事に、

やむを得ないとは言え、“昭和の盆栽人“には、忸怩たる思いを隠す事が出来ません💧

海外の方々が、日本の盆栽を高く評価して下さる事は有り難く嬉しい事ですが、

そこに生業の糧を一極集中するのではなく、併せて、国内の次代の盆栽界の事を真摯に見つめる事も、

盆栽園を営む私達は、忘れてはならないと思います。


“味のある樹・古感こそが命・作り過ぎない樹“  色々な表現はありますが、全部日本盆栽界の歴史を物語るものです。

盆栽の人口は海外勢やインターネット内を含めれば増加しています。

しかしこれは、以前のような“国風展“を頂点とする趣味家世界の構造とは違います。

現に1万人を超えていた盆栽協会員も現在は4,000人を下回っています。

盆栽業者である私達の責任もあります。

来園して下さる“いちげんさん“の若い方々に、どれ程の応対をしているだろうか?と自省する事もあります。

旧高砂庵・岩崎大蔵先生の言葉が蘇ります。

“業者は種を蒔け・挿し芽をしろ“ 

この言葉は、そのまま初心者の愛好家を丁寧に育てる事に繋がるように思います。


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海外勢の偏向評価に一喜一憂する前に、門を潜って来園されるすべて皆様に、かけるべき言葉を大切にしなければ!

“いらっしゃいませ!盆栽は初めてですか“と。

あっ!それと、五葉松、赤松、やっぱり素晴らしいものです❗️