15歳でこの道に入って48回目の国風展。
当時荘厳な大理石の建築だった東京都美術館も現代的な姿になって久しいです。
10年前より、国風展会場の2階展示室で『日本の水石展』を主催者の1人として運営する中、
前期展は上野グリーン倶楽部での“盆栽大市“の商売の合間を縫って、後期展は水石展の会場から駆け足で垣間見るような観覧(笑)。

そんな中でも年々の国風展は毎年“色“を少しずつ変えているように見えます。

今年の展覧を全体的に言えば、とても素晴らしかったと思います。
言葉を替えれば、“王道の姿“に戻ったように見えました。
昨今の国風展は、この展覧が世界的な注目を浴びる中、海外の方々でもわかりやすい“アカデミック“な盆栽が目立っていました。
大型で派手な作品は観る者を圧倒します。

しかし、なぜか?多少の違和感を感じていましたが、今回の展覧は、会場全体が引き締まった静謐感に満ちていました。
各盆栽達も古感が漂い、寸法も本来の日本の盆栽として長く伝統の中で育まれたサイズ感があり、観賞していても圧迫感を感じませんでした。

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主催の方々の労苦と努力に感謝と拍手を贈りたいです。
相変わらず、私が不得意な中品盆栽と、小品盆栽は、その丹精な培養と細やかな手入れの仕上げに頭が下がるばかりでした。

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また、後期展の国風賞の真柏には、深い感銘を覚えました。
出品された岩手県陸前高田市の菅原さんの自宅でこの樹を観たのはもう15年前です。

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まだ山採り真柏の原木状態でしたが、その頃より“この樹は将来日本の真柏盆栽の代表的な樹になる!“と確信した樹です。
弟子の加藤君と2度目に訪れた時、菅原さんの家から僅かな距離にあった、浜辺につながる見事な松林。
そこに加藤君と座ってその素晴らしさに息を呑んだものです。
それから1年後、大地震と津波によって、200年かけて創られた松林は、一瞬に消え去りました。
“あの巨大な松林が消えた!?“  すぐには信じられない出来事でしたが、現地で海産物の加工業を営む菅原さんの工場も津波に飲み込まれたと聞きました。

幸にして、ご自宅と盆栽達は、一段高い土地にあった為、難を免れたそうです。
それでも故郷全体が失われた中、平和で豊かな日常があるからこそ評価される盆栽の趣味、
色々な方々の“目“もある中での、丹精と培養の日々を送られたのだろうと、その苦労はひと言では語れないものでしょう。

ご高齢になった菅原さんに会場で久しぶりにお会いして、受賞へのお祝いをお伝えした時の、ご本人の東北人らしい朴訥な静かな笑顔が心に残りました。

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日本人は盆栽と同じく、自然と共生しながら時には厳しい試練を受けて、それでもそこから再生していきます。
私はこの真柏の国風賞受賞は、特別な想いで拝見しました。

素晴らしい樹、誇るべき日本の盆栽と人達、心から“ありがとうございます“と言いたいです。