盆栽庭園を預かって、2週間近い刻が過ぎました。
掃除・草取り・水掛け・雑木の芽出しの手入れ・来庭される方々の応対・・!
1日があっという間に過ぎてゆきます。
その中でも、ここをお預かりする時、
私なりに盆栽水石を多くの方々に伝えるひとつの仕事としての「座敷飾り」の妙を、ここで実践することです。
庭内にも「通玄庵」に床席を造り、今回は赤松の三幹と滝石を飾りました。

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文人樹形の名作として、大家、塩月翁から現代の名手、矢内信幸氏に受け継がれた樹です。
鉢も飴南蛮の名器。
このような樹こそ、鉢も贅沢に、それでいて目立たぬものを使いたいものです。
脇に雪解けの清流が飛沫となる滝石を配する事で、松柏盆栽が描き辛い季節感を出してみました。


庭園に隣接する塔頭「龍泉庵」は、大徳寺の中でも歴史深い塔頭名。


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書院に飾ったのは、桧の三幹。
飄々と揺れたつ姿が見所のこの樹は、戦前の大家によって作られた「高明山焼」

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僅かな奥行にこれだけの三幹を植え込むには、技量もさることながら、持ち込みによる根の仕上がりが必要です。
まるで明治の大家達を魅了した“飾らぬ逸樹”を見ているようです。

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掛物は、名手、長澤蘆雪の「雲月図」
横物であることが、床の間の空間を壊さずにいます。

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添えに、田中一光師の「蓮に白鷺」
十数年前、一光先生に依頼して制作していただいたもの、細い脚を含めて、この作品は、一木から掘り出されたものです。
その姿から、蓮の上に立つ「白衣観音」の化身に見立てています。


次の間には、加茂川の遠山石。


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練れた味わいは、百年を越える愛玩によるものです。

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2尺を越えるこの年代の遠山加茂川石は、とても貴重です。
掛物は、菊池容斎「雪月花」


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真黒の石に季節感は出ませんが、月にかかる散り桜の花びらが、過ぎゆく季節を謳っています。


大徳寺の中は、今日も静寂に包まれています。
ここにいると、まるで刻が止まったかのような錯覚を覚えます。
庭を守り、盆栽を守り、訪れる人達に私が出来る事を伝え、そしてこのような飾りの世界観を伝えて行けたらと願っています。