【木村先生と共に贈る言葉を2人に】
中国いにしえの都、西安。
大唐の時代、長安と称して世界最大の都市であった彼らの故郷は、私が盆栽を中国に初めて輸送成功した地、楊凌の隣。
2人はこの楊凌で私達の盆栽展示場に専門学校を出て勤めていました。
当時、5名の候補の中から、“やる気“と“真面目さ“で、日本での盆栽技術研修に彼らは選ばれました。

あれから3年、月日は早いもので故郷へ帰る日が近づきました。
後半の1年半は、私の懇願で名匠木村正彦先生の所へ、交代で技術向上の為に通わせました。
現代の日本の若者では到底続かない研修(修行と呼ぶべき厳しさ)を、
彼らは自分が日本に来た目的と言うものを見失わずに理解して必死に実技に打ち込みました。


天才と謳われた木村正彦先生にして
「帰るのは惜しい。もう2年、私の手元で腕を磨けば、中国を代表する盆栽大師に将来は必ずなれる。森前君、何とかならないか?」
と、何度も言われました。
先生の気持ちも痛いほど分かり、故郷で待つご両親に1度も帰らず研修に打ち込んだ2人を、1日でも早く、親元に返してあげたい。
この両方の気持ちの間で苦悩しました。
コロナ収束後、また日本で更に勉強をしたいと言う2人を、今回見送って、故郷と日本の盆栽界の“架け橋“になってくれる事を願っています。

新年1月2日、私の羽生の庭に木村先生がわざわざ来てくれました。
2人の頑張りにエールを送りに来てくれたのです。
“国に帰っても、木村の研修生である事を忘れないで”と、
盆栽人に1番大切な礼節ある人となり、盆栽に打ち込む日々を願ったのです。
私と先生で相談して、彼らに用意したのは、手書きの掛け軸です。

結束三年的学習回國之比
観看所有一木一草一石的自然造形感謝大自然中渺小的自己
持有放空自己 謙虚地敬仰萬物之心
不是作也不是造 而是心靈的創造
這是盆景家的生存之道
3年の勉強を終えて国へ帰る君に贈る
一木一草一石、自然を深く観て、感謝して、自己を見つめなさい
その心が盆栽家として、生きる道になるのです
私が2人に教えてあげられた事は何だろう?
もっともっと伝えたいことがたくさんあったのに。
帰った後に、彼らにどれだけの事がしてあげられるだろう。
我が子のように思う2人に。

頑張れ!盆栽を見つめて真っ直ぐに歩いて!
頑張れ!如何に生きるかを、盆栽から学んで!