【珍しい「山蔓あじさい」と水石の景趣】

空気が少しずつ潤湿となり、霧雨が降る季節となりました。
滋賀県に住する聖職者、関目六左衛門先生よりのお預かりしている稀少盆栽「山蔓あじさい」を応接室の床に飾り、深みある季節の飾りをしてみました。
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「岩がらみ」に代表される同系の盆栽は、初夏を代表する目に嬉しい盆栽ですが、
原生種である山蔓あじさいは、盆栽として保存されているものが、とても少なく、この樹も雑木盆栽の名手と称えられた故勝俣翁が自身の名で展覧した作品です。
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分け入るような深山の大樹に巻き付きながら生きるこの樹は、懸崖の姿が良く似合います。
今回は、絵ではなく、書と取り合わせてみました。
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明治の能書家として内閣大書記官・元老院議官・貴族院勅撰議員をされた天保生まれの巌谷一六翁の書です。

欲采紫芝去 蹋雲深入林
偶尓逢僲叟 並筇聴水音

※紫芝を采らんと欲して去くに
 雲を蹋(ふ)み深く林に入る
 偶尔(たまたま)仙叟に逢えば
 筇(つえ)を並べて水音を聴く

『紫芝(仙薬の霊芝)を探そうと、雲煙の中を林の奥に入る。偶然にも仙人と逢ったので、ふたり並んで杖をついて水音を聞いている』

脇の琵琶床には、この盆栽と書に記された景趣を扶ける意味で、貴船の渓谷石を取り合わせてみました。
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樹・書・石・が、三位一体となって共鳴する空気感。
“軽きものは深く見つめて飾る”先人達が残した美への求道の精神を伝えてゆきたいものです。