ソメイヨシノの桜が満開になる季節、春爛漫のうららかな風情を楽しむのが普通の皆さんですが、
盆栽業を半世紀近くしていると、この季節の風や空気を感じると、“植替えだ!”と待ち受ける仕事の量に身震いする気持ちになります。
今年はコロナウィルスと言う、経験のした事もない中、最低限のお得意様への「出仕事」以外は、庭内にいる事が多く、
毎年“ああ、この樹も植替えしたかった!”と、自分の庭の樹の植替えが出来ない事が多かった事を取り返すつもりで、
連日手入れ小屋に入ってスタッフと悪戦苦闘しています。
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切込みや針金掛けなど、ある程度の季節の融通が効くものと違い、植替えは樹種によって期間が決まっています。
それに間に合うように、“あの樹は先に、この樹は鉢を替えて”と、果てしない“行”を続ける気持ちで挑んでいます。
使う用土にしても、樹種・若い樹・老木・弱っている樹・大型・中型・小品等々、少しずつ土の配合が皆違います。
とにかく一番頭を痛めるのが「鉢合わせ」です。これでも常時1000~2000点の鉢は用意しているのですが、
それでも中々ピッタリとこないものもあり、商売で手放してしまった鉢に後悔する事もしばしば。
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でも、ウィルス災禍で気が病む日常、広い庭内で一心に盆栽と向き合って手入れに集中していると、何故か気持ちがスッキリします。
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ある時、高名な禅の老師に言われた事を思い出します。
「悟りを開くなど、誰も出来るわけではないが、座禅をすると同じように自分のなすべき事を一心不乱に集中すると、それは禅で求める境地に似たものが得られるよ。
動かぬ座禅に対して、これを“動禅”つまり何も迷うもの無く物事をし続ける事、一般社会の方々のなされる当たり前の姿は、我々禅僧が辿り着く境地に近いのだよ」
私はこんな高邁な意識には程遠いのですが、盆栽手入れに打ち込んでいる時、ほんの少しこれに似た気持ちがあるのかなと感じます。
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皆さんもご自分の大好きな事にひたすら打ち込んでみることも、今の閉塞感から脱皮出来るかも!是非試してみて下さい!
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