展覧会と言えば、盆栽の素晴らしさ・水石の神韻・をそれぞれに楽しむものが普通となっていますが、
日本の盆栽水石界は、明治の夜明けから戦後まで「座敷飾り」を主体とした“連席”による構成がほとんどでした。
ひとつの名品がみせる風趣や格調、これが続いて設える事で奏でる“もうひとつの深さ“を観者が“読み取り”
ひとつの名品がみせる風趣や格調、これが続いて設える事で奏でる“もうひとつの深さ“を観者が“読み取り”
そこに現出した自然観・精神美・を、合わせて楽しみ語り合う事を至上としました。
この考え方を現代に踏襲して次代に日本の盆栽水石趣味の真骨頂を伝え残そうと努めているのが、数寄者の同行会「玄虹会」です。
3月の初旬に開催された第12回展、名刹・京都臨済宗大徳寺派総本山の最大塔頭『芳春院』での展示で印象深かった席をご紹介します。
3月の初旬に開催された第12回展、名刹・京都臨済宗大徳寺派総本山の最大塔頭『芳春院』での展示で印象深かった席をご紹介します。
寂味の見事な真柏は、盆栽家としてプロを志す者ならば誰もが一度は現物を観たいと願う名樹「かりゆし」
糸魚川真柏の座敷飾りに合う逸樹として昭和から平成まで「本物の真柏盆栽の極み」と謳われたものです。
現在、真柏盆栽を展示に飾る場合、針金整姿を施し、舎利を磨き化粧塗りをして、水吸いもきれいにする。
現在、真柏盆栽を展示に飾る場合、針金整姿を施し、舎利を磨き化粧塗りをして、水吸いもきれいにする。
そんな事を嫌うようにこの樹は人と自然と“刻”が紡いだ姿を何よりも自然に大切にされているのです。
本来、真柏美は、人智の届かない厳しい自然観が内包されている事を第一としていますが、
近年は造形的な“綺麗さ”が重視され、本来そこに現する神韻や“畏れ”にも似た『美しさ』が忘れられがちです。
「綺麗と美しい」は、微妙に違うのです。
この真柏「かりゆし」を右に中の手は、打水を施した渓谷美をみせる八瀬巣立真黒の雅石。
この真柏「かりゆし」を右に中の手は、打水を施した渓谷美をみせる八瀬巣立真黒の雅石。
名高い旧岩崎財閥(三菱グループ)の総帥・岩崎小弥太の旧蔵石です。
合わせられた水盤は、中国清代に作られた白交趾『珠佩』の名器。
そして左には佐治川の堂々たる泰山を思わせる山形石。
これは日立製作所創業者、久原房之助翁が愛したもの。
それぞれに日本の宝と言える文物ですが、これを威を張るわけでもなく、飾りの中に溶け込むように設える・・
この“使い切る”事こそが、趣味家としての醍醐味と言えるのです。
真柏が示す自然観と命、連綿と続く景色としての渓谷、遙か向うに仰ぐ山姿。
時代が変わろうと人の在り方に変化があろうと、何も変わらない自然の有り様。
3点の美が共鳴し合って響く連席の韻。
盆栽水石の深い楽しみの参考にして頂ければと思います。
真柏が示す自然観と命、連綿と続く景色としての渓谷、遙か向うに仰ぐ山姿。
時代が変わろうと人の在り方に変化があろうと、何も変わらない自然の有り様。
3点の美が共鳴し合って響く連席の韻。
盆栽水石の深い楽しみの参考にして頂ければと思います。