雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


50年と言う盆栽水石の業の道、今までも多くの愛好家の方々の蔵品整理をして来ました。
私は、著名愛好家が天国へ逝かれても、自分から遺された盆栽や水石、その他道具類の放出をお願いした事がありません。
故人のご家族からの依頼があってこそ動くのが、プロとしての個人への敬意だと思っています。

今年も水石愛好会の頂点「一雨会」の古老が天寿を全うされました。
ご子息より連絡があったので、せめてご焼香だけと思って、新幹線に乗って、ご自宅に向かいました。

20年近くご無沙汰していたのに、ご子息が応対して下さり、合掌の刻を頂きました。

お暇しようと思った時、ご子息より“父の所有品の整理をお願いしたい“と頼まれ、
曰く、“この趣味の方々にわけてあげたい“、つまり価値に対しての欲や思いがありませんでした。

“新盆や初彼岸を済まされてから、片付けのつもりでお手伝いにスタッフと伺います“とお伝えして、
約束通り、庭に散らばる空き鉢などを含めて、貨物車2台分の積込みを4人で暗くなるまで行いました。

ひとつひとつを眺めれば、“ああ、これはあの時に求められたものだ“と、
走馬灯のように思い出してしまい、なるべく片付ける事に集中したものです。

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羽生に戻って、内容を段階的に分けてみると、総額は大変なものでした。
これを伝えると“すべて森前さんに任せます“の弁💦
故人が遺された次代へ繋ぐ秀品達。
少しでもご子息に喜んで頂こうと思っています。

その中に、高村光雲の鋳銀の小さな観音像がありました。

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私は、お世話になった方が亡くなると、必ず日頃使われていた鋏などを頂き、庭の観音堂へ納めるようにしています。
許可を頂いて、鋏とこの観音像を納めて“キチンと扱わせて頂きます“と手を合わせました。

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若い頃から商売をして来た私。
どれだけの大家達の後整理をした事でしょう💦

岩崎会長・小泉先生・横山先生・数えればキリがありません。
プロとしてどのようにご家族にして差し上げるべきか?
いつも自問自答しながら取り扱うよう心がけています。

天国に逝った方々に笑われないように、“森前らしいな“と笑って言われるように❗️


水石協会の理事仲間として交流深い、中川さんが主宰する、越後の水石展「楓石展」に行って来ました。

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会場は、銘酒“久保田“で有名な朝日酒造が所有している同家主人の旧宅「松籟閣」❗️
国の重要文化財指定となっている名建築です❗️

昭和初期に造られた、当時の最先端の“和洋折衷“の匠の技が込められた邸宅は、
その建築を拝見するだけでため息が出るほどです。

しかし、中川さんとその友人達がこの中で繰り広げる水石文化の“三昧“は、この文化財と見事に共鳴するレベルの高さでした‼️

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毎年拝見に伺っていますが、やっぱり水石は、展示会場というよりも、
このような落ち着いた木造建築の座敷でその本領が輝くように思います。

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日本の建築文化の素晴らしさも、先達が紡いで来てくれた、“文化の香り高い水石世界“  も、
次代にその感覚を残して行きたいものだと、振り返っても感じ入る展覧でした。

【芳春院盆栽庭園・秋の入替、庭園観音開堂‼️】

彼岸も過ぎて、大徳寺の庭園も秋の入替となりました❗️

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姫林檎の貴賓種“紅姫“や、国風展出品の赤松大樹に同じく杜松の名樹、
盆栽観賞の佳き季節を迎える中、日除けの為にひとつずつ掛けていた、“夏帽子“の寒冷紗も取り外して、スッキリとした“庭構え“になりました。

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通玄庵の床の間には、“十三夜“に因んでの糸すすき。
扁額に篆刻されているのは、この庭園に隣接する「如意庵」大徳寺の名僧、立花大亀老師による“閑雲“。
脇には野仏とも取れる丸い瀬田川石。
席全体を糸すすきに合わせて、真行草の“草“の設え!

そして、数日前に、芳春院和尚様と副住職の宗俊師によって、開園よりの念願であった、
“盆栽庭園の守り本尊“ 如意輪観音様が鎮座開眼されました❗️

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約300年前の、お貌の慈悲深い観音様。
ここから庭園の盆栽達を守って頂く仏様です❗️

東の比叡山を仰ぐ形で座すお姿、生きとし生けるものの苦悩や煩悩を掬い取って下さる仏様に
盆栽はもとより、私達“煩悩のかたまり💦“も、救って頂ければと😅願っています❗️


毎年2月、東京都美術館で開催される『日本水石名品展』も来春で62回。
先日、都内「春花園盆栽美術館」で、その出品選考審査会が行われました。

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海外を含めて、全国より集った賓石の数々❗️
その数百数十点‼️

協会役員による審査を経て、単体の撮影、夜までかけての床の間飾りの撮影💦

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開催時に完成させておく、図録制作を間に合わせるには、この時期に撮影を済ませなければなりません。
伝来名石から、出品者が過去に探石(山河で自採した石)まで、幅広い水石が一堂に陳列される一大イベントです。
“水石の文化を未来に伝えたい“   そんな事を願って、美術館開催と言う“開かずの扉“を開けてから、もう12年❗️

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今は“この流れをどうやって次の水石界を担う人達に受け継いでもらうか?“が、私の命題です。
盆栽と違って、“蔵深くに眠れる“水石達。
毎回“こんな石があったんだ“と、目を見張る石が出てきます。 
ここから写真校正、ページ割り、そして各石の解説💧
石は何も語りませんが、こっちは目が回る💦日々が続きます❗️


40歳で初渡米して、8度の講演、25年の歳月が、親しい友人の何人かを偲ぶものになりました💧

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ニューヨークからペンシルバニアへ、水石の友として十数年ぶりの再会を果たしたショーンスミス!
新しいアトリエで、旧交を楽しむ時、五大湖付近、ロチェスターのビルは、10代の頃よりの仲!

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ワシントン国立植物園には、天国へ逝ったロンの水石を寄贈、
25年前、初めての講演で慣れない私の通訳をお願いした、ヒデコ・メタクサスさんは、93歳‼️

アメリカ横断の友人達を訪ねる旅は、人の温かさを感じるものでした。
イギリスから通訳兼案内役をしてくれた、ピーターウォーレン氏にも感謝です❗️

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久しぶりのアメリカ、やっぱり大きな国です。西と東で時差3時間❗️
これからも、国は何処であれ、私ができる事を伝えていきたいと思います。

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