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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


大好きな富士桜の枝垂れ性が、今年も美しい花を咲かせてくれました❗️

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咲き初めは白っぽく、満開が過ぎる頃には、淡い薄紅色へと、品の良い色合いが格別のものです❗️
枝垂れ桜に“おぼろ月“の掛物、“春はおぼろ“
千年も昔の古人の美意識は今も盆栽美に通じています。

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隣に鞍馬石の薄溜まり石を陶翠の名器水盤に合わせてみました。
朧月をその水鏡に映すような景色。
桜~朧月~鞍馬薄溜まり石 三位一体の席が出来ました。


千百年前、平安時代の「古今和歌集」にこのような歌があります。
“久方の光のどけき春の日に 静心無く花の散るらむ”
三十六歌仙のひとり、紀友則が詠んだ歌です。

その後、平安後期から鎌倉初期に活躍した西行法師の歌はあまりにも有名です。
“願はくは花の下にて春死なむ そのきさらぎの望月のころ“
旧暦の如月は今の3月、望月(満月)となれば、3月15日前後。
西行法師は、この歌のようにまさに“如月の望月の頃“ その生涯を終えました。

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私達日本人にとって、桜は野山にある樹々や花の中でも特別な思いがあるものです。
海外では“満開の美しい花々“としての桜が愛でられますが、
日本人はその満開の花が、風に誘われて、“はらはらと散りゆく様“に、
命の昇華、つまり“散華“の世界を感じたと言われます。
日本という国がどれほど自然の中で共生した感受性を宿して来たか、桜への心はいつまでも失くしたくないものですね。



1年ぶりに台湾へ森山義彦氏と出かけました。

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長年のお付き合いのある愛好家の棚の手入れ、特に昨年の巨大台風の数回にわたる直撃で、
風害、塩害があり、手入れ、舎利磨き、植替えなど、僅か2日間を2人で頑張りました💦

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一度出かければ、航空券や宿泊費など、お客様にかかる費用は日本国内に比べて2~2.5倍!
なるべく回数を減らして、とは思うのですが、ご本人は“来てさえ来れれば嬉しい“と仰られ、お気持ちに応えられるよう、朝から晩まで!
帰りには体がバキバキ💦年ですね~😅

併せて同じく台湾の盆栽園「台北景峰園」の詹さんの所にも、数年ぶりに伺いました。

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息子さん登傑さんに店を任せて、“半隠居“と聞いていましたが(私よりふたつ上の68才)
まだまだ熱心な作品作りを奥様となさっていました。

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日本の真柏素材が枯渇する中、“台湾の真柏が逆に運べないだろうか“  こんな話を詹さんと相談して、
来年は様々な検疫や許可を通して、実践してみよう!となりました。

年を重ねて、苗木から盆栽を作り、大型真柏を作る!
羨ましい限りです❗️


彼岸を迎える頃、もう“桜の飾り“に心が動く時ですが、先日、梅の咲き分け種“思いのまま“を手に入れました。

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極太の樹!
何年か作ってそれらしい作品にしてみたいと、いつものように、悪い病気がムラムラと起きてきました‼️

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若い頃は、思いのままなんて園芸種で、野梅などから一段低いと勝手に思っていましたが、
宮島(大阪松)や、今では当たり前になった、“枝接ぎの真柏“のように、
時代で世の中の盆栽に対する価値観も変わっていくものです。
思いのままも、今では作出する人もなくなり、貴重な太幹となって来ました。

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朧の月の掛軸、そして脇床には、揖斐川の古石。
とても古い持込みの石で、石肌の古感はえもしれぬ程です。
これを名器“峯雲地紋楕円“の水盤に合わせて、水打ち!

やっぱりこの季節になると、水を得た水石は良いものですね❗️
さあ!この梅が終わる頃には、桜❗️
そして追いかけてくる“植替え“の嵐🌀💦大変です❗️


毎月2回の盆栽教室、3月は生徒さん達も、自身の盆栽の手入れと植え替えで、
皆さん1~2本はその日に仕上げたくて、朝から作業に忙しい教室です。

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加えて、教室の「生徒作品展」を5月に開催する事になり、
さて!その展示に使う盆栽の手入れと植替えに、躍起になっています(笑)

そしてこの日は、“あの樹は枯れたのでは?“と噂された、旧高木美術館蔵の名樹「稲取」を
来年の100回記念に出品すべく、森山義彦先生の協力を得て、仕上げ整姿と植替えをしました❗️

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高木美術館の記念帖の写真から35年! 
刻は人と同じく樹の姿を変えるものです。

3月28日の盆栽協会による「貴重盆栽登録会」に応募すべく、
現在の稲取の良さを少しでも引き出せればと、これも高木美術館が旧蔵されていた、紫泥の大古鏡盆器に納めてみました❗️

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衣装が変わるとホントに姿も雰囲気も変わるものです‼️
こうしてお日様の下で、盆栽達と過ごせる時間、たとえ疲れていても、こんなに佳き疲れはないものです❗️
有り難い1日でした‼️


今年の大雪は、この数年雪の少なかった新潟県長岡市でも、久しぶりに“雪除けの軒塀作り“を見る事になりました。
水石協会、組合でお付き合いの深い古老先輩、中川さんの所です。

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庭の盆栽は勿論雪除けで軒下に!
加えて大雪が軒に入らないように、仮塀は雪の量に合わせて少しずつ高くなっていく💦
私達関東人には実感のない冬の苦労を間近に感じました❗️

そんな中でも、中川さんは変わらず“水石三昧“の日々を過ごされているのが、歓談する部屋に感じられました!

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煎茶を長く研究される中川さんは、その見識を活かし加えた水石美を捉えられています。
いつ伺っても、そこここに目を惹く石達!

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時の経つのを忘れて、玄虹会展の飾りの話題、水石界の現状、話は尽きません‼️
あっという間の時間!
いけない!帰り道の関越トンネル迄の、豪雪地帯(魚沼・六日町・越後湯沢)、数メートルの雪だったのを思い出しました💦

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