雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


水石協会副理事長として交流の深い、長岡の中川さんが肝入りをされる

“越佐水石同人会“が主催する「楓石展」に今年も見学に伺いました!


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銘酒「久保田」の蔵元、朝日山酒造が所有される国指定重要文化財“松籟閣“は、

朝日山酒造の創業者平澤與之助が、昭和9年に主屋として造った建築です。

和洋折衷の匠の技が随所に散りばめられた今では再現不可能な建物。

この座敷を使っての本展は、水石のみならず、

この建築と水石の融合を観る機会としても楽しいものです。


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八海山石を主人公とする地元、今回も逸品石の数々が各室を彩っていました。

こんな素晴らしい定例会場がある事、羨ましい限りです。


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中川さんに相談して、いつかここで盆栽と水石の数奇者が集うまた別の展覧をしてみたいと思います。


今年の“中秋の名月“は10月6日と遅く💦

何となく秋めいてきた空気の中、床飾りだけでも名月の飾りをしてみました。

ススキの穂もまだ上がらぬ中なので、最近手に入れた名月の掛軸を使って、

どこか“秋風“を感じる席を創ってみました!


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長谷川玉純の「名月図」澄み切った天空に浮かぶ名月、

煌々とした雰囲気が良く出ている掛軸として気に入りました!


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脇床に五葉松根連りの石付。

右方から吹く風が木立を左になびかせている風情が良く表現されています。


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左本床には瀬田川の梨地石、梨地の銀色の光が、月明かりを受けた山影を感じさせてくれます。

猛暑が続いた今年、まだまだ“秋“は来ませんが、気持だけは“天高く肥ゆる秋“を感じたいですね❗️


50年以上この道にいると、様々な思いが巡ってきます。

若い頃“盆栽とはどんなものが一番なのか“とか、“どうやったらその盆栽が作れるのか“など、

でこぼこ道の盆栽人生の中で、道に迷うことしばしばといったところでした。

今もそれは同じですが、最近思う事があります。

近年の盆栽界は、どちらかと言えば、“綺麗“な盆栽が主流になっているようです。

管理も手入れの技術も私が修行に入った頃とは雲泥の差と言える進歩!

見事な手入れを施した樹が展覧会に多く出品されています。

勿論世界に広がった盆栽、それでも海外の方々が日本の盆栽を高く評価して下さるのは、

この管理と手入れの技術的高さによるところが大きいと思います。

でもふと振り返る事も多くあります。

50年前、まだ小僧だった私は、諸先輩に国風展などの最高レベルの展覧の目に見えない“大切なもの“を教えてもらったように記憶しています。


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※出典:昭和14年刊『盆栽大観・天の巻』


まず、最高の舞台へと盆栽を仕上げるには、「極力針金施術はない方が良い」という事です。

盆栽は長い年月をかけて“持ち込んだ樹が良い“、

また、「展覧会の為に急ごしらえで名鉢に入れるのは真の愛好家ではない」とも言われました。

現在では当然の姿となっている、真柏などの枝接ぎによる糸魚川真柏の葉性の良いものへの“衣替え“も、

“枝接ぎものは良くない“と言う風潮もありました。


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※出典:昭和14年刊『盆栽大観・天の巻』


また、今は「大阪松」とも呼ばれる宮島性の五葉松なども、“黒松に台接ぎしたもので、真の五葉松盆栽には一段下がる“と言った考えもありました。

こんな事を挙げると、現代の盆栽の価値観と半世紀前では、まさに“様変わり“といった感すらあります。

技術的な進歩がその裏付けになっている事も確かですが、盆栽に求められる“美に対する価値観“が変化したのかなとも思います。

小品盆栽が、手のひらに載る“ひと枝の古感“から、大型盆栽の樹相を求めるようになったように、

一般の盆栽サイズのものも、海外との交流が多繁になる今、誰にでも分かりやすいものへと変化したように思います。

多様化する盆栽の姿、どれが良いとか、何が正しいという定義はないと思いますが、

先人達が伝えてきた“審美“の盆栽観と言うものは時代が変わっても大切にしていきたいものです。

【秋風待ち遠しい 大徳寺盆栽庭園】


秋の彼岸を迎える中、ようやく盆栽の日除け“掛小屋“の設備を外せる頃になりました。

羽生と変わらぬ京都の夏は、今年は38~40度の猛暑が襲いましたが、

お陰で“仏様“に守られた庭は、樹の痛みもなく無事に秋を迎えそうです❗️


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彼岸前には小屋を外し、リンゴや柿など、秋めいた樹を少し足して、

いよいよ盆栽庭園に訪れる世界の方々に、春に並ぶ日本の素晴らしい季節を満喫しながら盆栽を鑑賞して頂く時になります。

庭園が倍増となる拡張工事もまもなく始まります❗️

増設部分には、ご住職の意向で、私がお客様と歓談したり、ご紹介する盆栽を並べる場所も出来るようです‼️

となると⁉️私は月に10日くらい、大徳寺に常駐する日々が始まりそうです💦


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“禅林の盆栽庭園を守る“  それが私のここでの努め!

気負うことなく、時の流れに任せて精進したいと思います。


1年ぶりに中国へ行き、盆栽鉢の最高峰、江蘇省宜興県は、清朝より400年を超える陶芸の故郷❗️

ここで作られた“紫砂“を原材料とする盆器は、名器“烏泥“に始まり、

泥物鉢の名品の数多くを日本にもたらしてくれました。

残念ながら、現在の社会体制の後は、工場生産の汎用品ばかりが渡来するようになり、

“今の中国の新渡鉢は質が悪い“と言う評判が日本盆栽界の通評となってしまいました。

私が17歳の頃、師匠やその友人達(当時の日本盆栽界の中堅群)が、海を渡り、

“本来の名器の再現“に挑んだ事がありました。

あの時の陶土と“焼き“は本物でした!


15年前より、この地を度々訪れて、当時の陶土を今も混じり気なく使用して、

“古渡盆器“の形姿を頑なに守っている窯場と出会いました。


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来春より、約300種に及ぶこの宜興賓作を通信販売で全国の方々にご紹介する為、

今回スタッフを伴い、約2,000万円の発注をまとめる為にこの地に来ました。


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“本物の土を使い、本物の焼成を行う“  私が生きている時は間に合わなくても、30~50年後、

未来の日本盆栽界で、現在の“中渡り“のような国風展などに使う鉢となってくれる事を願っています。

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