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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


「京都国際文化振興財団」、通称『慶雲庵』の次回企画展示について、長野県小布施にある鈴木伸二氏のアトリエに伺いました。

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盆栽作家として“次代の頂点“と喧伝される彼。
お互い同じような年齢ですが、もう30年以上のおつき合いになります。

作家としての数々の受賞歴を持つ彼は、つい先ごろ、業界つまりプロの団体の役職をみずから退任するという決断をされました。
“将来の理事長候補“とまで目されていた彼は、
“森前さん、私は幾つもの事をやるタイプではありません。
小僧に入った頃と同じく、盆栽を見つめて盆栽を創る事、そして今この年になると、
若い盆栽を本当に愛する者達に私が描いてきた色々な事を技術を含めて寄り添いながら伝えていくことが一番楽しいんです“と。

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久しぶりに観る彼の庭、彼のアトリエは、盆栽と共に生きていきたいと言う彼の姿そのまま!
例えようのない名木群でした❗️

同じ盆栽家の道を歩まれる2人の息子さん、そして世界から“鈴木の下で学びたい“と言うお弟子さん達。
聞けばここからこの小布施を舞台に新たな展示庭園を地域の行政と協力して“町興し“のひとつとして始まるらしいです!

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振り返れば、意見が合わず、よく喧嘩もしたし、慶雲庵財団を支える立場は違っても、
盆栽とその文化をもっと広げて守らないと!という気持ちで繋がって来たように思います。

新たな道を拓く彼、不思議なもので、私も今年はお預かりしている大徳寺芳春院盆栽庭園が、現在の2倍の規模になる工事開始となります。
来年には室内展示設備や、様々なワークショップが出来る庭園へと変貌します。
個性も違う2人、だからこそ30年以上もこうしてお互いを意識して高めて来たのかもしれません。

さて、ここからどんな“幕“が開くのでしょうか❗️
それにしても、彼の盆栽の管理能力には頭が下がります💦


4日間で3万人近い来場者数を数えた大阪EXPOの盆栽水石展。
老若男女、若いカップルから小学生たちまで、初めてホンモノの盆栽を観て感嘆の声を挙げる方々。

振り返ればこの展覧に関われた事を誇りに思います。

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盆栽界の展示会と言えば、国風展や大観展。
見事な最高レベルの展覧ですが、唯一足らないのが、“一般の人達への目線作り“で作られていない
“マニア“やキツく言えば“オタク“界のイベントになっている事です。

修行に入って間もない頃、先輩達に言われました。
当時の1970年万博の事です。

“押すな押すなの人!人!人❗️ここから一般社会の盆栽の認知と趣味が広がった“と。
“盆栽ってすごいなぁ“
子供達の素直な声が響いた会場。
考えれば、国風展・大観展、共に“有料入場“、つまり“お金を払ってくれる人が見られる“仕組み。

盆栽に興味を持って欲しいと願うと言いながら、子供のお小遣いでは入れない展覧。
英国で盆栽の展示を政府からの依頼で半年間 “ダーウィン自然博物館“ でお手伝いした時、
その博物館は勿論のこと、近くにある有名な“大英博物館“も、入場は無料でした❗️

何世紀か前の国王の言葉が寄付を入れる大きな筒に刻まれていました。
“富める者は未来の子達のために、貧しき者はこの手を引いて“と。

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盆栽や水石がどれほど人々に感動と癒しを与えるかは歴然としています。
私達は、次の時代への良き“土壌作り“の為にも、もっと展覧会の在り方を見直すべきかもしれません。


羽生のオークションにも遠く三重県より毎回参加してくれる盆栽家、武部さんの所に初めて伺いました❗️
“山是山“と言うべき、大和の山々が連なる信楽から甲賀地方。

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大阪から家族でこの地に移住して、盆栽園を構えた武部さんは私よりひと回りも若い方!
豪農の屋敷を買取り、そこからひとりでコツコツ広げた盆栽園❗️
未完ではありましたが、大型名木から手頃な盆栽まで、人柄と同じく、分け隔てないラインアップ❗️

そして普段業界でのお付き合いでは分からなかった、武部さんの“夢“の一端も拝見しました。

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道を挟んだ倉庫を改造した“アトリエ“‼️
まるで東京の青山や代官山などにいるような錯覚を覚えるくらいの空間の造り!
“予算なくてまだ完成には程遠いです“と限りない自分の夢を形にしている武部さん。

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ひとりひとり、盆栽に生かされている私達は、その胸に秘めた想いは異なりますが、
“こんな風にしてみたい“と、この道に生きた“証“を自分の世界で描いてみたいものです。
ガンバレ!武部さん‼️


5/19より、万博会場EXPOメッセ「WASSE」にて、盆栽水石展が開幕されました。

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私共エスキューブも、自身のブース・芳春院盆栽庭園ブース、
そして慶雲庵財団の正面メインステージに飾った「将軍の松」を羽生から運び、
企画展示としての3席、水石組合の20席、搬入だけでもトラック含めて、計3台の車輌💦

それでも、きっと生きている間の最後の万博、出来るだけの準備をお手伝いしました❗️

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もしかすると、大型売店を出店しないで、業界の文化活動として参加する最大規模のものかもしれません❗️
来場される方々、何と初日だけで1万人に迫る人数‼️
1970年、あの万博で多くの盆栽愛好家が誕生した記憶が蘇ります💧
多くの国風賞クラスの名木、55年前に万博を彩った盆栽の更に老成した姿、
何より初めてホンモノの盆栽をご覧になった方々の感嘆の姿が嬉しかったです‼️


5/19~5/22に開催されている大阪EXPO盆栽水石展に展示される名木達の手入れを完了しました❗️

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五葉松名樹「天帝の松」そして、日本盆栽作風展で内閣総理大臣賞を受賞した真柏。
木村先生の門弟として、この真柏の作者でもある森山義彦さんと、
私共エスキューブのスタッフで、毎週木村先生の所で、技術研修をさせて頂いている近藤瑞希君。

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福島の舩山邸から運び、2日間かけての作業💦
大きくて手入れ室に入らず💦
外の屋根下で名樹の“仕上げ仕事“‼️

数年間、何処にも飾らず、福島の風の下で、ゆっくりとしたせいか?
樹はとても生育の良い状態です❗️
繁茂した枝々を“透かし技“で空間を作り、葉先が美しく揃うように仕上げるのは、
簡単そうに見えて難しく、さすが木村一門ならではの手入れが進みました。

下がり過ぎた効き枝のバランスをそろえて、万博に飾る姿が完了しました。

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14年前、四国高松市で開かれた、「アジア太平洋盆栽大会in高松」で初公開され、
1億円の価格が表示された巨大五葉松!
後に京都「日本盆栽大観展」で、栄えある内閣総理大臣賞を受賞したこの樹は、
ずっと福島“吾妻山“麓で、静かな刻を過ごしていました。

四国で公開され、京都で冠を獲り、そして今回万博に展示される・・・。
この樹が背負った名樹の道を表しているようにも思います。
世界の方々が、どのように観てくれるでしょうか?楽しみです‼️

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