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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


1年前、台湾での真柏素材視察の旅の際、親交深い友人である盆栽園主、詹(せん)さんと

両国の盆栽の発展を願って、台湾真柏の日本への正規輸送を計画しました。

満を持して今春3月上旬に台湾での根洗い、植物検疫後、日本に到着した7点を、

江波戸共種園さんの協力を得ての通関と検疫、そして羽生に着きました。


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鉢内の用土の一切を取り除いた状態が原則の検疫💦盆栽達には過酷な旅💧

寸暇を惜しんでの植え付け作業を行いました。


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植え付け後の管理が重要な根洗い輸送、“台湾真柏の輸送は、日本の環境に合わない“と言う風潮がある日本盆栽界。

私は“時期と環境“の精度が解決の決め手と長く思っていました。

台湾は2月と3月では気温が大きく変化します。

最低気温が8~10度の台湾、日本側が慣れている輸送期2月中旬迄では、到着した時の日本での温度差が大きすぎます。

かと言って3月中旬になれば、送り出す台湾は時には30度になってしまう日もあり、

到着した際日本はまだ気温低く、この温度差が原因に大きく影響していると思いました。

素早い植え付け後、土間のハウスに取り込み、ここから約2~3週間、温度と湿度に気を付けて樹の生命力を祈る日々が続きます。


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盆栽の社会的広がりが進みながらも、国内の素材が枯渇している日本。

“糸魚川真柏“を第一とする盆栽界。

私がこの道に入った50年前は、“枝接ぎや大阪松は国風展などへの盆栽とは言えない“と言う風潮すら言われた頃もありましたが、

今では真柏名木の過半数が枝接ぎ、大阪松の評価も天然五葉松に比肩する扱いです。

盆栽を愛する各国が手を取り合って素材と技術、そして何よりも

其々の国が育んだ文化の中にある盆栽を、双方に尊重しあい、次代の盆栽界が真の国際化になる事を願っています。

第一歩の“逆輸入!

4月には羽生の外の空気の棚に並ぶこの樹達を心から祈る日になりました。


今から60年前、ひとりの盆栽家が個展を開きました。

会田一松翁、神奈川県にいた“細き中に宿る盆栽の精神“を後の世に示された名人です。

その一松翁が残された杜松を久しぶりに“本気“で鋏を入れました。


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出典: 『月刊 近代盆栽』 2024年3月号



スッキリと切り込めば済む事もありますが、60年前の残された姿、一松翁を尊敬する椎野宝樹園氏が大切に守ってきた姿、

そして誰もが鋏を入れるのに躊躇する程の樹。

満を持して刻をかけてゆっくりと“透かし切り“を進めました。


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「綺麗にするのではなく、この樹が持っている“貌“を失う事なく、刻の流れを樹に表現したい」

そんな想いを持って、老成してゆく樹姿を描き出す事に努めてみました。

樹は時が経つ事で、“老成した姿“になるものです。

下の方の枝は、朽ちるまで行かなくても、枝々にジン舎利を見せるようになり、樹を傷めぬ程度に無駄な繁茂を消していく。

そんな作業に没頭するように進めました。

いかにも“手入れしました“ではなく、今のこの樹が持っている雰囲気が醸し出せるように心がけました。

 

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盆栽家はどうしても、立派にしていきたがるものですが、太らせず、静かに刻の流れを顕す事は、ひと鋏入れるごとに、慎重になっていきます。

“己を出さないように“  只々樹と向き合って対話するように鋏を進める。  

若い頃は思わなかった手入れの在り方を久しぶりに体感した仕事でした。

【芳春院盆栽庭園第二次工事❗️完成まであと2ヶ月‼️】


開園五年の春、大徳寺芳春院盆栽庭園は、多くの拝観者を迎えるようになりました。

万感の思いを込めてお手伝いを始めてもう五年の時が経ったのかと、時の流れを感じる今ですが、

昨年の今頃、“奥の家借などを壊して、庭を更に倍増しよう“と言う和尚様の発案から、

この庭は更に大きく全長25mを超える収蔵庫を含めた巨大庭園がまもなくその全貌を完成させる時が近づきました❗️


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既存の庭園から続く庭、見上げるような多宝塔も設置されて、いよいよ庭方棟梁と盆栽の石柱の設置が始まります。

完成の状態を棟梁と想定して各石柱の位置や高さを微妙な配置に留意しながら進める予定です。

羽生の方でも、既にここに展示する左右180センチを超える大型五葉松の根連り! 

日本一と言われる黒松の名樹、そして白神山地そのままのような6人でなければ動かないブナの巨大な株立ち盆栽。


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勿論、その中で静かな本物の数多くの盆栽達も、新たな“家族“として加わります。

2倍以上の規模の庭園をどのように維持していくものか?暗中模索の部分もありますが、

ここは禅寺、仏の御心に導かれて自然体で寄り添って行こうと思っています。


昨年募集した“森前の弟子希望“で、多くの応募者の中から合格したスペインの若者が、国風展に合わせて、練習的訪日をしました。

特別な事をするのではなく、盆栽園として普段通りの当たり前の毎日を送りながら、

日本の盆栽文化とプロとしての仕事の内容と在り方を体験してもらっています。


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昨年一度、“これが日本の盆栽園の現実“を体験してもらった上での来日なので、

今回は朝から晩まで共に過ごしてみてもらっています。

先日、“自分で樹造りをしてごらん“として、国風展で目の回る忙しさの中、

羽生でまだ素材の段階の大阪松を整姿施術をしてもらってみました!

上野から戻ると“師匠、出来ました“と、4本預けた中からの1本を仕上げていました。


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勿論修正点などもありますが、母国では素材がなく、この大きさの樹をやった事がないと言いながらも、70点の評価‼️ 

処女作で70点は彼がどれだけ盆栽に対して熱意を持って見つめてきたかを物語っています。

さて、どこまで出来るか⁉️

 国が違えば何よりも壁となるのが、その国なら当然の日常が、まるで違う世界もあり、

それを受け入れながらすべてを身に付けていく努力が何よりも大切です。

預かる立場の責任の重さ、そして真摯に盆栽と向き合う若者に対する“息子“を見ているような自分。

あと数年で70歳の中、人を育てて遺す事が、何よりも大切に思えるこの頃です。


下階の国風盆栽展が百回となる記念の年、開催初日から特に欧米からの来場者で、昨年の5割を超える連日の来場❗️


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今年は水石展も普段に増して、展示の内容に趣向を加えました。

寺内家にお願いしての、歴史的名石15石の企画展示、

小品石の愛好家として慧眼深い小林公一様による「茶席風水石飾り」の特別設え席など、

水石の深さや魅力をより広くお伝えする為の構成をしました。


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展示会そのもの自体、来場者の皆様に好評を頂き、特に海外の皆さんの水石に対する熱心さが年々高まることに驚きを覚える程でした。

“河原にあった石を美術館に?“と、当初この展覧そのものに疑問を投げかけられていたあの頃が、遠い昔の出来事のようです。


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50年以上、諸先輩達が願っていた、“文化としての水石“と言う世界の僅かでも、この展覧が役に立っているように思います。

“本家“日本の水石界や水石文化が、どれほど深いものか?

私達運営側がしっかりと構えないといけないほど、海外の水石熱は、追いかけてきます。

アメリカばかり行っていた水石講演、今年からは欧州にも行ってみようと思っています❗️

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