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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


日本で最も有名な観光地、京都で毎年開催される大盆栽展「日本盆栽大観展」も今年で45回となりました。

開催が始まった当時、21歳の私も若きスタッフとして、水掛けや写真撮影に駆り出された事が昨日のように思い出されます。

主役展示となる、財団法人「慶雲庵」の企画・構成のすべてを担当する立場になるとは夢にも思いませんでした。

来場される方々も、今では世界各国からとなり、今年も過去最高の観覧者数となったようです。


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来春100年目の開催となる東京都美術館での「国風盆栽展」とは趣向を変えた大観展。

私の師匠達が半世紀前、“もっと自由な展覧会を西日本で“という願いで、旧態の盆栽界と苦労の折衝の末に成し得た展覧です。

現在の大観展は、内閣総理大臣賞をはじめ、盆栽の各部門別の審査が行われます。

一次選考は業界役員と得票点で、部門別3点が選出されます。

その後、特別審査委員として、業界各団体の長の方々、そこに文化人数名、海外審査員数名という構成で、選ばれた3点から最優秀が選出されます。

その中で、“すべての作品から最高の樹“をまず選出しますが、今回ほどその選考に苦労した過去がないほど激戦だったそうです。


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結局選ばれた内閣総理大臣賞の真柏は過去に“国風賞“を受賞した名樹、僅かの差で文部科学大臣賞となったのも真柏でした。

私などから見れば、どちらが大賞となっても甲乙付け難いものだったかと思います。

個人的な見解ですが、愛好家の大切な樹に優劣を付けるということは、とても難しく、

いずれ私もこの最終審査員となる時、本音で言えば辞退したいくらいです。

盆栽はひとつずつその個性が違います。

見方を替えれば、皆素晴らしく、賞というものに対して、受賞を競い合うような姿は、

この大観展を開いた先輩達も望んではいなかったと思います。


審査結果というものは、誰もが悲喜交々になるものですが、その中で記憶に残る事がありました。

文部科学大臣賞を受賞された樹の担当者であるプロの陳建星氏です。

当然この真柏も最高位を願って出品されたでしょう。

勿論審査は時の運、何よりも感動したのは、その後の彼の態度です。

売店で多くの日本のプロ友人達に“残念だったね“と声をかけられると、“ありがとう“と微笑みを湛えながらの応対!

心の中では悔しさが溢れているでしょうに、それを一切出さずに、この展覧を祝うように静かに紳士的に皆んなと言葉を交わす姿は、

本来日本人が何よりも大切にした“人としての品位“を感じる素晴らしいものでした❗️


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“盆栽を愛する者は、その盆栽に相応しい品格ある人間である事!“と言われています。

今回は中国の友人にその大切さをあらためて教えてもらった気がします。

この樹は、近い将来、真柏盆栽の頂点まで辿り着くでしょう。

その時は陳さんと祝杯を重ねたいと思います。

【大徳寺芳春院盆栽庭園・第二次拡張工事❗️】


開園5年の時を迎える芳春院盆栽庭園、2年をかけた庭園の拡張工事が、

建物の確認申請を終えて、急ピッチで建て方が進んでいます。


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開園時を襲ったコロナ禍、1日数人の拝観者という日もあった庭園は、今は連日の賑わい❗️

まさに昔日の想いです。

美しい紅葉を楽しませてくれる盆栽達の庭園の奥では、出入り方の棟梁達によって、

いよいよ展示場の規模が見えるようになりました。

とにかく大きい‼️


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古来工法で作られてゆく木造建築、南北27m❗️

来春3月には建築も完了して、約400坪の作庭に入ります。

ここにも大型名盆栽がまた“仲間“に多く加わります。

建築の中には、ワークショップや、共に盆栽文化を広める協力を頂く、財団法人「京都国際文化振興財団」通称“慶雲庵“から、

宝物と言える名鉢・名水石などが、常設展示される予定です。

2倍以上に大きくなる芳春院盆栽庭園、主管として庭園の運営に携わる、私の責務も重いものがありますが、

無理をせず、禅の教えのように、“ただひたすらに黙々と“ 出来る事をお手伝いさせて頂いていこうと思っています。

来年、遅くても5月には、新たなステージを加えた盆栽庭園をご覧頂けると思います。

しかし、大工の棟梁達の仕事、そばで見ていても、すごいです‼️


45回目となった日本盆栽大観展も美しい京都の紅葉と共に閉幕しました。

来場者も昨年に増して多く、訪れて下さった方々にも好天に恵まれた良き展覧会だったと思います。


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展示内容も年々のレベルの高さは、盆栽界全体のこの展覧会に対する意識と意欲の表れ!

私も慶雲庵財団の大型ブースの企画・構成・展示、お世話になる“御三家“とされる、舩山・本出・寺内各氏の特別企画展示💦 

毎年の事ですが、企画構成の段階から、知恵熱が出る想いで取り掛かりました。


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財団は今年が100年となる“昭和“にちなんで、“昭和百年の軌跡“  として、

様々な斯界を彩った貴重な盆器や資料、何よりも、初公開となる“広島被爆の松“を展示しました。


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世界が紛争などで、混沌とする中、盆栽に一杯の水をあげる事を忘れずに苦難の時を乗り越えた先人達への感謝、

“生きる“という何よりも代え難い命題を感じさせてくれる盆栽達。


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御三家は、王道の舩山さん、“平安のみやび“を源氏物語54帖を中心に飾られた本出先生、

10年前、仲間の皆さんと旅したシルクロード“敦煌“への想い出を水石で表した寺内先生。

普段の盆栽展の展示も楽しいものですが、テーマを決めたこんな展示も、大観展ならではかと思います。


売店の方も、仲間のみんな、其々に良き結果だったようです。


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手入れの行き届いた盆栽達、様々な道具や水石に盆器、各出店の特色や多くのお客様、

普段は最終日となれば、少し閑散となるものですが、閉館時間まで、途切れる事ない賑やかな時でした❗️


大観展を間近にした中、福島の舩山邸に伺いました。

約200点の盆栽が息づく庭園、吾妻五葉松のふるさととして、五葉松を中心とした盆栽達。


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朝の気持ち良い冷気を纏った空気の中、庭を歩いて思ったことがあります。

82歳でこれだけの盆栽の水掛けを日々なさる趣味家、振り返れば舩山会長は、

どちらかと言えば、"山採り“のような天然の樹相を持った樹がお好きです。


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若き頃、現在のような叙勲を受けられるお立場になるずっと以前、

二十代の頃は、ワンダーフォーゲルとして、日本各地の山々を縦走されていた事をよくお伺いしました。

裸一貫で「舩山工業」を築かれた苦労は私達には計り知れないものがあると思いますが、

おそらく舩山会長は、厳しい自然界で命を繋ぎ、誰に認められるではなく、

自らの“姿“を創り上げた樹々達に、共鳴するご自身をご覧になっているのかもしれません。

厳しさと深い“薄っぺら“ではない愛情、まさに人に対する会長の姿に似たものを感じます。


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枝がひとつ枯れても、何も仰らず、只々日々の管理をなさる姿。

この庭にいると、盆栽が教えてくれる様々な事を思います。

その樹にしかない“何か“を求めて、答えを急がず、静かに盆栽達と語り合う。

庭に出てこられる僅かな刻でしたが、朝日を浴びた樹々の中で、日頃忘れかけている大切なものを感じさせてくれた時間でした。


20歳の頃より参加してきた京都の秋「日本盆栽大観展」も45回。

何も分からず、売店に立っていたあの頃、

今は京都国際文化振興財団の特別企画ブースの設計デザインと展示構成、コンセプトを持った大家達の企画席も同じく❗️

5年前、大徳寺の盆栽庭園の着工が決まった時、軽井沢の夏の店を閉じ、

この大観展の最大ブースも終わりにしようと、乾坤一擲のデザインブースを作ったのに、

相変わらず、スタッフに任せようとしている商売の方も、“血が騒ぐ“と言うか?“

やるならウチらしく!“の思いが、勝手に頭と身体を動かしてしまいます💦性分ですね!


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日常的に営業とウェブ上での促販をしてる中、出張売店に“出動“する商品達は、

やはり最近仕入れたものをラインナップすることになります❗️

盆栽の方は、そのまま売れるものではなく、仕上げ手入れが必要なものばかり💦

あと数日で出発という、“いつも通り“の慌ただしさ‼️


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それでも、会場で久しぶりにお会いする関西方面の方々、“何か良いものあるかい?“のお声に

“ちょっとご紹介出るものが“の丁々発止❗️

お客様が、目をキラキラさせて楽しまれる事が、何よりも嬉しくてこうしているのか、と感じながら、さて!準備を急がないと‼️

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