雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


師走の声が聴こえる古都京都。温暖化で遅れ気味だった紅葉も、冷気を纏った“北山時雨“が始まると、一気に色付きを増してきました。

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市内北部の大徳寺は勿論の事、水石展の関係で、天台宗比叡山の“里坊“、滋賀県の坂本へ赴き、
慈眼大師の廟や比叡山の里坊の中心的存在の滋賀院へ行きました。

京都の“艶やかな紅葉“とは少し違って、自然の山々の中そのままの紅葉風景がありました。

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盆栽展などの賑やかな喧騒とは打って変わって、しんと音ひとつない静寂な空気の中、
深々と森のもみじは、幾色もの色彩を楽しませてくれました。

柔らかなもみじの枝姿!
こんな姿の盆栽が作れたらと、しばらく見入ってしまいました!


先日終了した「第44回日本盆栽大観展」は、出品展示・企画展・イベント・売店、すべての点で、内容の高い充実したものでした。
普段通りに点数審査を経ての内閣総理大臣賞を筆頭にする各賞は勿論の事、会場内に展示された、企画展も素晴らしいものでした。

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名門大樹園のお得意様の名木コレクションの一堂展示・名匠小林國雄先生の喜寿記念の個展ブース、
そして毎年“今年はどんな展示?“と注目される京都の財団「慶雲庵」の圧倒的な名樹陳列。

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開催期間中の好天もあり、入場者も多く、特に欧米を中心の海外来場者の多さには驚かされました。
歴史と格調のシンボルと言える、国風盆栽展と一線を画す大観展。
様々な発見を促すイベントや企画は、新しい盆栽界を占うようにも思えました。

特に面白かったのは、“世界のキムラ“初の実技講演に、飛び入り参加して下さった、春花園小林國雄先生! 

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進行役を務めた私も、長年お二人を見つめてきましたが、まさか二人の競演が実現するとは思ってもいませんでした!
遅れ気味の洛中の紅葉をよそに、大観展館内は、熱気で頬も紅く上気していたように思います‼️

【空の彼方から見守って下さい。芳春院盆栽庭園】

深まる秋の中、大観展準備の為、何人かで時間を見つけて、庭園の掃除に入りました。

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普段は少ない人数で慌しく開園の準備をしていますが、
今日は隅から隅まで、禅寺の庭園らしく、ゴミや落葉ひとつもない程に掃除しました。

この庭には、開園当時より変えずに飾ってある樹があります。
細い黒松、私が20歳の頃(45年前)からお付き合いを頂いた、舞鶴の亡き西村さんの樹。

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戦争で2度も潜水艦で被弾したにも関わらず、九死に一生を得た方です。
戦後、故郷の舞鶴の「青葉山」に登り、山採りされた樹がこの黒松です。
亡くなられた時、奥様より「長くお世話になったから、どれでも好きな盆栽を持って行って」と
有難いお言葉を頂きましたが、大恩ある方より高額な盆栽を頂けば、
人に欲しがられて売ってしまう気弱さを自分で分かっていたので、“これを大切にさせて下さい“とお願いして私の下で生きてきた樹です。

不思議なご縁で、この禅林名刹の盆栽庭園をお預かりする事が決まって、
羽生より多くの名樹を運ぶ時、“この樹は必ず庭に“と思いました。

生きていたら、今頃になって、京都に、しかも大徳寺にいるなんて、西村さんは天国からプンプンしているでしょう(笑)

先日、業界の後輩、神奈川の近藤君が急な病に斃れました。
愛蔵品の整理を頼まれた中に、可愛らしい五色カズラがあり、形見に頂きました。

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今はこの庭の通玄庵前のもみじの庭木の足元にあります。

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震災の余波で命を亡くした弟子、熊谷君の真柏、銘「忘れ形見」と一緒に、黒松や草も私を見守ってくれています。
ありがとう。


上海から2時間、中堅都市(と言っても人口400万!)の常州市にある、
“随園“王永康先生の所で、木村先生と若者達の研修手入れがされました!

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黒松の老大樹!
僅か
2時間での整姿作業でしたが、ここにいる若者6人の中の2人、ツァオ君とハオ君は、木村先生の所で研修を2年した者!

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先生の手入れに対して“先の先“を読み取って、手際よく進める事のできる2人です。
“枝を下ろして、老木が生きようとしている姿を出したい。枝はそれでも上に向かおうとするから、その動きを大切に“
という言葉がありまし
た。

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天空に羽を広げる様な姿!
本来は春先からの施肥・多水・葉透かし・をしての黒松ですが、取り敢えず、“図出し“と言った感じの仕事でした。

一番大切なのは、盆栽が好きで王永康先生の所へ集ってくる若者達は、
目をキラキラさせて、今自分が出来る仕事を頑張っていた事です。

それにしても、ここはどれだけの盆栽があるのでしょう😅
盆栽に囲まれて、一心不乱に打ち込む若者達。
私にもそんな時代があった事を思い出す日になりました。

【晩秋の大徳寺!盆栽庭園の床飾り❗️】


ようやく秋らしい“秋冷の候“と言う言葉がピンとくる空気になって来た京都大徳寺。

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芳春院盆栽庭園も大観展で普段に増してたくさんの方が訪れる中、
「通玄庵」の床の間には、老爺柿の珍しい半懸崖樹形の盆栽を飾りました。

“豊穣の色“、橙色の愛らしい実姿。
細い枝がしなりそうに成る実が、風情あるものです!

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掛軸は、菊池容斎の「散り紅葉に素滝」 
滝は暑気に掛けることが多い画題ですが、紅葉の葉が舞う晩秋の景色を滝姿で表した貴重な作品。
散り紅葉以外が水墨で描かれているので、紅葉の葉色が際立っています。

脇飾りの安倍川のくず屋石は、石質から、まるで“霜“や、時雨の中の“霙“を被ったようにも見えますね!
北山時雨が始まる京都の北部。
大徳寺は500年の刻の中、読経も鐘の音もいつもの通りに盆栽庭園に聞こえています。

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