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盆栽歴50年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”


畑作りの真柏は、若木の頃に捻転芸を針金で施し、5~7年の間にしっかりと幹を太らせます。
丸幹の舎利のない姿から、一部の皮を剥き、舎利芸を作り上げます❗️

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6月下旬から7月、真柏は旺盛な成長期を迎えています。
この時に“皮剥き“をすると、信じられないくらい、簡単に舎利が作れます。

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スペインから研修に来ているパブロ君や小店島田、若き名匠森山義彦さんから、束の間の作業見聞をさせて貰いました❗️

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この時期に皮剥きをしておく事で、来年からの仕上げ方が決まります。
季節12ヶ月、盆栽は様々な手入れ作業を繰り返すことで、良き作品へと姿を変えていきます‼️
雑誌で見るものと、現実の作業風景は、大きく違います。
目で見て、実践して、本当の自分の経験になる!これの繰り返しが次代の作出者を作ることになります❗️


猛暑の続く羽生、連日35度超えでも、まだ梅雨明けになりません💦
盆栽も出来るだけの遮光設備を整えて、この夏を乗り切ってくれる事を祈るばかりです。
七夕の頃となり、毎年恒例の姫孟宗竹の床飾りをしました❗️

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この時だけに使う掛物、明治の大家・竹内栖鳳の「雨中の蛍図」が、今年の雨竹亭の床の間にも掛けられました。
涼やかな竹林の景、雨降る渓流の葉蔭に身を潜める蛍達。

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「東の大観・西の栖鳳」と謳われた竹内栖鳳。
掛物には30代まで名乗っていた「棲鳳」の印。
もうこの掛軸を手に入れて、20年以上! 
季節を彩る床の間の掛軸約20点も、ほぼ固定されてきました。
勿論現在のものより、さらに似合うものがあれば入れ替えていますが、間調子と筆の良いものとなると、中々ないものです。

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今年は、6月30日の、“夏越の祓“に因んだ、京都の夏の風物詩、「祇園祭り」の、長刀鉾の山車が描かれた掛物をうっかりかける時を逃してしまいました💧
季節の移ろいを失念するようでは、頭の中も“熱中症“ですね‼️


彼と出会ってもう35年の月日が流れました。
名門大宮盆栽村「藤樹園」出身の若き盆栽作家と銀座三越を舞台に、社会の窓としての盆栽展開をする私。
立場はまったく違うものでしたが、2人とも自分に対する将来への“何か“を持って日々を過ごしていた頃だったように思い出します。

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いつの間にか2人とも還暦を越えた中、残された刻をどのように生きてゆくか?考えるようになりました。
人の噂になるようになった2人、先日彼は、業界のすべての役職を退いて
自身の本拠地、小布施で盆栽と息子さんや弟子と過ごす世界になりました。

業界の人達は、“森前さんが彼の先々を諭した“などと言っていますが、
私は遠い以前から、彼には業界の中で“泳ぐ“事は似合わないと、本人にも言ってきました。

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盆栽を見つめる時の昔と変わらない彼の眼差し、夢を語る時の子供のような彼の顔。
弟子達と手入れに勤しむ彼は、やっぱり盆栽と過ごしている事が一番似合うと思いました。
太陽と月・水と油、性格も違う2人ですが、盆栽を通して見つめてそして生きてきた心は似ているのかも知れません。
ここから彼が世界に向けて羽ばたく事を願っています。
彼なら出来ると思っています。

私も“私がやるべき事“の意味を少しずつ実践してゆければと願っています。
商売ではなく、盆栽と対峙して日々が過ごせたらどんなに幸せかと、ため息交じりに思う自分に笑ってしまいます💦


京都盆栽財団「慶雲庵」の支援母体である法人「TANAX」の依頼で、
京都山科の音無川沿いに建つ名亭「わらびの里」に財団所蔵の銘盆栽達を飾りました。

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人里離れたこの隠れ家的な名亭は、百年前に篤志家が建てたもの。
丁寧な管理で今に残っている事が嬉しい佇まいです。

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国風賞の花梨や錦木、1970年万博にも飾られた真柏、
そして加賀前田藩前田利家公の由来を持つ貴重盆栽登録樹、五葉松「百万石」、
室内にはほぼ未公開の德川慶喜公旧蔵の五葉松。

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若き上場企業の創業者の方々が、盆栽に対して、深い理解と趣味を持たれているとの事❗️
日本の次代を創る方々が、盆栽と言う日本の文化に親しんで下さる事は素晴らしく、
羽生で管理している財団の樹、長野県小布施町で鈴木伸二さんが守っている樹などを、
この為に遠く京都の地に運んで来ました‼️

文化と歴史を物語る盆栽達、彼らこそが真の日本文化の親善大使ですね❗️❗️


盆栽界久しぶりのもみじ新品種「行姫」を発見して作出した、栃木県の印南五容園さんに伺いました。

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ご主人印南さんとご子息、共に手入れに勤しんでおられました❗️
“雑木盆栽の名手“として有名なご主人、そして那須五葉松の保護育成に励まれている姿は、
国風展売店での、一般の方々へのとても丁寧なご子息の応対と説明で、いつも微笑ましく思っている次第です。

たった1本のもみじの変種から作り上げた「行姫」は、次の時代のもみじ盆栽を代表する品種とる予見があります。
海外への需要が多く、激減する雑木盆栽。
“買ってきたらせめて数年作らないと“と仰るご主人。

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盆栽人としての基本を捉えての親子での日々❗️
自分のすべき事を当たり前のように過ごされるお二人にエールを送りたいです‼️
“買ったものはせめて2年くらい作ってから売れば良くなるよ“の言葉❗️
多分羽生では、今日頂いた行姫の寄植数点もいつまであるか💦すみません🙏

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