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盆栽歴42年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:羽生


【季節の狭間の静かな床の間飾り】

8月になると秋風を朝晩に感じるとした古人の心は、温暖化の現代には実感もないですね。
"立秋来たれど、酷暑の日々"、何処かに昏れなずむ刻の風景を捉えて、
暑さの中にもやがて訪れる秋趣を感じる席を創りたいものです。

先日、葉性の細やかなコナラの古樹を手に入れました。
この季節は本格的な格調美を見せる松柏盆栽より、
季節の風趣を席中に漂わせる樹種を飾ってみたくなります。
揺れ立つ古幹に鬱蒼と茂る葉陰、どこかその葉にも厳しい夏を過ごした"色"が欲しいものです。

取り合わせの掛物も、"晩夏"の黄昏を取り入れて、
夕暮れの山里に飛び交う蝙蝠、そしてやがて澄んだ名月となる
いまだ純湿さを見せる月。
脇床には景色の連携の中に見える農屋。
旧盆も過ぎれば、初秋の風を感じる席がよく似合う頃になります。
その狭間にこんな「一瞬の刻の切り取り」をした席を創出するのも楽しいものです。


【失われた広東窯の再現・普及を!】

数年来取り組んできた
"本物の中国現代名鉢"を日本に!
の願いが現実的にこの秋に届きます!

一昨年より試行錯誤の試作から始まった釉薬鉢の原点"広東窯"は、
今春の国風展での発表時は、均窯釉を中心に著名盆栽園の方々よりの注文で、
春に自分で植え替え用にと思っていた分さえも売り切れてしまいました。
一見すると、中渡均窯名器と区別すら出来ない作品と評価頂き、
苦労した甲斐があったと安堵したものです。

「石峰雨竹」と落款を押したこの一連の作品は、その後、窯元である作家本人 劉先生との
"高く売るのではなく、広く多くの愛好家に、永遠の定番と言われる"
と言う願いを基に、名器に伍すランクと、
釉薬の素晴らしさを普及する量産型の双方の制作に取り組んできました。

7月の広州は、気温40度! 
ただ立っているだけでも数分で着替えたくなるような汗が出てきます。
そんな中でも、劉先生と製作スタッフの方々は
私の為に数多くの素晴らしい釉薬発色を呈する作品を生み出してくれていました。
秋には皆様にご覧いただけると思います。

私の夢は、盆栽家としての実用と美意識で描いた鉢を造りたいと思い、
国風級の逸品作・100種 
一般の愛好家が楽しまれ使えるもの・100種 
を完成して、常時羽生に揃えてみたいということです。
「鉢を探すなら、羽生の雨竹亭に行って探そう!」
こんなことを夢見ています。
秋にはこの夢の一部をご覧に是非羽生へ遊びにいらして下さい。


【命の大切さ・ひとりじゃない!誰もが助けられ生かされていること】
 
雨竹亭のある羽生市で、小学生やご年配の方々への盆栽講座をボランティアで始めて、もう5年になります。
先日、羽生市立南小学校6年生との盆栽講座を開きました。
3度目になる講座ですが、毎年6年生全員に体育館で2時限(午前中全部)を使って、
盆栽・将来への夢・生き方・命など、どちらかと言えば樹の作り方や育て方よりも、
盆栽を通して人が感じたり、教えてもらえることを伝えています。
真柏・五葉松・楓・小品棚飾りなど、内面性が違う盆栽を飾って
11〜12才の子供達と楽しい時間を過ごしました。
羽生は環境の良い田園住宅地です。子供達もとても素直で、私の様な学も無い年寄りの話を真っ直ぐに聞いてくれました。
人が水をあげることを忘れたら、何も言わず100年を超える命が静かに消えること、
良い樹の姿こそ、天然の厳しさの中で創られること、
皆んなも自分ひとりじゃ日々何もできないこと、多くの大人や友達がいつも見守っていてくれること。
私は盆栽を通して子供達に少しでも"生きることの素晴らしさ"や
"自分以外を思いやる事の大切さ"を少しでも伝えられればと願っています。
これからも、小学校だけで年4回、ご年配方の教室が年3回、続けていこうと思います。
 


【祇園祭り・神域の杜・比叡の山並!】

羽生の庭も37度の暑さが続いています。古都京都は千年続く祇園祭り。
お客様をお迎えする雨竹亭の応接床の間も、暑気の邪を祓う飾りです。

掛物を先に選ぶ季節の風物詩、日比野白圭の筆による「長刀鉾に半月」。
天空に白刃を立てる祇園祭りの象徴「山鉾巡行」の中でも誰もが知る「長刀鉾」。
夕闇の朧の空気の中に山車の上部分のみを描き、今登らんとする月。
これから続く暑さを邪気とともに祓う願いが込められています。

古銅の水盤に設えられたのは、古都を見守る比叡の山並み。
脇床には神域を想わせる社の森。
掛軸・水石・盆栽 がひとつの景色を現出し、
風景と共にそこに潜む日本人の自然との共生・文化的風俗が、一席に込められています。
夏飾りは、何処かに心がホッとして 何処かに祈りにも似たものを込めた
心安らぐ飾りを楽しみたいと思います。


【床飾が奏でる日本の自然美!】

五月雨が青葉の葉色を更に美しくしてくれる季節、雨竹亭の応接床飾も 模様替えとなりました。

深山に生い茂る 岩がらみ、靄る空気の中、この季節の盆栽として必ず一度は床の間に飾ってあげたい樹種です。

春から使い勝手良く重宝してきた「朧月」の掛け軸も、この岩がらみの席でお勤め終了です。
ここからは まずは"ホトトギス"。
里山をスーッと線を引くように翔ぶ姿は、古来より日本画の題材になって、季節の代名詞となっています。
岩がらみの美しい姿の向こうにホトトギスが鳴き、遠くを仰げば渓谷に岩清水が流れる・・
格調高い松柏盆栽もありがたいですが、
この季節は、心安らぐ"自然を逍遥"しているような樹と飾りを楽しみたいものです。

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