雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴43年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:掛軸


【盆栽の本道を伝えるお手伝いを】

夏の頃より企画相談を受けていたNHK「美の壺」での盆栽特集が収録の段階に入りました。
私共の雨竹亭庭園での撮影が行われ、久しぶりに観音堂にも盆栽飾りをしました。

応接床の間も日輪の掛物を配した五葉松の設え、
季節を超えた"日本"の象徴として収録してもらいました。

12月2日(金)NHKBSプレミアム で放映予定です。
ぜひ、盆栽を愛好される皆さんもご覧下さい。
(床の間の五葉松は、収録許可を頂いた 京都国際文化振興財団 の所蔵樹です) 


【老境の中に描く 季節の楽しみ】

40年のお付合いを頂く愛好家、小林二三幸様より季節の盆栽便りが届きましたので、
ご本人の了解を頂き、お紹介させて頂きます。
写真の日本建築の座敷は、小林様が大手企業の重役を退いて
「晴耕雨読 盆栽三昧」の日々を過ごす為に、10年前より旧家を改築して作り上げたものです。

今回はまさに "秋"! 
山蔦の老木が濃淡の深紅の彩りを見せる最高のタイミングです。

「月に落雁」の掛け軸は、"遠見の景色"で席の季節と広がりを扶けています。

脇床の鋳胴の人物像は「養老」。
今回は養老に固執せず、蒔や柴を取りに来た杣人が、山中で憩うひとときの情景を物語っています。
主木を引き立て、季節の興趣を喚起させ、ものの想いを深める・・
当たり前のように設えるこの席に、小林様の熟練の"見せぬ技"が潜んでいます。
脱帽・脱帽


【季節を室内に取り込んで・・自己の修練!】

40年近いお付き合いをさせて頂く愛好家、
小林二三幸さんの自宅に飾られた"日常の飾り"をご紹介します。
日立製作所の常務まで歴任された小林さんは、生粋の盆栽水石愛好家。
古稀を過ぎて"自身の趣味の中で心の修練"を楽しまれています。
玄関の脇にさり気なく佐渡赤玉石の古色見事なくず屋石、
小振りな掛物は「月にススキ」、
季節を切り取ったかのような、訪れる人を迎えてくれる静謐な飾りです。

床の間は小林さんが盆栽水石を飾る為に数年かけて改築された「数寄屋風書院造り」。

赤松の飄々とした三幹、青富士はもう冠雪を纏っています。
目を脇床に向ければ木彫の「旅の僧」、三保の松原を想わせるこの席は、
旅路の僧が"人生まだまだ道半ば"を語っています。

盆栽歴半世紀に近づく小林さんの「飾らない飾り」は、
国風展などの品評会的盆栽のあり方に、一石を投じるような真の愛好家の姿勢を感じました。


最近は秋の彼岸まで続く残暑。
それでも暦も朝夕の空気も何処と無く秋の気配。 
盆栽飾りも"ひと足早い季節の姿"が嬉しいものです。 

相生の幹立ちが風になびくように流れを見せる五葉松、
見上げる空には「中秋の名月」、
対岸の深山は名残の滝音を残す渓谷の美。 
まだまだ水遣りに余念の無い中、どことなく"もう秋だなあ"と捉える心を大切にしたいものです。
9月15日が中秋の名月ですが、実際には17~18日が一番満月に近いみたいです。 

私も含めて多くの盆栽愛好家が訪れて下さるプロの盆栽園は、
せめて一席でもこんな季節を切り取った席飾りを毎日しないといけないですね。 


【蝉時雨の向こうに見える荘厳な瀑布   山越え深く自然林】

朝夕の水打ちに人も盆栽も生気を取り戻す頃、盆栽の床飾も盛夏の作法。

雲湧く山々を越えて遠くに聴こえた滝音は、眼前に水飛沫の清冽な姿を見せる大瀑布へと。
その水は岩清水となって"水守り"と例えられるブナの原生林を育んでいます。

根元の寄植え部分が白く絡み合うブナならではの美しさが長年の"鉢持ち込み"によって
まるでその林間へ誘われるかのように感じられます。

人界では得られない大自然の興趣を席中に創出しようと努めた席飾りです。
昭和前期に描かれた楳崎珠雀の「瀑布図」水墨の作品によってブナの緑陰の美しさが際立っています。
また、脇の水石を水盤使いではなく、台座としたことで滝の清冽さ、
"分けいっても分けいっても続く神韻響くブナの原生林に"瑞々しさ"に
"水"を感じることへの強調ができたと思います。
夏雲の向こうに変わらぬ自然の営みが見える盛夏の一席です。

↑このページのトップヘ