雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:掛け軸


【展覧会未公開の真柏名樹・日輪画幅・大鷹】

歳の始めに皆様にお届けする年賀のご挨拶状。

来年は酉年、双龍を想わせる真柏は私の所で14年の年月を過ごし、
ようやく盆栽らしくなってきた"将来の名樹"です。
昇りゆく龍は希望や道そのもの、円山応震の日輪の図は、
床勝手にあった画中右手描き、脇床にはやや大きめですが干支に因んで大鷹の鋳銅作品。
昇る日の出に向かって羽ばたく鷹、神格化された真柏老樹。
新年の格調と「大和の盆栽美」を構成してみました。


【"歳月"という古典・"審美"というモダン
三位一体が醸し出す"真の盆栽美"】

樹齢200年を超える生命を宿す真柏の古樹。
立ち上がりから樹冠へ届く天然の舎利芸は、僅かに生きる水吸い部分がまるで
"我が身を捨てて守る"死生観を自然の造形で表現しているようです。

神韻響くほどの老幹大樹が描く"枝配り"は、限りなく無駄を省き
己が生きる術を究極に削り取った末に現出した「スガタ」と言えます。
取り合わせた鉢は中国紫砂盆器の歴史と陶技の「誇りと伝承」を繋ぐために
"神業"を今に伝える老工の渾身の一作「朱泥扇型盆」。
伝承される盆栽と盆器の調和とは一線を画した合致が、
名品同士の邂逅で"新たな美"として絶妙な旋律を奏でています。

掛物は「如雲」。
明治に生きた禅の名僧 峩山 の墨跡。
何物にも捉われない心、まさに"雲の如く"は盆栽人もこの道に親しむ中で一考すべきものです。


脇床に飾られた一石は、観者の捉え方によって達磨・観音・羅漢など、
一塊の石が高雅な姿へと導かれるのも、席全体の"しつらえと空気"ではないでしょうか。

モダンな美すら感得できる真柏、達観した禅僧が遺した一筆の書、
遠き昔山河に横たわる石をその手に取り上げ、石中に"何か"を観た人々。
三者が共に飾られた時、それぞれが共鳴しあい醸し出す気韻と情趣。
この醍醐味こそが、盆栽美の最も深く心に響く世界だと思います。

各作品に込められた"想い"、これが三位一体となって新たな"趣意"を感じる時、
150年を超えて現代に続く
失いたくない盆栽界の「本道」らしきものが何なのかを
「覚悟」出来る思いがします。
何気ない盆栽飾りの一席に
"その奥に潜むもうひとつの世界観"があること、
そしてその扉を開ける楽しみをなさって下さい。

↑このページのトップヘ