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盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:岩崎大蔵


【運命の糸が導いた 羽生への100点の「王の樹」達】

19日から21日にかけて10トンのウィングトラック5台が、
順番に羽生に到着しました。
四国新居浜「高砂庵」の巨大松柏盆栽を積んだ一群です。
ちょうど2年前、高砂庵の盆栽コレクション全品を羽生に運び、世界の方々から注目を浴びましたが、
あの時、故岩崎大蔵先生が選び抜いた庭園内に直に植えられていた大型松柏は、
相続の扱い方の違いで交渉できませんでした。
日本一の宮島五葉・神木と言える聳え立つ杜松・夥しい数の築山に植えられていた樹々など、
幾度か応答を取り、行方を気にしていましたが、大阪方面の事業家の方が、
河野一郎先生の茶室「松濤庵」や 本体の「高砂庵」も既に解体して移築されているそうです。
"高砂庵を残したい"誰もが願う事ですが、私共盆栽業では庭内の盆栽や樹々をなんとか譲り受けるのが精一杯でした。
中国向けのこの春最後のコンテナ積込を間近に控えて、
羽生雨竹亭 第一・第ニ・第三培養場のすべてが盆栽で埋め尽くされている中の "神々のお出まし"。
やむを得ず、オークション会場の外棚と駐車場を使っての仮置きとなりました。
"ようこそ羽生へ"
確かに大きく、人間の手で持てる大きさではありませんが、
数百年の宿る命がまた、我が家の家族となった事は、苦労はあっても嬉しいものですね。
家族にもスタッフにも言われます。
"大きい盆栽が大好きなんでしょ"って。


【樹冠切除!角度変更!  見せかけの大樹から真柏名樹への変貌!】

昨年春、四国高砂庵から羽生雨竹亭に移動された盆栽群の中にこの樹はありました。
天然山取りの圧倒的な舎利芸はあるものの、枝葉を全体に伸ばし表面的な樹相で仕上げられていたものです。
日々共に暮らす中で、「この樹はこうありたい!」と言う答えに辿り着き、
大改作に挑むのに1年を超える時間がかかりました。
樹冠を切り落とし、右手の天然至芸の素晴らしさを魅せる
舎利芸を強調する"左流れ"の樹となるよう、施術しました。

この状態で来春まで無理せず培養に努め、
左右の舎利芸と乗り出しを浮き立たせる鉢合わせを思案したいと思っています。

うずもれた名樹を晴れの舞台へと導くのは、盆栽家のいちばん楽しい仕事です!


【大型真柏  改作終了!  ここからは培養の日々】

春先に手に入れた真柏素材。
名匠木村政彦先生に基本的な整姿改作をお願いして、
羽生に戻ってから鉢合わせ、植え替えをしました。
鉢は岩崎大蔵先生が中国で特注で誂えたものです。
無駄な細かい芸を取り払い、
真柏が持つ
"ごまかしの無い圧倒的な利芸" 強調した作品になったと思います。
信頼頂く愛好家様と二人三脚で3~5年、
将来の名樹を目指して培養に努めたいと思います。


【"物足りない"模様木から名木半懸崖へ】

岩崎先生の数ある赤松太幹素材の一本です。
模様木として木村政彦先生の所で基本的な整姿針金掛けをお願いしましたが、
このままではずっと"二級"の太幹の一生になると思い、
思い切って半懸崖への施術を先日羽生手入小屋で行いました!
角度的に根の処理がギリギリで、
しばらくは第3培養場で養生に努めるつもりです。
いつの日か国風展に飾られる日を楽しみに育てたいと思います。

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