雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴49年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

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【床飾が奏でる日本の自然美!】

五月雨が青葉の葉色を更に美しくしてくれる季節、雨竹亭の応接床飾も 模様替えとなりました。

深山に生い茂る 岩がらみ、靄る空気の中、この季節の盆栽として必ず一度は床の間に飾ってあげたい樹種です。

春から使い勝手良く重宝してきた「朧月」の掛け軸も、この岩がらみの席でお勤め終了です。
ここからは まずは"ホトトギス"。
里山をスーッと線を引くように翔ぶ姿は、古来より日本画の題材になって、季節の代名詞となっています。
岩がらみの美しい姿の向こうにホトトギスが鳴き、遠くを仰げば渓谷に岩清水が流れる・・
格調高い松柏盆栽もありがたいですが、
この季節は、心安らぐ"自然を逍遥"しているような樹と飾りを楽しみたいものです。


【コミュニティーセンターでのボランティア】

数年前より羽生コミュニティーセンターの依頼で地域の盆栽愛好家の方々向けに、
エスキューブ雨竹亭スタッフが、季節の盆栽教室を開催しています。
この教室は当初より、こちらで教材を用意するのではなく、
自分で持っている樹をどうしたらより良く出来るかと言う考えで開いています。
今回は植え替えの講習なので、
根をほどいた時に応急の作業が出ても対応できる様に、私達羽生雨竹亭で行いました。
「新しい用土に入れ替える」位の発想でいらした皆さんに、
樹に合わせた鉢合わせや、施術の程度などが樹それぞれで違うことの大切さを理解いただきました。

地元の人達に"本当の盆栽技術"を伝えるこのボランティアは、いつまでも続けたいと思います。


【"明けぬ春"の中に・・樹々に潜む「春」の姿】

国風展の大騒ぎの名残りも過ぎ、弥生3月桃の節句となれば、
盆栽園の床飾りも「春」の飾りが主人公になります。
新春に手に入れた貴重盆栽の姫沙羅の名樹を初めて飾りました。
新芽の美しさはもう少し後ですが、黄金色に輝く幹肌は
幹中に瑞々しい潤いを蓄えた春の姫沙羅ならではのもの!
"相飾り"の山椿の惜しむ花姿が、惜春から陽春へと移りゆく季節を物語っています。
雨竹亭の応接は、多くの訪れる皆様に愛育している樹々をご覧いただく為に、
その時々の盆栽の美を展示しています。
本飾りの脇には中品の真柏と金豆の2点。
両方とも来年の国風展に出品出来る樹筋です。
日本の自然・季節・鉢映り、掛け軸や各種添景道具の取合せの深さをお楽しみ頂くのも雨竹亭の良さだと思っています。
季節の盆栽美をお楽しみにいらして下さい。

【月に緋梅  "紅一点の美しさ"】

国風展・日本の水石展  などで、慌ただしい如月、
ようやく雨竹亭の床飾を心静かに構える気持ちになりました。
三寒四温が近付く中、まだまだ名残の雪模様と盆梅が身近にあります。
昨年手に入れた緋梅の古幹が良き花姿を楽しませてくれる頃となり、
雪模様の空に浮かぶ月の掛物と「静謐な微春」を設えてみました。
太幹の堂々とした盆樹も良いですが、"梅一輪の美しさ"とされるように
一重の可憐な花姿は、この樹のように枯淡の味わいを大切にした自然な枝姿が嬉しいものです。
鉢も花の美しさを強調させるように、渋めの南蛮鉢に移し替えました。
渡辺公観が描いたこの月も、雪空の仄暗い中に浮かぶ情景がとても良く描かれています。
墨流しのような画、枯れ木のような幹枝に凜と咲く緋色の花姿。
全体を一幅の名画を眺めているように心がけてみました。
新春から早春へ、そして間もなく訪れる爛漫の春。
刻々と移り変わる日本の四季を盆栽の飾りにも大切に表したいものです。


【捉え方で表情を変える山採り盆栽の面白さ!】

国風展売店に飾る為に、以前から庭にあった真柏古木の見付・鉢合せを変えてみました。

いつものことですが、鉢合せは決まる時は1発で簡単に決まりますが、
合わないとなると何枚試みても合いません。
2000~3000点の鉢が羽生雨竹亭にはあるのに困ったものです!!
この真柏は以前から両面から見られるので、どちらで作るべきか中々纏まらなかった樹です。

漸く枝の捌きや空間の姿などを総合的に考えて右流れで仕上げる事にしました。
正方の"逃げ"の効く鉢から紅泥袋式楕円と言う量感と"抑え込む力"を持つものに換えてみました。

以前に整枝作業をして針金掛けによって枝作りをした姿から今回の植え替え・植付けで、
舎利幹の前にある左落ち枝の下部分を取り、幹筋の流れと空間を見せるようにしました。

私は「名人」ではないので、時間をかけて樹と少しずつ対話する気持ちで、
"そうか!ここを直せばこの樹はもっと美しくなるかも!"
とはっきり感じてから作業をする事にしています。
上野グリーンクラブ2階に特設されるエスキューブ国風展特設売店で是非ご覧になって下さい。

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