雨竹 盆栽 水石 便り

盆栽歴42年 盆栽家森前誠二がブログで綴る盆栽人の本音と 伝えたい日常の中の”心と技”

タグ:埼玉


【仲秋の山野草 床飾り】

朝夕に 虫の音と共に、涼やかな風を感じる頃となりました。
晩夏の名残をみせる昼間から、"秋風"を楽しむ 季節を迎える中、
山野草の床飾りを設えてみました。

先日、福島まで 出向いた折、久しぶりに名匠 阿部倉吉翁の所により、
お孫さんが営まれる「ぼんさいや・あべ」に伺い、今回の主草「目刈萱草」を譲って頂きました。

私は 山野草の秋飾りには、どうしても "寸詰まった" 感のあるものが苦手で、
この様な"吹く風に揺られる"風情のものが好きです。
ススキの穂が出た飾りもいいのですが、まだちょっと早く、目刈萱は有り難いものです。

掛軸は 今尾 景年 の「中天の月」名月を待ち望む今ならではの取り合わせです。
脇床(琵琶床)には 木彫の双鹿。
虫籠・うさぎ などの合わせも 面白く、注意するのは 主飾りが「草」なので、
鋳銅などの位取り高い材質を避ける事かと思います。
古盆の雅格が良いのは勿論ですが、時には
この様な「季節を切り取って肩の力を抜いて楽しむ」事も、忘れないでいたいものです。


【樹齢800年!人と邂逅  400年!】

以前から隠密裏に入手を交渉していた名樹3点が、羽生に着きました。

新潟県魚沼地方に伝承された一位の古木「謙信峠」
大観展で内閣総理大臣賞を受賞した一位「白昇龍」・
明治の皇族 伏見宮貞愛親王旧蔵の「宮様楓」の3点です。
特に「謙信峠」は未公開に近く、これから木村正彦先生に依頼して、
未来に伝承する日本最古の歴史を有する盆栽として、公開準備をしようと思います。
この樹は、上杉謙信が関東遠征の折、峠越えの際、山中で目に留め、
姉の嫁ぎ先である坂戸城主 長尾政景公に送った伝承が残るもので、
新潟県の広報にもその歴史が所載されている"日本最古の歴史を有する盆栽"です。
約2ヶ月の整姿施術で、目を奪われる程の、圧倒的な樹姿が 発表されるでしょう。
楽しみにしていて下さい。


【季節の狭間の静かな床の間飾り】

8月になると秋風を朝晩に感じるとした古人の心は、温暖化の現代には実感もないですね。
"立秋来たれど、酷暑の日々"、何処かに昏れなずむ刻の風景を捉えて、
暑さの中にもやがて訪れる秋趣を感じる席を創りたいものです。

先日、葉性の細やかなコナラの古樹を手に入れました。
この季節は本格的な格調美を見せる松柏盆栽より、
季節の風趣を席中に漂わせる樹種を飾ってみたくなります。
揺れ立つ古幹に鬱蒼と茂る葉陰、どこかその葉にも厳しい夏を過ごした"色"が欲しいものです。

取り合わせの掛物も、"晩夏"の黄昏を取り入れて、
夕暮れの山里に飛び交う蝙蝠、そしてやがて澄んだ名月となる
いまだ純湿さを見せる月。
脇床には景色の連携の中に見える農屋。
旧盆も過ぎれば、初秋の風を感じる席がよく似合う頃になります。
その狭間にこんな「一瞬の刻の切り取り」をした席を創出するのも楽しいものです。


【祇園祭り・神域の杜・比叡の山並!】

羽生の庭も37度の暑さが続いています。古都京都は千年続く祇園祭り。
お客様をお迎えする雨竹亭の応接床の間も、暑気の邪を祓う飾りです。

掛物を先に選ぶ季節の風物詩、日比野白圭の筆による「長刀鉾に半月」。
天空に白刃を立てる祇園祭りの象徴「山鉾巡行」の中でも誰もが知る「長刀鉾」。
夕闇の朧の空気の中に山車の上部分のみを描き、今登らんとする月。
これから続く暑さを邪気とともに祓う願いが込められています。

古銅の水盤に設えられたのは、古都を見守る比叡の山並み。
脇床には神域を想わせる社の森。
掛軸・水石・盆栽 がひとつの景色を現出し、
風景と共にそこに潜む日本人の自然との共生・文化的風俗が、一席に込められています。
夏飾りは、何処かに心がホッとして 何処かに祈りにも似たものを込めた
心安らぐ飾りを楽しみたいと思います。


【九州島原地方に眠り続けた"未完の大樹"大施術!】

先月、九州島原地方、松原の"植木の隠れ里"から、未公開大型黒松を羽生に運びました!
オーバーサイズの樹を何とかシンボル的なものへと、
改作施術の名手二人を招聘して、未来の大樹への第一歩に挑戦しました!

抜群の荒皮性の幹、立て返しの無い幹筋、改作可能な枝付き、
初めて行った島原で出会ったこの樹は、高さ2,5m!!
樹間の切り返しと枝角度の修正が大切なポイントです。
寺川穂積氏・森山義彦氏、二人とも私の仕事をいつもサポートしてくれる仲間たちです。

寺川氏は八雲蔓青園出身、単身オランダへ渡り苦労の末、数百人の顧客を現地で掴みながらも、
日本国籍の子供達のために"日本人のアイデンティティーを失って欲しく無い"と言う思いで帰国しました。
以来10年、その改作技術は私の目で見ると、国内三指に位置する作家だと確信しています。
特に"曲げるのは無理だろう"と思われる太さの幹や枝を技術の粋を駆使して変貌させる"職人技"は天才的です。
森山君は私の娘と同い年ですが、名匠木村正彦先生のもとで6年の修行を終えて、
間も無くこの羽生雨竹亭から10分の所に盆栽園を開園します。
真摯な手入への姿勢は、誰もが見習うほどの真面目さです。
いずれは日本有数の盆栽作家になるでしょう。

"曲がらずの枝"にきつくラヒィアを巻き、中に芯銅線を抱かせ、鉄棒をテコに一気に思う角度へ導く。
頭部の処理が見えた所でこの樹の将来はまとまりました!

圧倒的な中国勢の購買によって、国風賞クラスの名木が海を渡る時代、
本来日本盆栽界ではその価値を見出さなかったものが、評価される・・
このサイズの樹が両国の要望を叶えてくれると思っています。
ここから2~3年で枝葉の繁茂によって、大型荒皮性黒松の大樹が生まれます。
味わいある座敷飾りの文人盆栽・国風展向きの名木など、
時代に伝承したい樹々を残しながら、正業と友好に努める・・エスキューブは毎日が"挑戦"の日々です。

↑このページのトップヘ